野鳥観察で見かける哺乳動物
Japanese mammals seen during bird watching
report from Yokohama, Fukuyama city.
野鳥観察で見かける哺乳動物について

 

 野鳥を撮影しに山や川、海などに出かけていると、思わぬところで鳥以外の動物に出会います。今回はその中で哺乳類との出会いを紹介させてもらおうと思います。
 分類学的に、「動物界(animalia)」とは植物やプランクトン(原生類)や菌類を除く、「動く生き物」を示します。私は動物大好きな人間なので、鳥以外でも生きているものは何でも片っ端から撮って喜んでいます。具体的には虫や哺乳類、爬虫類、魚類までせっせと記録をしています。この中でもトンボの方は既に野鳥と並行して記録の紹介を進めているところです。

 今回、新たに今まで出会った「哺乳類」を新たに紹介させてもらうこととしました。哺乳類は鳥と比べると大型のものが多くて、出会いの数も鳥や虫ほど多くはありません。なので掲載種も良い絵もあまりありませんが、「鳥を探していたらこんな動物に出会うこともあるよ」といった目で、見て楽しんでいただければと思います。






霊長目 Primates



 霊長類で紹介するのはおサルさんです。日本にはニホンザルのみが生息していて、一部では外来種のタイワンザルも生息しています。




「オナガザル科ニホンザル」Japanese macaque クリックで拡大します

ニホンザル

神奈川県清川村
1024×682 px
2020/03/01
  Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3

 ニホンザルは日本各地でよく見かけるおサルさんです。自然の中で見る大型獣との出会いの確率的にはタヌキの次に多いのでは?と思うくらいです。
 私が写真を記録した地名を列挙しますと、  
広島県福山市、大阪府箕面市、長野県松本市(2か所)、長野県下高井郡、神奈川県清川村  
などがあります。
 サルがいる場所の特徴ですが、まず山です(当たり前か)。ではどういう山か?というと、比較的低山で見ることが多いと感じます。ただ長野の亜高山でも見ていますので、結局は餌になる木の実などが豊富な山ならどこにでもいるような気がします。
 撮影回数自体は6回と少ないですが、そもそも私は幼少から大学に通う頃まで(サルの生息地として有名な)大阪府箕面市のすぐ隣にある池田市で過ごしていて、おサルさんは昔からかなり見慣れておりました。なので、大人になってからサルに出会っても、そこまで頑張って写真に残そうと思うほどの価値観がなかった、というのが正直なところです。
 大阪箕面の滝近辺や長野の地獄谷などは観光地としても有名な場所です。なので、ニホンザルはわざわざ探しにいかなくても観光がてらで見ることができる動物です。一方で、こういうところには人間に対してお行儀が悪いサルが一定数いるので気を付けてください。特に箕面のおサルさんは、私も子供の頃の遠足で弁当をかっぱらわれた痛い経験があります。



「ニホンザル 子ザル」 クリックで拡大します

ニホンザル 子ザル

長野県下高井郡
1024×682 px
2019/07/30
Nikon V1 Mode A
1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6

 2019年、サルの温泉入浴で有名な長野志賀高原の地獄谷に行きました。こちらは箕面と比べて、わりとおとなしいおサルさんたちばかりだったような気がします。駐車場から歩いて30分くらいかかるようなかなりの奥地ですから、箕面の滝道のサル達程は人間界に毒されていないのかもしれません。やはり人が多い場所(特に観光地)にいるサルほど、人間からの悪影響が強く及んでいるように思えます。餌やりはもちろん、食べかすを残すのもだめですので、皆で美化には気を付けていきましょう。なお、往復1時間ほど、道々歩いて鳥を探しましたが、同所一帯では目ぼしい鳥の記録は残っていません。残念。
 で、鳥の代わりに撮って帰った上の写真はおサルのお子様です。すぐ隣に母親ザルもいましたが、人には慣れているようで人が子供と近づいても威嚇するようなことはありません。
 ちなみに真夏の観察でしたので、サルもわざわざ温泉につかって温まる必要もなく、10頭程度いたおサルたちは皆、温泉の周りををうろついているだけでした。ただつかりはしないものの、温泉の湯を飲んでいるサルが複数おりまして、横に冷たい水が流れている川があるのに、わざわざ温泉の水を飲んでいるのが不思議でした。それに温泉の水って結構癖があって飲みにくいものが多いですが、ここのは気にならない泉質だったのでしょうか。(周囲に噴泉があって、硫黄臭は結構あったような)さすがに自分も試してみようという気にはならなかったので、詳細は不明なままです。



