イカル 鵤
Ikaru
Eophona personata
Japanese Grosbeak
 
イカル スズメ目アトリ科
 いかつい顔に驚きの美声を持つ中型の鳥

   

福山市近辺、大阪府豊中市、高梁川上流での観察
 


アトリについて、動画の紹介
 
 夏に山を歩いていると遠くから「フィーホーヒホヒー」と言うようなのんびりとした鳥の鳴き声が聞こえて来る事があります。私はこの声の主がわからず、何のものなのかずっと気になっておりましたが、ある日結構近い松の木からこの声が聞こえて来て、ついに正体を確かめるチャンスをつかみました。そうしてレンズの向こうに見えた鳥のシルエットは
 
1.かなり大きめでムクドリサイズ
2.クチバシがでかい
3.尾羽が長い
 
 自分の経験の中でこの3つの条件にあてはまる鳥は「イカル」しかありません。ただ私は冬のイカルしか見たことがなかったので、7月のこの時期はこの目で姿を見るまでイカルに対して全くのノーマークでした。
 調べてみるとイカルのこの声は3度調子が変わることから、その鳴き声を「月日星=ツキヒーホシ」と聞きなし、イカルが「三光鳥」と呼ばれるゆえんであるとのことでした。尾羽が超長いことで有名なカササギビタキ科のサンコウチョウのさえずりも同じように「ツキヒーホシ」と聞きなしされますが、イカルの方はさえずりの調子が随分ゆっくりとしています。一方でサンコウチョウの方は囀りの勢いが忙しい上、語尾に「ポイポイポイ」が追加されますので、一度聞いて覚えれば両者を間違えることはありません。
 イカルは非常に太いクチバシを持っています。このごついクチバシで殻の付いた固い木の実をバチバチ音を立てて割って食うのですが、10m先の木の枝から届くくらいに大きな音がします。そんないかつい印象の鳥が、あの美しい鳴き声を聞かせてくれることには少々びっくりさせられます。しかしそもそも美しいさえずりで有名なカナリアも同じアトリ科の鳥なので、イカルの声にもさほど驚くことではないのかもしれません。ちなみに尾羽の長さ以外、顔や色目が良く似たシメからは過去鳴き声を聞いた覚えがありません。同じアトリ科でもやっぱり種によって色々違うのでしょうね。
 イカルの動画を置いておきます。出だしの画面は大阪府豊中市千里中央の公園で正月に撮ったものです。結構はっきりと木の実の殻を割る音が聞こて来ると思います。続く雪の降る絵は高梁川の上流で2月に撮ったもの。最後の画面は7月のふれ愛ランドで聞こえてきたイカルの声を録音しようとビデオを廻したものです。葉っぱしか映っていませんので音声のみを聞いて絵は無視してやってください。
 
 左「イカルの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。ファイルは15MBありますのでDL環境にご注意ください。。
 

公園のイカル
 
 イカルのサイズはおよそムクドリサイズで、アトリ科の鳥としては大きい方ですからその姿はいやでも目立ちます。この絵は正月に千里中央の公園で撮りました。街中の公園なので人馴れしているのか、結構近いところから撮っていても逃げませんでした。お豆さんを食うのに必死だったからなのかもしれませんね。
 一方不思議なことに、ふれ愛ランドで見るイカルはいつも高い木の上におり、写真に撮っても証拠写真レベルにしかなりません。もう少し近いところへ降りてきてくれると嬉しいのですが、ここには大好きな固い殻の木の実がないからかな。ドングリならたくさん道に落ちているのですが。。さすがに大きすぎか。。。
 
 左「公園のイカル」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 

雪の日ののイカル
 
 2014年の2月、寒いのを我慢して朝早くからヤマセミを探しに高梁川上流へ出かけた日のことでした。未だ忘れもしませんが、せっかくみつけたヤマセミに逃げられてしょぼんとしている私を、このイカル達が皆で慰めてくれました。彼らのおかげで往復100km走った理由ができて、随分と気持ちが落ち着きました。
 冬のイカルはたいてい小さな群れで現れるようです。あの調子だと、エサを食い尽くしては次のエサ場に移動するのでしょうね。食いしん坊達だ。
 
 左「雪の日のイカル」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 

観察データ
 
場所と回数:中国7、関西1、関東2、都合10回。
 観察場所は基本的に山の中です。しかし関東では平地の川沿いでも出会っていますし、大阪の千里中央の公園でもカウントしています。さえずりがとても分かりやすいので、場所を決め付けることなく少しでも声を感じたらその辺りを探すのがよいと思います。場所の内訳は山の中8、河原1、公園1です。なお、記録は10度ですが、イカルだなとはっきりわかる声だけの出会いだと、写真記録合わせて倍の20度以上はあるだろうと思います。ちなみに神奈川に来てから一番通う回数が多い宮ケ瀬でも何度か姿を見たり声を聴いたりしています。
 時期は通年です。姿格好も大きいので出会いの難易度はそれほど高くないと思います。地道に鳥見をしていたら、そのうちきっと出会える鳥さんですね。
 
観察月と回数:1月2回、2月1、4月1、7月1、8月2、9月1、12月2。中国から関東までの山、平地では1月~12月まで通年で観察できる鳥です。
 
 

 
 イカルを知る前、GWの頃の大阪の千里中央の公園で「ヒーホーハー」という美しい鳴き声を聞いたことがありました。しかし結局声の主の姿を見ることはできませんでした。今もその声は頭の中に響いています。福山で聞くイカルのさえずり「フィーホーヒー」とは多少違うのですが、なんとなくあれはイカルだったのかなと感じています。福山で聞いたのんびりとした鳴き声の雰囲気が千里で聞いたものとよく似ているのです。いつか鳴き声の主を直接確かめたいものです。
 
 (トップ画像 イカル 2013/01/03 V1 300mm/F4 大阪府千里中央の公園にて撮影)
 
 初出:2014/10/22
 改訂:2018/08/26 観察データを追加
 改訂:2020/05/22 文章の見直し