日本の野鳥 索引 「た~と」
Japanese Wild Birds
The initial of a Japanese name "ta-to"
「た」 探鳥について

 

各メニューでは始まりの頭文字に合わせて野鳥観察に関するトピックをお話しします。


探鳥について

 一口に鳥を探すといっても色々な目的・方法があります。

1.「決めた鳥を決めた場所で見たい」
(鳥は見たいが探すのは面倒くさいし、空振りは嫌 派)

 いつもこれができれば最も効率が良く理想的です。しかし自然が相手ではたいていそれは不可能ですし、上手くいってもかえって面白みが無いという贅沢な悩みを抱えてしまうことになるでしょう。動物園で写真を撮っていても、ときめきが少ないのと同じですね。

 私の場合オシドリはこのパターンで「行けばほぼ必ず見られる 」という有名ポイントに出かけ、予定通りにドアップを心行くまで撮ることができました。 凄く有名な場所でしたが、人口の少ない地方のことなので比較的すんなりとオシドリの大群を間近で見られました。 餌付けされている群れなので、動物園で撮っているのとあまり変わりないのですが、地域ぐるみで毎冬継続してきちんと世話されており、「こういう野鳥の楽園もありかな」と楽しく撮らせてもらいました。 ただ都会から近い有名ポイントだと、順番待ちや人だかりでなかなかこうは思い通りに場所取りできないかもしれませんね。 日本では鶴の飛来地などでも、このように人からのおもてなしがないと生息数を維持できない状況になっています。つまり観察場所の好き嫌いを問わず「そこでしか見られない鳥」もいるということです。悲しい現実ですが、少しずつでも数や場所を増やしてやれれば良いなと願っています。

2.「場所はどこでもいいから、とにかく決めた鳥を見たい」
(探す苦労は厭わないからとにかく狙った鳥を見つけたい 派)

 この場合はまず出かける前に情報を仕入れるべきです。 昔なら出版物で調べたり、同好会に入会して自分なりの情報網を持つことから始めました。 今はインターネットという便利な情報ツールがありますので、少なくとも昔ながらの出版物よりは精度の高い情報収集ができるのではないかと思います。 私は最近Googleストリートビューを利用させてもらって、山道や里山のシチュエーションを下調べして出かけることがあります。もちろん鳥が写っていることなどはありませんが、例えば「Aという地域にはBという鳥がいる」などという情報があれば、Aという地域をストリートビューで事前探索し、ある程度場所の目星を付ける、などということができます。私の場合、オオルリやサンコウチョウはこの手で探し、なんとか無事見つけることができました。

 当然はずれもあり、狙いの鳥を見つけるまで手を変え場所を変え、長く持久戦になる場合もありますが、その間、思ってもいなかった他の鳥に出会えることも多く、ベタな話にはなりますが「やはり足でかせぐのが一番」ではないかと思います。 色々な情報を細かく仕入れて最終的にピンポイントに場所を決めるなら、結局「場所はどこでも良い」のではなくて「決めた場所で決めた鳥を見たい」になってしまうのですが、そこには「情報収集の努力」が入っているので、これが実った場合はやはり嬉しいものだと思います。

3.「場所を決めて、そこで出会えた鳥(何でも良い)を見る」
(どこかに腰を落ち着けて、のんびりと出会いを待つ 派)

 私が探鳥に出かける際、一番多いパターンがこれです。日本全国津々浦々、まず「ここには鳥など一羽もいない」などという場所を探すほうが難しいくらいであって、およそどこの地域でも何かしらの鳥を見ることができます。もしそこがちょっとした山沿い・海沿いの公園であれば、おそらく四季折々で多くの野鳥と出会うことができるでしょう。

 我が家から車で約10分の山中、福山市ふれ愛ランドに通うことおよそ6年、私はこのごく狭い一帯において自分の目と耳でおよそ60種以上の鳥を見つけることができました。 さすがに最近では初見の鳥との出会いが減りつつありますが、毎年声は聞こえど未だファインダー内に姿を捉えられないホトトギス、ヤマドリ、コマドリや、鳥見の方から「先週来てたよ」と聞かされてあと一歩のところで出会えなかったサンショウクイやクロジなど、まだまだたくさんの課題・宿題が残っています。

 特にこれから鳥見を始めようという方には、自分の足が楽に届く範囲内で、地形的に特色のあるお気に入りポイントを一つ二つ持たれることをお勧めします。 お気に入りポイントが決まれば、そのような環境を好む鳥を図鑑などで調べ、季節に合った探鳥・鳥の観察を行ってみてください。 おそらく自分で思っていたよりは、ずっと多くの鳥達が見つかることと思います。



地域、東西

 私は1992~2015まで広島県福山市に、2015年~2020年の現在まで神奈川県横浜市に住んで生活しています。鳥見を本格的に始めたのは2007年くらいからです。従って鳥見のうち8年を西日本にて、5年を東日本にて経験してきました。もちろんそれぞれの地域を極めたわけではありません。それでも、横浜に来てからはやはり「差」や「違い」を感じることが度々あります。せっかくなのでここで東西の地域性を書いてみようと思います。