「タイワンザル」Taiwan macaque クリックで拡大します

タイワンザル

台湾台南市
1024×682 px
2002/05/26
Nikon CoolPix E950 P Mode

 かなり以前に仕事で台湾の台南市に半月ほど滞在したことがあります。休みの日に山に連れていってもらったとき、野生ザルの保護区に寄ってもらいました。こちらはそこで撮った記録です。台湾のサルなので当然タイワンザルとなります。ニホンザルと見た目はよく似ていて、明確な違いは尾があきらかに長いことくらいでしょうか。こちらではフルーツの給餌は許されているようで(加工食品は禁止)、まんまバナナを食べているサルが見られて微笑ましかったです。
 日本では昔施設で飼われていた個体群が複数の箇所で放出されてしまい、現地のニホンザルと交雑が始まるという非常事態が発生しました。可哀想ではありますが、これらは何年かかけつつも皆駆除されたそうです。一方伊豆大島でも同様の放出がありましたが、こちらはもともとニホンザルがおらず、外洋に浮かぶ島であるため外界からも隔絶されており、現状はまだ駆除の途中で根絶には至っていないようです。いつかまとめて台湾に里帰りとかいう風にはいかないのかな。。これがパンダならきっとそうなるでしょうに。




げっ歯目 Rodentia



 げっ歯類は「齧歯目=齧る歯を持つもの」の意味で、早い話がねずみやウサギの仲間です。基本草食ですが、時期によっては虫や鳥のヒナなどの小動物を餌にすることもあるようです。




「タイワンリス(クリハラリス)」Taiwan squirrels クリックで拡大します

タイワンリス

神奈川県横浜市
1024×682 px
2018/12/31
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 タイワンリスは台湾原産のリスで、ニホンリスより大きく、色が黒っぽいのが特徴です。アジア全域に多く見られるクリハラリスの亜種とされている種です。日本特産のリスより色が濃いためか、顔を見てもリスというよりネズミに近い印象です。樹上性で体長は20cm強くらい、尾は20cm弱くらいと結構大きいですから、近くにいれば見つけるのは割と簡単です。

 タイワンリスは先に紹介したタイワンザルと同じで、環境省指定の特定外来生物(侵略種)に指定されています。日本では各地で繁殖して分布を増やしているため、かなり問題視されています。中でも神奈川県では特に数が増えていて深刻な状況になりつつあります。
 元々、江ノ島で飼われていたものが脱走して鎌倉近辺で繁殖し始めたそうで、今では横浜市の北部まで範囲を広げ、多くの市内の里山公園で普通に姿を見かけるまで増えてしまいました。樹上で生活する生き物なので、樹洞で繁殖するカラ類などに影響が出ると懸念されています。
 このリス、繁殖力がかなり強いようで、神奈川県内では以前より駆除が進められているものの、実質的には減っているように見えません。ニホンリスはかなり山の中にいかないと見られないのが珍しくて希少感もあり、また可愛くもありますが、このようにリス(の姿をした外来種)が街中の公園で飛び回っているのを見ると、自分的にはちょっと違和感を感じています。よく海外の街中の公園でリスと人が共存している絵が紹介されていて、そのような環境に憧れを感じることもありましたが、横浜の公園で見かけるタイワンリスにはそのような憧れを全く感じないな、というのが正直なところです。(鳴き声もちょっとカエルみたいであまり可愛げがない。。)



「ニホンリス」Japanese squirrel クリックで拡大します

ニホンリス

山梨県南巨摩郡
1024×682 px
2017/11/12
  Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3

 昔からリスの姿はクルミを抱えた姿で描かれてきました。私が子供の頃からリスと言えばそういう印象でしたし、典型的なのは漫画「ぼのぼの」に出てくるシマリス君でしょうか。そんな私が実際にクルミを抱えたニホンリスを見たときの気持ちの高ぶりは、中々言葉に言い表しにくいものでした。ただただ「ほんまもんだ!」と。。。
 しばらくその姿を眺めていましたところ、リスがクルミをいただくまでの手順は次のようなものでした。

1.クルミの割れ目を縦にして抱える。
2.クルミの割れ目に沿って齧る。
3.口元を齧って穴が開けられたら、今度は縦に横にくるくる回しながらまだ齧っていないところを口元に持ってきて、周囲を満遍なく齧っていく。
4.ついにクルミが真っ二つに割れる。と同時に、上手にクルミのお椀を二段に重ねて抱え直す。
5.上のお皿から中身をいただく。

 この一連を動画に撮りながら、「へぇ、見事な手捌きだ」と感心したことを今も思い出します。
 ニホンリスをよく見る場所ですが、東京神奈川千葉あたりではまだ見たことがなく、山梨、特に富士山周辺あたりまで足を延ばせばあちらこちらで見かけるようになります。富士山周辺に限らずとも、夏でも涼しいくらいのやや標高が高い場所の方が見られる確率は上がると感じます。中でもよく見られるのは水場であったり、秋にクルミが落ちる場所などがお勧めです。

 ニホンリスは体長が20cmくらいで、尾は15cmくらい。ネズミとウサギの中間くらいなサイズでしょうか。タイワンリスよりは一回り小さい感じです。私は過去4回ニホンリスと出会っていますが、いずれも夏から秋の記録ですので見たのは短めの毛をしたねずみっぽい顔をしていました。真冬になるとニホンリスの耳は毛が伸びて尖り耳のような姿になるそうです。いつか雪の中でクルミを抱くニホンリスを見てみたいものです。



