ブッポウソウ 仏法僧
Buppousou
Eurystomus orientalis
Dollarbird

ブッポウソウ ブッポウソウ目ブッポウソウ科 絶滅危惧ⅠB類 EN
 ブッポウソウとは名がつくものの
 ゲゲッとしか鳴かない南方系の青い夏鳥

   

庄原市周辺での観察について


ブッポウソウのこと。動画の紹介

 ブッポウソウは漢字で仏法僧と書かれる夏の鳥です。その昔、夏の夜に「ブッ・ポウ・ソウ」と聞こえてくる鳴き声の主が、このブッポウソウであると信じられて名が付けられたそうです。しかし実際には本人(鳥)をいくら眺めていてもやつは「ゲゲッ」としか鳴きません。。。やがて「なにか変」と皆が気づき始めます。結局「ブッ・ポウ・ソウ」と鳴くのはコノハズクであってこの鳥ではないとわかったのは割と最近のこと、昭和に入ってからの話でした。それはラジオの視聴者からの指摘がきっかけであったそうです。ラジオで「ブッ・ポウ・ソウ」の鳴き声を流していたところ、「その鳴き声、うちで飼っているコノハズクの鳴き声と同じだよ」と報告があって一件落着と。。。
 ブッポウソウは夏山の青い宝石と呼ばれるくらいに美しい鳥です。夏の美しい鳥といえばおよそ南方系の鳥であることは、このwebでもよくお話しさせてもらっていますが、ブッポウソウはやはり東南アジアから飛来する夏鳥です。そして多くの夏鳥の中でも美しさでは一二を競う鳥であると思います。深めの青と緑が夏の陽射しに輝き、赤く大きめなクチバシがワンポイントでとても映えます。飛ぶと翼は思った以上に大きくて、長細い白い班がよく目立ちます。またその大きな翼で高く高く飛び上がると山際に沿って高速で滑空し、トンボやセミを見つけるとヒラヒラと急反転して舞うように飛び回ります。見ていてとてもスリリングな飛翔です。
 ブッポウソウはそもそもサイズがおよそハトサイズと大きめなので、見つけるのは割と簡単です。ただし、生息数が少なくて飛来地が限られているため、見つける前に「見に行く」こと自体が大変です。ちなみに日本では絶滅危惧種IBに登録されています。たまたま私の住む中国地方には山間部にさえ入れば多くのブッポウソウ飛来地があり、それほど苦労しなくても見られるのでラッキーです。私が知る飛来地は皆、周囲が切り立った小高い山に挟まれた谷のような地形をしています。当然そのような地形には川も流れているためトンボが多く、ブッポウソウのよいエサ場になっているようです。
 
ブッポウソウは、近くで見られるときは電線の上や巣箱の前で絵にならず、木の上に止まって絵にしやすい場面は、たいてい高い山の中腹で豆粒にしか写せず、と絵にするのがかなり難しい鳥さんです。実は私の住む福山市内でも山の方に行けば一応見られるのですが、数も少なく、また観察場所が狭く限られていつも超豆粒にしか写せないので、ブッポウソウを撮りに行くのはたいてい北の庄原市まで片道50km程のプチ遠征をすることとなります。こちらでは町を挙げてブッポウソウの繁殖をフォローしてらっしゃって、そこかしこにたくさんの巣箱がかけられています。私は2014年にGoogleMapのストリートビューを利用して、事前に行き先(巣箱)を物色しておき、初夏になって出かけてみたところ見事初挑戦からブッポウソウに出会うことができました。最近は便利になったなぁと思う反面、隠し事のできない世の中になったなぁとちょっと複雑な気分になりました。

 左「ブッポウソウの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。ファイルは20MBあるのでDL環境にご注意ください


トンボ捕り

 ブッポウソウは初夏に飛来してすぐにカップルが形成されます。飛んできた頃はメスの取り合いで、頭の上で「ゲゲッ!ゲゲッ!」とうるさく鳴きながら飛び回るのを見ることができます。この日はまだ卵を産んでいないのか♀が巣箱から出て山の木の上に止まっていました。ご機嫌取りなのか♂くんがせっせとトンボを捕ってきては彼女にあげるということをしていました。カワセミなんかも♂君が魚を捕って来ては♀さんにあげる求愛行為をしますよね。よく考えるとカワセミもブッポウソウ目の仲間なので、そういうところは似ているのかなとか思いました。

 ブッポウソウの♂君がいそいそとトンボ捕りに出かける絵を2枚置いておきます。左「トンボ捕ってくるよ」「トンボ捕ってきたよ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


電線の上のブッポウソウ

 最後はやや近いところからブッポウソウを撮った絵です。近いといっても50mくらいはあるのですが、車の中から手持ちで撮りました。繁殖期なのであまり近づくのもよくありませんし、観察者として行儀が悪いと感じるので、多少は遠慮して撮るようにしています。
 ブッポウソウは巣箱がたいてい電柱に取り付けられているので、巣箱近辺に帰ってくると一端電線に止まります。これ以上低い木に止まることはまずないので、結果ブッポウソウをアップで撮ろうと思うと電線に止まった絵になってしまうわけです。大きな電線上の絵を取るか、豆粒な木の枝の絵を取るか、究極の選択ですね。  
 左「電線の上のブッポウソウ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


観察データ

場所と回数:広島県8、新潟県1、都合9回。切り立った谷筋付近で見かけています。
 横浜に来てからは観察機会がめっきり減りました。関東近辺ではあまり観察場所の話を聞きませんね。一方広島県、岡山県など中国地方では地域ぐるみで巣箱をかけ、ブッポウソウの繁殖保護に努めてらっしゃいます。観察の際はあまり巣箱に近づかないように、陰に隠れてそっと観察させてもらいましょう。

観察月と回数:

1月0
2月0
3月0
4月0
5月3 〇〇〇
6月4 〇〇〇〇
7月2 〇〇
8月0
9月0
10月0
11月0
12月0
都合9回
夏鳥です。ペアの様子をみるなら5月後半から6月初旬くらいまでが良いと思います。



 (トップ画像 ブッポウソウ 2015/05/30 D7100 150-600mm F5.6-6.3 庄原市周辺にて撮影)

 初出:2015/05/30
 改訂:2015/06/07 動画と画像を差し替え
 改訂:2021/06/11 観察データを追加、電線の静止画の現像再調整