 西日本について

 日本は北海道から沖縄まで、方位で言えば東北から南西に向かって伸びています。そこを半分で切る場合、およそ名古屋岐阜石川あたりが分かれ目と考えれば、西日本は東日本に比べて、平均してやや南側にあるといえます。また中国大陸や朝鮮半島に近いという点も見逃せないポイントとなります。従って局地的に見れば大陸系の渡り鳥、迷い鳥などは幾分西日本に多いように思えます。ツクシガモはその典型で、名の通り九州で最も多くみられ、私が福山近辺(笠岡干拓)でもよく見たカモですが、関東ではまだ見たことがありません。また私は見られなかったアカハラダカなども九州長崎では渡りでよく見られるとのこと。
 このように渡り鳥は中国大陸、朝鮮半島、樺太、千島など渡りの経路に近い場所の方が数が多いのは自然です。一方留鳥でも西日本に多い鳥と感じる鳥がいますので、少し紹介してみたいと思います。まずこちら(横浜)に来て一番出会いが減った鳥がホオジロとウグイスの2種です。ホオジロもウグイスも、関東で見られないのかというとそんなことはありません。山や公園で普通に見られる種です。ただ見られる量が明らかに違います。福山近辺での両者は本当に多くの数がいました。探すという行為をしなくても、鳥さんから「ここにいるよ」というアピールが必ずありました。

 感じる東西の差

 当初は「関東近場では人口密度や緑の占有率が違うので鳥の数も減るのかな」と思いました。しかし町から外れた宮ケ瀬あたりでも、やはり彼らの数が増えることはありません。ホオジロもウグイスも派手にさえずりますから、そこにいさえすれば必ず分かります。西日本にいる頃は、春の山を歩いているとウグイスやホオジロのさえずりがまるで山からシャワーを浴びるように聞こえましたが、関東では時折遠くで聞こえる程度です。留鳥ではありませんが、冬のジョウビタキも少ないですね。ルリビタキはそれなりに見かけるのに、ジョウビタキは明らかに少ないです。福山では山に入らなくても自宅の周りでよくジョウビタキを見かけました。しかし横浜に来てからは里山公園でジョウビタキを見られるのは「絶対的」ではなくなりました。あと田んぼの量にもよるかもしれませんが、チュウサギも見た記憶がありません。チュウサギは他のサギのように川や海では見かけないので、唯一の生息環境である田んぼが少ない私の居住地では、今後もまず見られないように思えます。田んぼに鳥見に行くチャンスが減っていますので、これからは田んぼの時期を意識して、サギやチドリを探しに群馬や茨城方面にでかけてみようと思います。

 東日本について

 西日本では見たことがなかったのに、関東に来てからよく見るようになった鳥を紹介します。ミユビシギ、スズガモ、オナガ、船橋三番瀬限定のミヤコドリ。これらは西日本で見たことがありませんでした。もっと北に行けば北国の鳥達もだんだんと現れます。マガン、シジュウカラガン、ハクガン、コクガン、オオハクチョウなどは西日本では見られても稀ですが、冬の東北まで足を伸ばせば生活に密着したレベルで普通に見ることができます。

しかし私としては、これら「地域の鳥」以上に関東に来ることで高山帯が身近になり、高山(概して2,000m以上)・亜高山(1,000~2,000m程度)の鳥たちとの出会いが一気に増えました。西日本では高い山といっても、せいぜい標高1,000m程度が限度です。そもそも中国地方最高峰の大山でも1,700mと少しでして、しかも登山口はずっと低い標高1,000m未満ですから、車で気楽に出かけられて、その周囲で鳥見もできるお手軽・お気軽な高山はひとつもありませんでした。一方「関東」内ではないものの、横浜から100kmほどの距離である富士山や、高速を飛ばせば3時間ほどで行ける八ヶ岳周辺なら、車から降りた時点で既に2,000m超の場所までたどり着くことができます。ここまで上がれば見える世界は一気に変わり、見られる夏の鳥は例えば、コマドリ、コルリ、メボソムシクイ、ビンズイ、ノビタキ、ホオアカ、ルリビタキ、ゴジュウカラ、キバシリ、ホシガラスなど、本当にたくさんの小鳥たちが観察可能です。更にロープウィやバスに乗って2,500m級の駒ヶ岳、乗鞍岳、白馬岳や少し遠くになりますが富山の立山などまで行けばイワヒバリやライチョウなども容易に観察することが可能です。(但し、この辺りの高山になると装備やコスト、体力などで事前準備もそれなりに必要になってきます)


(トップ画像 タゲリ 2014/12/14 笠岡市笠岡干拓周辺にて撮影)

 初出:2014
 改訂:2020/9/24 文章の見直し
 改訂 2021/07/15 主な記録場所、レッドリスト記号を追加