マナヅル 真鶴
Manazuru
Grus vipio
White-neped crane
 
マナヅル ツル目ツル科 絶滅危惧Ⅱ類 VU
 国内で見られるのはほぼ鹿児島県出水市のみ
 越冬地へ遠征しての記録
 家族で飛翔する様は真に優雅 !
 

   

鹿児島県出水市周辺での観察について
 
 2014年12月28日、鹿児島県出水市のツルの保護区には、既に多数のツルたちがやって来ているはずです。年末年始の4泊5日の旅程にて夫婦で九州縦断旅行を敢行しました。題して「2014西日本征服作戦、ラストスパート編」であります。
  鹿児島~水俣~天草~有明~湯布院~別府~大宰府は、広島から往復2,000kmを越える行程でありました。
 その間、マナヅル、ナベヅル、ミヤマガラス(おまけ)及びズグロカモメ他ゲット。ただし、お盆の佐賀~長崎行きに続きまたもカササギは不発となりました。。。
 さて旅のことはさておき、鹿児島行きの主目的だったツルについて紹介しましょう。
 保護区にあるツルの観察所に近づくと、すでに溢れたツルが道沿いの田んぼに2~3羽ずつポツンと佇んでいます。初めて見るツルなので写真を撮りたいと思いましたが、道端なので止められません。諦めて進み、立派な観察所に入ると、そもそもそんなことをする必要がなかったことを思い知ります。観察所の屋上から見える眼下のたんぼは、無数のツル達で埋められておりました。
 およそ2時間ほど、夢中でシャッターを切り、ビデオを回しました。惜しむらくは少々曇り空であったことですが、到着前の天気予報は雨とのことでしたから、文句は言いますまい。
 無数のツルは基本マナヅルとナベヅルで構成されていますが、観察所の案内板にはクロヅルとナベクロヅル・・・混血種、そしてカナダヅルが共に数羽ずつ飛来しているとか。しかしクロヅルはナベヅルに似ていますし、カナダヅルはマナヅルに似ています。遠く数百mの先まで散らばっている数千のツルの中から、わずかの違いを持つツルを探すのは「ウォーリーを探せ」をやるようなもので、しかも相手は動くものなので一度見た場所だからもういないとも限りません。一応探しては見たものの、簡単には見つかりそうになく、それより限られた時間の中でまず撮影を進めようと、希少種探しは優先順位を落とすこととしました。
 私にとってマナヅルはこの日初めて見る種でした。ナベヅルより顔の赤がはっきりと出て、身体の色も淡いグレーが主なので見た目の格はナベヅルより上です。ツルと言えばタンチョウが最も象徴的ですが、マナヅルも「真鶴」と名付けられるだけあって、いかにも「鶴」とした容姿です。見ているとたまに求愛ディスプレーをしているカップルがいます。ツルは一端カップルを作ると一生を添え遂げるのだとか。逆にオシドリは仲の良い夫婦の象徴に謳われていますが、実は毎年カップルを代えるのだとか。館内ではそんな「あるある」を説明員のおかあさんがお話ししていらっしゃいました。
 動画の途中にその求愛の様子を、少しだけですが収めてあります。周囲に仲間がわんさかいる中で、本当に相手を覚えているの?とちょっと心配になったりしますが、来年は子を連れてまたここへ帰って来てくれるのかな。
 
 左「マナヅルの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。サイズは19MBありますのでDL環境にご注意ください。
 
 
 先に「ツルの夫婦は仲が良い」と「あるある」をお話ししましたが、教えてもらった「あるある」には続きがありますので紹介しましょう。ツルは夫婦だけでなく、親子もとても絆が強く、エサを探しに移動する時も、親は子と一時も離れることがありません。飛ぶときも必ず子を守りながら一緒に飛ぶとのことです。ただし数年たって子離れする時は、親が子を蹴って威嚇して家族から離し、以降は二度と絶対に寄らせないのだということでした。「ライオンは千尋の谷に子を突き落す」という故事がありますが、この話を聞かされた私は「ツルこそは鳥の王者なんだ」とあらためて思いました。
 
 絵は動画の翌日、鹿児島から水俣に向かう途中、前日と打って変わりあまりに天気が良かったので、「ここでD200の出番だ」ともう一度短時間観察所に寄って撮ったものです。本当は初日のみでツル観察を終えるつもりだったのですが、前日使用しなかったD200は陽がたっぷりの条件だと非常にいい色を出してくれるので、一生にもう次があるかないかわからないこともあって、嫁さんに頼んで了解してもらいました。長引いてはその後の旅程に影響がでるので、館内には入らず、駐車場付近で主に飛ぶツル達を撮りました。何枚かきれいな絵が撮れたので、寄って良かったと思います。ちなみに水俣に向かった理由は10年前に仕事で寄った港沿いのひなびた食堂(鶴岡食堂)のチャンポンの味が忘れられず、嫁さんと一緒にもう一度出向いていただこうと思ったからです。名前に「鶴」の字が入っているなど、偶然の出会いが巡り巡って楽しい旅の一日となりました。
 
 左「マナヅルの飛翔」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。一番後ろの顔に薄茶色が残るのが子ヅルです。
 
 
 マナヅルのディスプレーの様子は動画でも紹介していますが、横から見た絵を一枚おいておきます。群れの中で頑張っていますが、相手がどのツルなのかはよくわかりません。鳥のディスプレーって色々な姿がありますが、ツルのディスプレーって独特ですね。長い首と大きな羽が派手で優雅です。
 
 左「マナヅルの群れ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 
 
 最後はアップ写真です。マナヅルは世界で数千しかいない希少種です。その大半がこの出水市に来て越冬するのだそうです。保護活動費として国からも予算が出ており、田んぼには小麦などが給餌されているとのことですが、もしこの保護策が失われたら、彼らはどうなるのかな?と少し心配になりました。日本では「舞鶴」「鶴舞」「鶴岡」など「鶴」の字が含まれる地名がたくさんありますので、おそらく大昔は日本のどこででもツルが見られたのではと思います。例え保護がなくなっても、日本全国にツルが飛来する日がいつか来ることを願ってやみません。
 
 左「マナヅルのアップ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 
 

 
 
 (トップ画像 マナヅルの置物 D200 18-55mm/F3.5-4.5 鹿児島県出水市ツル観察所にて購入)
 
 初出:2015/01/11 2015/02/01トップ画像変更