島根県宍道湖周辺、鹿児島県出水市周辺での観察について
 
　2014年11月23日、島根県の出雲参りの道中で宍道湖周辺に寄り、マガンとコハクチョウを観察していると、コハクチョウの中に見たことのないスマートな鳥が混じっていました。体が黒くて頭が薄茶色。首と足が長い。こんなサギはいないので、おそらくツルだということはわかりましたが、そもそも福山住まいの私はツルと縁が無く、姿を見ても名前が出て来ません。取りあえず写真と動画を撮って家に帰り、図鑑とにらめっこしたところ、ナベヅルの若鳥であることがわかりました。ツルは親子が引っ付いているはずなので、これは迷ったのかな。ちょっと心配です。宍道湖には過去にもツルの飛来が記録されているようなので、春には無事シベリアに帰り、来年以降もまた仲間を連れて来てくれれば良いのですが。
　こうやって初めてツルと出会ったわけですが、ツルと言えばお顔に赤いポイントがあるというイメージがありました。しかし若鳥にはそのポイントがありません。やっぱり本来の「ツル」の姿を見たい思いが強くなり、年末に鹿児島県出水市へ遠征することとしました。遠征の詳細はマナヅルのページをご覧いただくとして、ここではナベヅルの観察について報告します。ナベヅルは国内では最も飛来数の多いツルですが、それでも世界中で一万羽程度しか生存しない希少種です。日本では天然記念物に指定されています。国内の飛来地は鹿児島県出水市と山口県八代市が有名ですが、実数としては鹿児島県の出水市に集中しています。また世界中に生息するナベヅルの大半（8割程度）が冬はこの出水市にやってくると聞きます。飛来地の密度が高過ぎて、疫病による大量死が真剣に危惧されていて、分散飛来も計画されているようですが、鳥の渡りって、「個体」というより「集団」で本能に刷り込まれているっぽいので、分散は中々難しいようです。
　マナヅルの動画を置いておきます。最初のコハクチョウに混じった若鳥は宍道湖周辺で撮ったもの。それ以外は出水市の観察所周辺で撮ったものです。
 
　左「ナベヅルの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。サイズは19MBありますのでDL環境にご注意ください。
 
 
　ナベヅルもツルだけあって飛ぶ姿がとても優雅です。ツル類はサギ類と違って、首を真っ直ぐに伸ばして飛ぶので、ここが優雅さのポイントでしょうか。ナベヅルは体が全体に黒っぽく、頭の赤いポイントも頭頂の少しだけなので、マナヅルのような派手さはありません。しかし長くて白い首がとても目立って綺麗です。
 
　左「ナベヅルの飛翔」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 
 
　ナベヅルのディスプレーの様子は動画の最後でも紹介していますが、こちらは同じ場面の静止画です。ナベヅルのディスプレーはマナヅルと比べてかなり地味です。天に向かって首を伸ばして鳴きあうところは同じですが、ナベヅルはマナヅルのように翼を広げず、お尻付近のカールした羽が盛り上げられる程度です。このお尻付近の羽ですが、飛んでいるところを見る限り尾羽などというものはおよそ短いものなので、カールした羽は風切羽なのでしょうか。マナヅルのお尻から垂れ下がった尾羽に見えるものも風切羽なので、たぶんそうじゃないかと思うのですが、他の鳥にはあまり見られないボリュームなのでとても不思議です。
 
　左「マナヅルのディスプレイ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 
 
　こちらは群れの様子です。ご覧のごとく保護地は超過密状態で、集団疫病が発生しないかと心配になります。当たり前ですがナベヅルはナベヅルの集団、マナヅルはマナヅルの集団がありますが、給餌場では結構混じっていて、別段もめごとも無く仲良くしているように見えます。この絵のみは鹿児島2日目の帰り道中で撮ったものです。前日の薄曇りに対して当日は晴天だったのでD200の出番となりました。
 
　左「ナベヅルの群れ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 
 
　最後はアップ写真です。ナベヅルをアップで紹介するなら、お尻付近の羽のボリューム感と、頭頂の赤がしっかり出ていることがポイントになると思い、この一枚を選びました。出水市のツル観察所には施設に屋上があり、ここからツルたちを遮るもの無しに自由に写すことができます。ただそこは3階なので、飛んでいるツルを撮るのには都合がよいのですが、近くに来た個体はやや見下ろしたアングルになってしまいます。そこでこの写真は、観察所を後にしてツルと同じ目線に立ち、囲いからあぶれて近くにいる個体を撮りました。
 
　左「ナベヅルのアップ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 
 

 
 
　（トップ画像　ナベヅル　2014/12/29　D7100　150-600mm/F5.6-6.3　鹿児島県出水市にて撮影）
 
　初出：2015/01/18