ズグロカモメ 頭黒鴎
Zugurokamome
Larus saundersi
Saunders's gull

ズグロカモメ チドリ目カモメ科 絶滅危惧Ⅱ類 VU
 主に九州で見られる干潟のカモメ

   

佐賀県大授搦、船橋三番瀬での観察について


過去の出会いと動画の紹介

 2014年暮れに九州旅行に出かけた際、佐賀県大授搦に寄ることができました。ここへ来るのは二度目となります。
 同じ年のお盆に長崎へ旅行の道中にてこの広大な干潟に初めて寄りましたが、普段福山市松永湾のこじんまりした干潟に慣れている私は、眼前に広がる干潟のスケールの大きさに強い衝撃を受けました。有明の干潟と言えば日本の環境保護活動におけるアイコン的存在でもありますが、実際ここに立ってみて「守られるべき自然とはこういうものだ」とその「干潟」なる存在の大事さを強く思い知らされました。また潮風に打たれるうちにとても幸せな気分になりました。ただ、季節が真夏のさ中で、強烈な日差しの下でしたから、小一時間粘って最後にはぶっ倒れそうになりましたが。。。
 スケールが大きいのは干潟だけではありません。やってくる水鳥の豊富さも驚くほどの数でした。真夏なのにこれだけ水鳥がいるのであれば、秋や冬ともなればもっとたくさんの水鳥がいるんだろうな、と想像はつのるばかりです。そのように冬季の有明海には強い憧れがあったので、今回ツルを見に鹿児島へ出かけた帰りの道中に、大授搦再訪を入れ込みました。到着が満潮2時間ほど前なので、潮の満ち加減もいい感じかなとなどと予想しておりました。
 さて、穏やかで良い天気の中、無事干潟に着いたのですが、いざ干潟に望んでみると、予想に反して鳥の姿が見えません。。。干潟は思った以上に遠くまで引いており、はるか遠くに豆粒のような水鳥たちが見えるだけです。比較的近くにいるのはツクシガモとユリカモメのみ。。「福山でもいるやつじゃん」とかちょっと愚痴ってとりあえず、付近を歩いてみました。ここの干潟には「シチメンソウ」という干潟の植物がみられます。秋に真っ赤に紅葉する美しい植物らしいのですが、今はもう枯れて茶色くなっています。ふとこの枯れた枝に水鳥の羽がたくさんひっかかっているのを見つけました。白くてグレーが混じった大きめの次列風切っぽいものは、おそらく私の頭の上を飛んでいるユリカモメのものでしょう。小さい茶色っぽい羽毛はシギかチドリのものかな。とか、旅の記念に拾って歩きました。
 暇なのですぐ近くを練り歩くユリカモメでも撮っておこうと、ファインダーを覗いていると、何かしら頭の模様が違うような。。。これってもしかしたらユリカモメではないのかも。そういえばユリカモメって福山市の海にもたくさんいるのだけれど、松永湾の干潟で歩いている姿などみたことがありません。で、いそいそと写真を撮って、予定時間も来たので干潟を去りました。家に帰ってから図鑑で調べてみると、どうやらズグロカモメであったことがわかりました。「これってVU(絶滅危惧II種)じゃん。。」現場ではそんな珍しい鳥だったとは思いもよりませんでした。もっとまじめに撮っておくべきだったと思ったときはもう後の祭り(いつものことですが。。)。

ズグロカモメの特徴としては
1.冬羽の場合、目の後ろに大きめの黒い点がある。ここまではユリカモメと同じ。頭に2本の黒い筋がでる。これが特徴。夏羽の場合頭全体が首まで真っ黒になる。これはユリカモメも似たようなものだけれど、ユリカモメは黒頭巾が後頭部までで少し短く止まる感じ。
2.クチバシは短くて黒い。ユリカモメのくちばしは細長くて赤く、先のみ黒い
3.足は赤みはあるものの黒っぽい。ユリカモメの足は鮮やかに赤い
4.全体的に身体が小さめだが、羽は長くて大きい

 このように2014年12月30日の大授搦が初めての出会いだと思っていたら、実はその前日12月29日の出水市ツルセンターでの撮影にズグロカモメが混じっていることにあとから気づきました。したがって私の初見記録日は1日早まりまったのですが、現場で意識できていなかったことから、やはり初見は大授搦だったと思うことにしています。。

