アオバト 緑鳩
Aobato
Treron sieboldii
White-bellied green-pigeon
 
アオバト ハト目ハト科
 山ではあまり姿を見せないのに
 海では大胆に群れで現れる
 緑色した優雅なハト

   

福山市近辺での観察
 


アオバトの動画
 
 鳥見を始めてからあらためて図鑑を眺めていて、ふと緑色のハトがいることを知りました。ハトと言えばドバトもキジバトもどちらかと言えば地味な存在で、「どこででも普通に見かけるがためにあまり興味が持てない」という代表的な鳥です。「アオバトに出会えばそんな(ありふれた)ハトのイメージが変わるかな?」とか頭の片隅に思いながら鳥見を続けておりましたところ、ある日、ふれ愛ランドで「オーアーオー」というかなりよく響く、大きな鳴き声を聞きました。「アオバトだからアオと鳴く」全く持って冗談のような話ですが、図鑑にもそのように鳴くと書かれています。実際耳にしてみても、「これはまずアオバトの鳴き声に違いない」とすぐに確信しました。なんと分かり易い話でしょうか。そもそもあの声量は小鳥では無理で、ハトサイズレベルの体形でないと出そうにありません。
 このようにふれ愛ランドにアオバトがいることは分かったのですが、声こそ何度も聞くものの、一向に緑い姿を見ることはできませんでした。図体も大きいはずですし、ハトなんだから人見知りもしないだろうし(勝手な想像)、そのうち遭えるだろう、と楽観していたのですが、初めて声を聞いてからいつしか1年以上経ってしまい、そうこうするうちアオバトのことも忘れてしまいました。
 2014年の1月下旬、冬の寒さも一番の頃、ふれ愛ランドのいつもの散歩コースのメインストリートを歩いていたところ、向こう15~20m位の木の上で何やら大き目の鳥がごそごそしています。「ヒヨさん?」と目を凝らしてみると、どうも色が緑っぽい。そんなヒヨさんはいませんし、ツグミでもありません。すぐに三脚をセットしてファインダーを覗いてみると、何とそこに「緑いハト」がいるではありませんか。やっと出会えたアオバトは10羽程度の群れでいるようでした。私がカメラをカシャカシャ言わしている間に、察知されたのか小群れは少しずつ散って行きました。短い出逢いでしたが、長らく見ることができなかったアオバトに突然出逢えて、とてもラッキーな一日となりました。
 
 アオバトの動画を置いておきます。動画の最初は山野峡で撮れた豆粒なアオバトの小群れ。中盤は上で紹介したふれ愛ランドのもの、後半の海辺のシーンはアオバト観察地として有名な神奈川県の大磯海岸のものです。
 
 左「アオバトの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。動画は20MBありますので、DL環境にご注意ください。
 

ふれ愛ランドのアオバト
 
 上で書いた初めての出会いで撮ったアオバトです。ここで紹介する絵は、丁度ファインダーを覗いて最初に目に入ってきたそのままの絵です。少しトリミングしてありますが、私が初めて目にしたアオバトだったために今もこの構図をよく覚えています。ふれ愛ランドには冬に小さな赤い実がたくさん生る常緑樹があるのですが、この2013~14年の冬は一向に赤い実が減らず、「鳥がいないのか、はたまた実がまずいのかどちらだろう?」と常々訝しがっておりました。この日のアオバト達は、どうやらその赤い実を食っているようでした。まずいわけではなく、単にこれまでは鳥が少なかっただけのようですね。
 
 左「アオバト 福山市ふれ愛ランド周辺にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 

海水を飲みに来たアオバト
 
 神奈川に引っ越してきて、西日本では見られなかった光景に出会えるようになりました。街中にオナガがいる光景などはその最たるものですが、ここで紹介する海水を飲みに来るアオバトも私にとっては見慣れぬ驚きの光景でした。
 ただ私には驚きであっても、図鑑などでアオバトを調べると確かに「海水を飲みに海岸に現れる習性がある」との情報が載っています。その姿が見られるもっとも有名な場所としてよく紹介されるのが神奈川県中郡の大磯海岸です。(もしかしたら福山近辺でもどこかの磯に来ていたのかもしれませんが、そのようなうわさを聞いたことはありませんでした)せっかく横浜に引っ越してきたのですから、いつかその光景に出会いたいと思っていましたが、飛来の季節は初夏から夏にかけてなので、引っ越してきた秋からは少々待たねばなりません。それから半年たってやっと初夏が訪れましたので、海水浴客がどっと押し寄せてくる前の5月後半に出かけてみることとしました。早朝出発して6時頃に現地駐車場に車を置きます。そこから海岸に向かってて歩いていると、早くも近くの電線にハトのシルエットが見えたので「もしや?」と思ってレンズを向けた見たところ、こちらはいつもの灰色のドバトさん達でありました。だまされた。。。いや、ドバトには何の罪もありませんが。。。
 更に進んでハトがやって来そうな磯近くで三脚を立てて待っていますと、やがて山側上空に空飛ぶハト軍団のシルエットが見えてきました。10~20羽程度の群れが私の上空を何度かぐるぐる回り、やがて目の前の磯に本当に降りてきました。確かに海水を飲んでいます。「へー」と見ていると、なんと忙しい鳥さん達なのでしょうか、磯にはものの数十秒の滞在で、即飛び立ってそのまま山に向かって帰っていくではありませんか。。。待つこと15分、撮るのは数十秒みたいな繰り返しで1時間少々過ごし、4回ほどの飛来がありました。思ったほどの撮影はできなかっものの、それなりに記録はできたのでこの日は終了としました。
 
