スズメ 雀
Suzume
Passer montanus
Tree Sparrow

スズメ スズメ目スズメ科
 人の住む街にしか棲まないのに
 人には慣れてくれない身近な小鳥

   

福山市での観察について


スズメの動画
 日本で一番身近な野鳥と言えばこのスズメでしょう。人の生活圏には必ずスズメがいます。私の家の庭にもたくさんのスズメがやってきますし、時には巣を作ったりもします。これだけ人に密着した生活をするスズメなのに、庭で私の姿が見えた途端、近くの木の陰に隠れてしまいます。先に人の生活圏にはずスズメがいると書きましたが、逆に山の奥へ足を運ぶとスズメを見ることができません。つまり正確には「人の生活圏でしか見られない」という不思議な野鳥と言えるわけです。このような人との共生が生息の前提となっている動植物をシナントロープと呼ぶそうですが、スズメはその代表格と言えると思います。
 スズメはとても小さい動物です。またすばしっこい動物です。当たり前ですが人が素手で捕まえられるものではありませんし、網を手に持って振り回してもまず捕獲できません。これから紹介する動画で田でエサを漁っているスズメの群れが一瞬にザッと飛び上がる瞬間がありますが、別に誰かが指示して用意ドンの掛け声をしているわけではありません。動画の1フレーム違いでほぼ全数が既に飛び立っていることから考えても、30msつまり1/30秒程度の間で既に集団で動き出していることがわかります。最初の一羽の動き始めに追従して他の皆が動いているはずですから、実際の知覚としては少なくともその数十分の一の判断力と反応性があるのではとおもいます。おそらく1/1000秒程度の反応性があるのではないでしょうか。
 私たち人間は、その時間で反応することは絶対に無理です。これをスズメの立場で見てみると、スズメは人間が動くのをスローモーション的な映像で見ているはずです。確かにこれではいくら我々が網を振り回していてもスズメを捕獲することは不可能です。スズメは当然人間より寿命が短いですが、それだけ生きている時間の分解能が高いので、結果的には私たち人間が人生を全うするのと同じ程度に長く生きた実感があるのかもしれませんね。ちなみにこのあたりを詳しく書かれた書物として「ゾウの時間ネズミの時間」という書籍が中公新書から発売されておりますので、ご興味のある方は一読を。目からうろこが落ちるかもしれませんよ。

 スズメの動画を置いておきます。動画はいずれも福山市内の各地で他の鳥を撮りながらついでで撮ったものですが、後半のドアップの分は私が松永湾周辺に車を止めて、車の横にカメラと三脚をセットし椅子に座って干潟を眺めていた時、車の陰からチュンチュンと現れ出てきたスズメさんです。なんというか、こちら(人間)が動いておらず、近くに車があればスズメって安心するのかな。レンズを向けても全く逃げません。車の全長が4.2mなので最短距離は4m以下程度まで寄ってきたと思います。

  左「スズメの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。ファイルは15MBありますのでDL環境にご注意ください。。



河原のスズメ
 初夏のオオヨシキリを撮りに笠岡に出かけたとき、たまたま目の前にスズメが来たので撮っておきました。普段、自分からわざわざスズメを追いかけることはありません。「いてあたりまえ」の鳥って、鳥の方からやって来てくれたときにしか撮らないので、あとから探しても良い絵が残っていないことが多いのですね。そんなことがわかっていても、なかなか追いかけて撮ろうとは思いません。しかも人家の近くではなかなか良いシチュエーションもないのですよね。スズメ、ツバメ、カラス、ヒヨドリなどは実はもっとも難しい被写体なのかもしれません。

 左「河原のスズメ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。



スズメ
 大阪城公園で見つけたスズメです。2021年の3月末、用事で大阪に10日ほど滞在し、休みの日にちょうど桜が見ごろの大阪城公園にカメラを持ってでかけました。スズメはあまり桜には興味なさそうでしたが、幸い新緑と青空がバックに入って春らしい絵が撮れました。

 左「スズメ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。



スズメの落し物?
 16年9月、群馬県の草津温泉へ一泊旅行に出かけました。浅間山から白根山を通り、草津で一泊。翌日は沼田城址から川場の有名な道の駅へ行き、榛名山を登って榛名湖を眺め、降り道で水沢うどんをいただいて帰るという行程であります。我が家の旅行には暗黙のルールがありまして、まず行き先と宿は嫁さんが決めます。行き先が決まったら行程は私が決めてほぼ全行程を運転します。何故そうなるかというと、嫁さんは地図が苦手なので、道筋を決められないのです。で、私はドライバーの特権として、「ドライブの最中に鳥見に良さそうな景色に出会ったら車を止めて様子見タイムをもらう」というご褒美がついてくるわけです。

 さて、この両日はあいにく天気が雨模様となり、鳥見はほとんどチャンスすらありませんでした。鳥はあきらめて温泉場を観光していると、ふと足元に小鳥の羽が落ちているのを見つけました。温泉街の階段でのことですから、きっとスズメかなんかの羽でしょう。でも、よく考えてみると、私、スズメの羽ってまだ拾ったことがありません。「これはこれで記念になるかな」と自らを慰め、小さな拾い物をポリ袋に収めて帰りました。
 家で図鑑とにらめっこしてみると、確かに模様や色からしてもスズメっぽいようです。確かに一つ上のスズメのアップ画像を見てもらって、風切り羽(羽が最も伸びたときの外側部分にあたる)が茶色-黒-茶色-黒と変化しているのが、今回拾った羽の色目と似ていることが見て取れます。しかしです。原寸大図鑑で比べてみると、拾った羽の方が数mm大きいのですね。。。まあ、多少大きなスズメもきっといることでしょう。総じて否定するほどの差とも思えませんし、「町中で拾った茶色い小さな羽」なのでやっぱりスズメの落し物だろうと、このページに飾ることとしました。きっとこの羽を見る度、草津温泉の硫黄の匂いを思い出すことになるでしょうね。この先、結構よい思い出でとなりそうです。

 左「スズメの落し物?」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


観察データ

場所と回数:山口県 1、島根県 1、広島県 18、岡山県 7、大阪府 7、静岡県 1、長野 7、山梨県 2、神奈川県 7、東京都 3、千葉県 2、茨城 2、新潟県1、宮城県 2、秋田県 1、北海道 2、タイ 3、計65回。九州から北海道まで、人が生活する圏内で観察しています。一方で奥深い山中では見ないという、ちょっと変わった小鳥です。あまりにも普通にいるわりに、基本人にはなつかないので思ったより撮影回数がありません。地味なため、わざわざ追いかけてまで撮ることもありませんのでこんなところかと思います。

観察月と回数:
1月7  〇〇〇〇〇〇〇
2月4  〇〇〇〇
3月12 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
4月5  〇〇〇〇〇
5月3  〇〇〇
6月5  〇〇〇〇〇
7月9  〇〇〇〇〇〇〇〇〇
8月1  〇
9月3  〇〇〇
10月4  〇〇〇〇
11月5  〇〇〇〇〇
12月7  〇〇〇〇〇〇〇
計65回
留鳥です。夏冬の衣替えもないので年中同じように観察できます。




 (トップ画像 スズメ 2011/12/04 D200 300mm 福山市芦田川周辺にて撮影)

 初出:2014/11/30
 改訂:2016/03/06 画像を差し替え
 改訂2:2016/10/10 羽の画像を追加
 改訂3:2022/02/23 静止画を差し替え、観察データを追加