「ニホンリス」Japanese squirrel クリックで拡大します

ニホンリス

静岡県裾野市
1024×682 px
2024/04/20
  Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 春の富士の麓に鳥見にでかけました。水場で鳥を待っていたところ、現れたのは鳥でなくリスくん。まだ冬衣な姿で、一つ上の姿より毛が長く、耳も尖がっています。くりくりした目が可愛いですね。
 まだ青葉が生い茂る一歩手前の森なので、餌もまだ乏しい時期かもしれません。忙しくなるのはこれからでしょうか。




「エゾリス」Hokkaido Squirrel クリックで拡大します

エゾリス

北海道帯広市
1024×682 px
2022/05/04
  Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 帯広の公園で見つけたエゾリスです。近いときなど、私から5m以内の距離にいても平気そうな感じでした。
 北海道にはエゾシマリスもいて、「ぼのぼの」のシマリスくんの大ファンである私はこちらも是非観察したかったのですが、前回の北海道旅行では残念ながら見ることがありませんでした。こちらは次回のお楽しみとします。ちなみにエゾシマリスは冬に冬眠しますが、エゾリスは冬眠しないので冬でも見られるそうです。


「エゾリス その2」Hokkaido Squirrel クリックで拡大します

エゾリス その2

北海道帯広市
1024×682 px
2022/05/04
  Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 もう一枚、横からの姿です。
 エゾリスの特徴は冬姿の耳にあります。上の写真は5月初旬のものなので、まだ身体の毛も長く、冬の姿な感じです。中でも耳の回りの毛がピンと伸びていて、まるでウサギの耳のようです。ニホンリスも冬は似たような冬姿になりますが、エゾリスの方がより長耳さんになるようです。夏になるとこの長く伸びた毛が抜けて、ネズミっぽく丸いものになるそうなので、見にいくなら是非冬姿をお勧めします。
 エゾリスは体長がおよそ25cmほどで、尾が20cm弱程度ですから結構大きいリスです。




「アメリカトガリネズミ科 ヌートリア」Nutora クリックで拡大します

ヌートリア

岡山県笠岡市
1024×682 px
2014/01/03
Nikon D200 Mode A
Nion AiAF ED 300mm/F4s +
Nikkor Ai TC-14BS

 ヌートリアは外来種です。日本に入ってきたのは戦前の話で、軍服に利用する毛皮を採る目的で、国内で養殖しようとしたのが始まりだそうです。水辺に棲む大型のねずみで、南アメリカ原産ということもあって元々寒さには弱い種だとのこと。なので養殖に失敗して放出された後も、東日本では定着せず、比較的温暖な西日本で増えたそうです。確かに福山近辺ではよく見かける動物でしたが、関東に来てからは見たことがありません。

 身体は結構大きく、ネコくらいのサイズ感でしょうか。泳ぐのが得意なネズミと言えばビーバーが有名ですが、どちらも尾が長いところはよく似ているものの、ビーバーの尾は幅広なのに対してヌートリアの尾はネズミみたく細い棒状です。また泳いでいるところを見ていても、尾を使って何をするわけでもなく、果たしていつどういう風に長い尾を使うのかははっきりとわかりません。
 稲の根なども食すため、西日本では農作物被害の害獣として認識され、特定外来生物に指定の上、駆除の対象ともなっています。ちなみに駆除対象とは言え、鳥獣保護法の庇護は受けていて、一般人がむやみやたらと狩猟することは禁じられています(許可制)。捕獲方法は主に罠を仕掛けて捕まえているのだとか。ただ沼地のようにアクセスが悪いところにいるからか、実際のところあまり駆除は進んでいないようです。
 見た目からしてのんびりとした動物のため、皆、川でヌートリアを見つけても「またおるわ」くらいにしか思っていないかもしれません。そんな存在です。










 上で紹介した動物たちとの出会いは、基本的に皆ハプニング的なものばかりです。中で一番驚かされたのは福山のホームグラウンドで目と鼻の先に現れてくれたキツネでしょうか。真昼間に私の目の前数メートルのところに現れました。キツネってイヌ科だから鼻がよさそうで、近くに私みたいな人間がいたらすぐに気づきそうなものですが、やつが現れて数分間、全く私に気づきませんでした。
 幸いなことに、私は今のところクマやイノシシと出くわしたことがありません。特に最近はクマ出没の話題が多いので、気を付けたいと思っています。あと、イノシシではありませんが、イノシシを撃つ猟師さんと出会った経験が2度ほどあります。もしかしたらそっちの方がもっと危険かもしれませんので、皆さんも鳥見で山に入るときはくれぐれもご注意ください。あと、西日本の山にはマダニもいますので、必ず長袖長ズボン、帽子や首回りまで覆える被り物などで身を守りましょう。
 


 

              2024/2 魚屋 拝




(TOP画像 イタチのお子様 2015/06/28 D7100 150-600mm / F5.6-6.3 広島県福山市)