 左「海水を飲みに来たアオバト 大磯海岸周辺にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。中央の肩が紫色した個体が♂、緑色なのは♀さんです。
 

アオバトの飛翔
 
 すぐ上と同じ日、大磯海岸での飛翔絵です。20羽前後の群れが飛んで来る様はよく見るドバトの群れの飛翔とよく似ています。ただドバトより少し羽ばたきが多いというか、なんとなくアオバトの群れとドバトの群れの飛翔は違うことがわかるので、遠くに飛翔軍団のシルエットが見えたときは磯に降りるより随分と前からカメラを構えて備えることが出来ました。ちなみにドバトの場合、一つの羽ばたきがもう少し力強いように感じました。アオバトはドバトより少し小柄で、多少近づいて見られれば腹側の色が均一なのでその辺も認識しやすいですね。
 
 左「海水を飲みに来たアオバト 大磯海岸周辺にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 

アオバトの羽
 
 紹介する最後の一枚はアオバトの羽です。山野峡での最初の出会いの時は、川向うの山にばかり気を取られ、気持ちに足元を見る余裕がありませんでした。その後渓流沿いに奥へ向かって進んでいる間、「もしかして、さっきの場所の地面にはアオバトの羽が落ちているかもよ」とひらめきが走り、帰り道に先ほどの場所に寄って探してみると、「落ちている」どころかタカにやられたらしいアオバトの羽がいたるところに散乱していることに気づきました。おかげさまで風切や胸、雨覆だけでなく、黄色の縁取りが目立つ下尾筒まで一通り拾うことができました。あとあと知り合いに教えてもらった情報ですが、アオバトの天敵はクマタカとのこと。そうと知っていればもう少し通ったのに。。
 
左下から列順に
下腹、胸(黄色い)・・・綿毛に近い柔らかな羽
小雨覆(肩のやや紫かかった色)、中雨覆い・・・羽の肩の部分
中央尾羽(渋い緑)・・・上から見た尾羽
下尾筒(緑とクリーム色の団重ね)・・・下から見た尾羽
だと思われます。
風切はグレーが強くて地味なので並びから外しました。 写真では表現が難しいですが、アオバトの羽は光の反射具合で渋い緑色が浮かび出てとても上品で綺麗ですね。
 
 左「アオバトの羽 福山市山野峡周辺にて拾得」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。

 

観察データ
 
場所と回数:中国2、関東1、都合3回。場所は開けた山の中2回、関東は海岸で1回。これ以外に声を聞いたこと、落ちている羽を見つけたことは何度もありまして、皆山の中です。初めて声を聞いたのは福山市ふれ愛ランド(山の中の公園)でした。他にも例えば2018年5月末に戸隠へ出かけた際に、お宿からアオバトの鳴き声が聞こえました。とりあえずアオバトに遭おうと思えば、初夏に海岸に出かけるのが一番でしょうね。待ち伏せできるし隠れる場所もないので見やすいです。背景は「海と岩」と決まってしまいますが。。。今までのところ山の中ではかなりレアな鳥さんです。
 
観察月と回数:1月1回、2月1、5月1。中国から関東までの山の中だと、基本通年いると思います。夏場は海岸沿いの岩場に海水を飲みに来るので、海で見るなら初夏がよいとのこと。海水浴客が大勢やってくる前の、5月から6月くらいまでの早朝が観察しやすと思います。山では時々オーアーオーという大きな鳴き声を耳にしますが、声をあてにして姿を探し出せた経験はありません。キジバトなんかとは違ってとてもシャイな鳥さんです。
 
 
 (トップ画像 アオバト 2016/05/21 D7100 150-600mm/F5.6-6.3 神奈川県大石海岸にて撮影)
 
 初出:2015/02/15
 改訂:2016/05/21 大磯のアオバト観察を追加
 改訂:2018/08/12 観察データを追加