 九州から戻ってからのこと。2015年は福山でもズグロカモメが飛来しているらしいとの話を聞きました。私も探してみましたがその日は見つけられませんでした。春まで残っていてくれれば、まだ見ぬ夏羽の「頭黒」が見られるかも。多数のユリカモメの中で探すの大変ですが。。。

 ズグロカモメの動画を置いておきます。歩く姿が主体です。

 左「ズグロカモメの動画」のサムネイルをクリックしてご覧ください。ファイルは19MBありますのでDL環境にご注意ください。


福山にいたズグロカモメ

 2015年から3年経った2018年、過去の写真記録をすべてエクセルで表にする作業をしているときのことです。すべてのファイルをくまなく見直す作業をしていたところ、上で書いたとおり、2015年(3月15日)の芦田川下流(淡水域)で見つけたユリカモメの群れに、一羽のズグロカモメが混じって写っていたことを発見しました。あれだけ噂を聞いておきながら3年間も気が付くことができなかった自分のどんくささに大反省です。

 左上部で右向きに首をかしげて羽繕いしているのがズグロカモメです。上の紹介のとおり、頭の後ろに2本のはっきりとした黒い筋があり、くちばしが真っ黒、葦がほかのユリカモメよりひときわ黒っぽいことからズグロカモメであることがわかります。

 左「福山にいたズグロカモメ」のサムネイルをクリックしてごらんください。


ズグロカモメの飛翔 成鳥冬羽

 ズグロカモメの冬羽はユリカモメそっくりで全体に白っぽく、見たも目あっさりしています。主に干潟でカニなどのエサを捕るとのことで、干潟の上をゆっくり舞っていました。まずは横から撮ったものを。

 左「ズグロカモメ冬羽の飛翔その1」のサムネイルをクリックしてごらんください。


ズグロカモメの飛翔 夏羽移行期?

 ズグロカモメの飛翔その2です。場所は変わって千葉の三番瀬。時期も3月に入り、頭の黒頭巾が作られている途中のようです。また、第一齢夏羽は頭が完全に黒くならないらしいので、もしかすると若鳥なのかもしれません。連続しているほかの絵を見る限り、翼に幼羽の特徴が残っていないので、生え変わり途中の可能性の方が高いかなと思っています。ちなみにユリカモメと比べるとくちばしが短くて太く、色は真っ黒で、足も黒っぽいのがわかると思います。ちなみにユリカモメは夏羽の時くちばしが黒っぽくはなりますが、赤黒いというのが正しく、完全な黒にはなりません。

 左「ズグロカモメ冬羽 夏羽移行期?」のサムネイルをクリックしてごらんください。


頭黒カモメ 夏羽

 正に頭黒なズグロカモメです。場所は上の絵と同じ日の千葉の三番瀬。この日はズグロカモメが複数見られ、うち一羽はこのとおり完全な黒頭巾と化していました。初見から6年たって初めて「頭黒カモメ完全体」(!?)を見ることができました。

 左「頭黒カモメ 夏羽」のサムネイルをクリックしてごらんください。


ズグロカモメのお散歩

 最後はお散歩中のズグロカモメです。足元は頼りなくてよちよち歩きですが、割とよく歩きます。面白いカモメです。また近くにズグロカモメは複数いましたが、あまり群れようとしません。このあたりもユリカモメとは違いますね。なお、翼先端の黒色が点々になっているのもズグロカモメの特徴です。

 左「ズグロカモメのお散歩」のサムネイルをクリックしてごらんください。


観察データ

場所と回数:鹿児島県出水市1、佐賀県大授搦1、福山市芦田川河川敷1、船橋三番瀬2都合5回。九州から関東まで、干潟のある水辺で見ています。

観察月と回数:
1月1 〇
2月0
3月2 〇〇
4月0
5月0
6月0
7月0
8月0
9月0
10月0
11月0
12月2 〇〇
都合5回
冬鳥です。3月になれば名の通り黒頭巾な夏羽を見られるチャンスがあります。



 (トップ画像 ズグロカモメの落し物らしき羽 2015/01/02 D200 Micro60mm F2.8 佐賀県大授搦にて採取 近くにいたカモメがズグロカモメオンリーだったのでまず間違いないと思いますが、確証はありません。)

 初出:2015/01/12
 改定:2021/03/07 文章の校正、福山と三番瀬の静止画を追加、観察データの追加