カワガラス 河烏
Kawagarasu
Cinclus pallasii
Brown Dipper

カワガラス スズメ目カワガラス科
 ゴロ石のある渓流に棲む
 逃げ足の速い茶色い鳥

   


福山市近辺での観察について

 子供の頃少年マガジンで連載されていた「釣りキチ三平」という漫画が大好きで毎週楽しみにして読んでいました。この中で「タキタロウ」という幻の大魚(大きなイワナ類?)を追うエピソードがあり、ここで魚に食われてしまう鳥としてカワガラスが描かれていました。おそらく私がカワガラスを知ったのはこれが最初だったと思います。子供心に「カワガラスは水辺にいるのでカラスでは無い」と理解していましたが、「カラスと名が付くくらいなのできっと真っ黒な鳥なんだろう」と長らく信じ込んでいました。
 カワガラスを実際に初めて自分の眼で見たのは大阪の箕面の滝の上流でありました。カワセミを探して川沿いに歩いていると、お尻をピョコピョコと振って尾っぽを立てる茶色い鳥を見つけました。この時初めてカワガラスがこげ茶色・・・というよりチョコレート色の鳥なのだと知りました。図鑑でカワガラスを調べますと、どの図鑑でもミソサザイと並んで掲載されています。確かに尾っぽがピン!と立つ様はよく似ています。生息域も似ているようです。しかしサイズが全く違う。。。ミソサザイは日本の小鳥でも一二を争う超小型の鳥ですが、カワガラスはツグミサイズで中型の鳥です。両者には「その間は無いんかい?」と突っ込みたくなるくらいの落差があり、いつも図鑑を見る度不思議に思います。
 **ここで少し上の紹介文に修正を。
 確かに古い図鑑ではミソサザイとカワガラスが隣同士で掲載されていました。しかし、最近はDNA解析などの技術と共に分類がどんどん変わっていて、現在この両者は少し離れた分類に改められているようです。特にカワガラスの方が以前とは離れた系統に位置付けられていて、ツグミやムクドリの仲間に入れられています。確かに大きさを比べると、カワガラスは昔に仲間とされていたミソサザイやキバシリよりはツグミやムクドリに近いですね。最新で発行されている図鑑では、両者はもう離れた位置にあるので「その間はないんかい?」と突っ込むこともなくなりました。ちょっと寂しいな。。。

 福山近辺では川の上流に行き、ゴロ石のある渓流に行けば大抵見つけることができます。ただし、見つけても逃げ足が超速いので、じっくり観察するのはかなり至難の業となります。少しでも姿を察知されると距離にして50mくらいでもう逃げられます。ではどうやって観察するのかというと、ちょっと寒いですが1月から2月頃は営巣の準備に入る期間なので、最初に姿を見かけた付近でひたすら待つことです。巣の近くであれば一端どこかへ飛んで行っても10分もすればまた戻ってきます。こちらが待つのは超寒いのですが、カワガラスを見ているとその超々冷たいはずの水の中にドボンドボンと頻繁に飛び込んで、水中でバシャバシャやってエサ取りをしています。冬の水道で皿洗いすると、手が痛くて5秒でギブアップする私などからすると信じられない光景です。一体どうやって体温を維持するのでしょうね。ちなみに飛んで逃げる時は「チャッ・チャッ!」と短く鳴きながら川沿いに直線状に飛び去ります。シロハラとカワガラスはそれぞれ山と川の逃げ足チャンピオンですね。。。こちらは何にもしていないのにいきなり騒がしく逃げて行く。ちょっと大げさな奴らです。
 カワガラスの動画を置いておきます。最初は山野峡で春のもの。次は芦田川の上流にて。1月に撮ったもの。後半前半は山野峡にて2月に撮ったもので、最後は山野峡で春に出会った若鳥です。

 左「カワガラスの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。ファイルは13MBありますので、DL環境にご注意ください。



 カワガラスはヤマセミやカワセミのように派手さが無く、というよりとても地味な鳥なので被写体としてはあまり人気のある鳥ではありません。ただ尾っぽを立てる姿がユーモラスですし、ごろ石がバックに入るので絵にはし易いですね。
 カワガラスを撮る時って、場所柄からして大抵川を見下ろす構図になります。また割と周囲の山が切り立った渓流にいることが多くて、光線の入り具合が暗い場所で撮ることになり、なかなかシャッター速度が上がりません。一方でカワガラスはいつもスクワットをしていまして、落ち着きがありません。結果がぶれぶれの量産。いつもの言い訳ですが、なかなか難しい相手です。

 左「カワガラス」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。



 山野峡を歩いていてカワガラスの親子を見つけました。不思議なのは親より子のサイズが大きかったことです。よほどたくさんのエサをもらえたのでしょうね。エサは川の虫かな?身体は大きくても「ご飯ちょうだい!!!」の身振りは子供です。陰に隠れて撮っていたので、前に何か被っているものがあり、鮮明な絵ではありませんがご容赦を。

 左「カワガラスの子育て」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。



 次の絵はおそらく上で紹介している若鳥だと思います。「と思います」という理由ですが、上のエサをもらっている若鳥の絵は山奥へ向かう行きの道すがらで撮ったもので、これから紹介する絵は帰り道で撮ったものだからです。最初川の上に伸びた枝に止まっているやや大き目の鳥を見つけて、ファインダーを覘きました。胸のあたりに点状の模様があったので、「ツグミかな?ビンズイかな?でもこんな急流沿いにはいないよな」と思ってレリーズボタンを押していたのですが、いきなり川に飛び込んだので「あれ?カワガラスだったの?でも全身チョコレート色でないし??」と惑わされました。川から上がってきたところをもう少し近づいて観察していると、口元に白っぽい色が見え、これは若鳥だと気づきました。するとさっきの若鳥だろうと。。若鳥というよりまだ幼鳥に近いのかもしれません。それでも果敢に急流に突っ込んでいくあたり、頼もしいというか、さすがカワガラス。自然で生きる生き物の力強さを改めて感じさせられました。
 ちなみに、サイズがわからなければこの絵を見る限りミソサザイにとても似ていることがわかります。やはり同族なのですね。

 左「カワガラスの若鳥」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


観察データ

場所と回数:福山市近辺の渓谷 4、大阪の箕面の滝上流 1、新潟の美人林周辺の川 1、都合6回。川の上流で大きなゴロ石がある流れの早めな渓流、清流で見られます。

観察月と回数:
 1月2 〇〇
 2月1 〇
 3月1 〇
 4月1 〇
 5月1 〇
 6月0
 7月0
 8月0
 9月0
10月1 0
11月2 0
12月1 0
都合6回
おそらく通年で観察できる鳥さんです。2月頃に巣作り、繁殖期を迎えるため、初春が一番活発で見かけやすいと思います。夏も見られないわけではないはずですが、私の記録は何故か冬ばかりですね。なんででしょう。夏は眼下の川より、オオルリやキビタキのいる頭上を見て歩くことが多いからかな?あと冬はセミが鳴かずに静かなので、カワガラスの逃げ際の鳴き声が聞こえやすいという理由もあるかもしれません。

  (トップ画像 カワガラス 2014/01/13 V1 300mmF4 芦田川上流にて撮影)

 初出:2015/03/14
 改訂:絵の差し替え 2015/04/19
 改訂:文章の校正、観察データの追加 2020/07/13