ホウロクシギ 焙烙鷸
Hourokushigi
Numenius madagascariensis
Far Eastern Curlew
 
ホウロクシギ チドリ目シギ科 絶滅危惧Ⅱ類 VU
 シギの国内最大種
 例えて言えばシギの象さん

   

福山市松永湾干潟での観察
 
 シギと言えばクチバシが長い水鳥というイメージがまず浮かんできます。中にはキョウジョシギやトウネンのように他の鳥とさほど変わらない長さのクチバシを持つシギもいますが、シギの中では少数派です。この長いクチバシには
 1.真っ直ぐなもの
 1.上に反り返ったもの
 1.下を向いて曲がったもの
の3パターンが見られます。
 他にも先端が平たくなったものなども見られますが、曲がりに関しては上記3パターンが見られます。この3番目、「下を向いて曲がったもの」としてはダイシャクシギ、ホウロクシギ、チュウシャクシギが日本でよく観察されます。「ダイシャクシギ」と「チュウシャクシギ」はその名の通り、身体の大きさやクチバシの長さが「大」と「中」の関係にあってとても分かり易いのですが、「ホウロクシギ」は名前だけではその姿を想像できません。ところが実際の見た目はダイシャクシギのそっくりさんです。私も松永湾で最初に見た時は逆光の中だったこともあって、数的に多いと聞くダイシャクシギだと思い込んでいました。ではいったい「ホウロク」とは何なのでしょうか。
 「ホウロク」は漢字で「焙烙」と書かれます。焙烙とは素焼きの土器のことです。この土器はよく焙烙焼きと言う蒸し焼きに使われていまして、土器自体が素焼きですから素材の土の色=薄茶色をしています。ホウロクシギは体色が茶系なのでこの名が付けられたようです。少し前、昭和以前のころは、黒い色を代表するのは鍋の(煤けた)色であり、茶色は土の色であったようです。だから黒いツルは鍋鶴=ナベツルですし、茶色いシギは焙烙=ホウロクシギと名づけられました。
 私も実際このシギについて図鑑やネット画像と照らし合わせ、最終的にやはり体色の茶色が決めてとなってホウロクシギだと同定しました。
 さて、翌週もう一度干潟に出かけてみると、まだ今週もホウロクシギがいてくれました。今回は満ち上がりで汐がだんだん上がって来るに従って、彼らの方から岸辺のこちらに近づいてきてくれました。ホウロクシギは上手に泥の中に嘴を突っ込み、次々とカニを引っ張り出して飲み込んで行きます。大きなカニの場合は、手足をもいだり弱らせたりしてから飲み込んでいました。あんな硬くてトゲトゲしたカニをまんま飲み込むのですから、相当喉が鍛えられているんだろうなぁ、などと思った次第。
 
 左「ホウロクシギ 松永湾にて 干潟の動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。動画は18MBありますので、DL環境にご注意ください。
 
 
 今回まず天気の良い土曜日に逆光の中で見つけました。しかし難しい露出に失敗してあまり良い絵が撮れませんでした。そこで翌日日曜にもう一度チャレンジしに出かけました。幸いこの日は朝から薄曇りで、前日のような強い逆光ではなく、比較的柔らかい絵が残せました。といえば聞こえはよいですが、実際にはその分凡庸な絵になるというのは内緒の話です。。。なお、この2羽はまだ若鳥のようです。色目がなんとなく柔らかいですで。
 やはり初めての出会いだけで思った通りの絵を残すのは難しいですね。今回静止画は二度目、動画は三度目でやっとそれなりに思ったように残せました。もっと修行して出会いから良い絵が残せるようにしなくっちゃ。でないと今後遠征してもオタオタして終わってしまい、遠出が無駄に終わりますものね。

 
  左「ホウロクシギのアップ 松永湾にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 
 
 ダイシャクシギとホウロクシギの一番簡単な見分けは腰、つまり尾羽の付け根から背中に向かうあたりが白いか茶色いかを見ることです。しかしこの腰、普段干潟を歩いている時は翼で隠されています。そこで飛び立つ瞬間を待つこととしました。こういう時は動画で飛び立ちを撮っておくのが楽です。しばらく粘っているとうまく飛び立ちを撮ることができました。この絵はその動画から切り取ったものです。背中から腰までが茶色の模様なので、ホウロクシギで間違いないようです。またこの時、飛びながら「ホヒーン!」と鳴く声が聞こえました。結構大きな声でした。
 
 左「ホウロクシギの飛翔 松永湾にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 
 
 先の飛翔の絵(動画の切り出し画像)を上げた時に撮れていなかった翼を広げた静止画が撮れましたので追加します。今回はD200とTamron A011で撮ったのでもう少し細部がわかりますが、ホウロクシギは翼の裏側に縞模様が濃くあって、ここがダイシャクシギと区別するポイントとなります。ちなみに、私が今年8月佐賀県の大授搦で撮ったダイシャクシギ(この字をクリック)と比べてみてください。ダイシャクシギは翼の裏側模様が少なくて白いという違いがわかるかと思います。
 
 左「ホウロクシギの舞い 松永湾にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 
 
  (トップ画像 ホウロクシギ 2014/10/13 D200 Tamron 150-600mm 福山市松永湾干周辺にて撮影)
 
 初出:2014/10/13