タヒバリ 田雲雀
Tahibari
Anthus spinoletta
Water Pipit
 
タヒバリ スズメ目セキレイ科
 ヒバリとは名がつくものの
 実際にはセキレイの仲間の茶色い小鳥

   

福山市芦田町自宅、神奈川県三浦市の海岸周辺での観察について
 


初めての出会い、動画の紹介
 
 我が家の裏に広がる田んぼ(クワイの田も含めて)ではたくさんの野鳥を見ることができます。
 スズメやセキレイ、サギ、カラス、ハトのようなどこででも見られるありふれた野鳥はもちろんのこと、季節ごとに多少珍しめの鳥も現れます。例えばアトリの群れが来たことがありますし、コチドリやタシギも来てくれます。コチドリやタシギは早春にクワイの田んぼ跡で見るのですが、これから紹介するタヒバリもセットでやって来ます。
 
 タヒバリは「ヒバリ」とは名がつくものの実際にはセキレイの仲間となります。もっと近いところでいうとビンズイなどが近縁です。セキレイは白黒グレーの無彩色系ですが、タヒバリは茶色がベースでぱっと見セキレイには見えません。しかし現れる場所は水たまりのある田畑のように湿っぽいところで、そういうところはやはりセキレイとよく似ています。
 そもそもタヒバリという名前は以前から図鑑を通じて知っておりましたが、「タヒバリというくらいなので飛びながらさえずるとか、頭が尖がっているとかあるのかな?」と勝手に想像をしておりました。ところが実際目にする当人(当鳥)は地べたを歩くばかりで立居振舞も姿格好もいたっておとなし目。。。「うーん、いったいどこがヒバリっぽいのだろう。。。もう少し春も進めばさえずったりするのかな?」とか思ううちに、タヒバリくんはうちの近所から去っていってしまうので、結果よくわかりません。
 ちなみに夏羽は胸がオレンジかかった濃いめの色になるそうですが、私は見たことがありません。動画の真ん中の場面のもの(左サムネイルのもの)は3月末に撮ったもので、やや胸に赤みが出始めていますから羽換わりの途中なのかもしれません。ネット上の画像を検索してもほとんどが冬羽しか出てこず、やはり日本でのタヒバリは北海道を除いて冬鳥なのだろうとと思います。
 
 左「タヒバリの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。ファイルは10MBあるのでDL環境にご注意ください
 

田んぼのタヒバリ  
 タヒバリはとても地味な小鳥です。土の上で見ることが多いので、ますますもって地味に見えます。そのような特徴の無い小鳥を「何を持ってタヒバリであると同定するのか?」ですが、正直これといった決め手が思い浮かばず、とても観察者泣かせな鳥だと思います。見るのがいつもまだ冬の時期だからかもしれませんが、鳴き声も聞いたことがありませんので、見つけるきっかけもありません。私も他の鳥を見ていて偶然見つけたパターンがほとんどで、見る機会自体が乏しい部類の小鳥だと思います。そもそも冬休み中の田畑など覗き見る人もほとんどいませんから、姿だけでなく見る場所自体も地味な鳥ですね。
 さて、それでも「これはもしかしてタヒバリかな?」という鳥に出会ったら、次のようなポイントを観察してみましょう。まず歩く雰囲気がセキレイににているので、茶色いセキレイを見たと思ったら、タヒバリを思い浮かべてみてください。しかし田んぼには姿が似たホオジロやカシラダカもいるので、それだけでは決められないと思います。胸の縦筋はホオジロにはありませんが、カシラダカには多少見ることができますのでまだ決定打にはなりません。水たまりで見かけたなら、ホオジロやカシラダカは水面をジャブジャブ歩くことはまずないので、そこでやっと見分けられるかと思います。でもいつも水たまりを歩いてくれるとは限りませんよね。そこで次に、もしも後ろ指が見えたなら、タヒバリの後ろ指は爪も合わせてとても長いので、これは見分けに使いましょう。上のトップ画像を見てもらうとわかりますが、前指より後ろ指がずっと長いのでこれは特徴的ですね。ただ、後ろ指って中々はっきりと見ることができませんので、これは知っていてもいつも使えるとは限りません。また図鑑などを見ると、ビンズイをはじめとして、似たような色をした仲間が何種類もいるようです。結局のところ私などは、やはりしっかりカメラで絵を記録して、家に帰って撮った絵と図鑑をにらめっこするしか手がありません。うーん、難しい鳥さんだ。
 
 左「田んぼのタヒバリ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 

海辺のタヒバリ  
 福山を去って、田んぼの鳥を観察する機会がめっきり減りました。横浜に来てから5年、タヒバリを見た記憶はありません。しかし思わぬところで出会いはあるものです。三浦半島の海岸沿いの岩場で海鳥観察を行っていたところ、足元の少し向こうにスズメよりやや大きめの茶色い鳥が飛んできました。イソヒヨドリよりは少し小さい。「デブったスズメ?」とか思いながらレンズを向けると、タヒバリっぽい。「ビンズイではないよな?」とか思いながらシャッターを切りました。
 家で確認するとやはりその小鳥はタヒバリでした。図鑑を読むと確かに海岸にも現れると書かれています。ただ私の中ではその名前の通り「タヒバリは田に現れる鳥」と固定観念ができていたので、当日はかなりびっくりしました。どちらにしろ6年ぶりの出会いができたのやとても良かった。「どうせまたスズメだろ」と思ったりせず、無視しなかったことがなにより良かった。。少しは勉強したかも。。
 
 左「海辺のタヒバリ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 
 

観察データ

場所と回数:広島県福山市3、神奈川県三浦市1、都合4回。福山市は田んぼで。三浦市は海辺の岩場で。セキレイの仲間なのでやはり水際がポイントなのでしょうか。ただ川沿いで見たことはありません。早朝の田んぼで見た記憶が強いです。

観察月と回数:
1月0
2月1 〇
3月2 〇〇
4月0
5月0
6月0
7月0
8月0
9月0
10月0
11月0
12月1 〇
都合4回
冬鳥です。数が多くないので観察のチャンスは少なめですが、3月いっぱいくらいまでは観察記録があります。

 
  (トップ画像 タヒバリ 2015/02/17 D7100 150-600mm F5.6-6.3 福山市芦田町自宅周辺にて撮影)
 
 初出:2015/05/16
 改訂:2021/01/03 静止画と観察データを追加