ミヤコドリ 都鳥
Miyakodori
Haematopus ostralegus
Eurasian Oystercatcher

ミヤコドリ チドリ目ミヤコドリ科
 白黒のコントラストと赤いクチバシが美しい
 船橋三番瀬に群れる古の鳥

   

千葉県船橋市三番瀬での観察


ミヤコドリの動画  
 私が子供の頃、というか学生時代、京都の四条大橋の上を舞うカモメを「これは「みやこどり」というんだよ」と人から教えてもらいました。以後「実際はユリカモメなる鳥が「みやこどり」という名で呼ばれている」ことを覚えました。「やっぱり京の都付近で見られるから「みやこどり」なんだろうか?」と、当時考えたのを今も覚えています。それから30年ほど経って鳥見を始め、ユリカモメ以外に日本の正式名称で「ミヤコドリ」なるユリカモメとは全く見た目もことなる鳥がいることを知りました。なぜ日本に「みやこどり」が2種いるようになったのか、不思議に思って色々調べてみましたところ、まず日本の古い記録、たとえば万葉集や枕草子の頃から色々な文献に「みやこどり」なる記述があるそうです。ただこの「みやこどり」はこの白黒のミヤコドリを指すのかそれとも白いユリカモメを指すのか、種々学説があって未だ決定打はないとのことです。そして肝心のみやこどりが2種いることに関してはやはりよく分かっていません。
 ミヤコドリはかって私が住んでいた瀬戸内地方ではまず見ることができなかった幻の鳥でした。縁あって関東に移り住んでから、千葉へ行けばこのミヤコドリと出会えると聞き、2015年の冬になって本種の越冬地として有名な船橋三番瀬にでかけました。初めて出かけたときは観察時間が満潮時であったので、ミヤコドリは遠くの防波堤に固まって休憩している様子でした。そしてせっかく姿は見えても被写体まで100m以上の距離があったため、レンズを向けても証拠写真=記念撮影にしかなりませんでした。翌2016年の冬は、私自身が少し学習して干潮時を狙って出かけてみました。干潮時にエサを捕りに干潟に飛んで来るチャンスを狙う作戦です。しかし敵もさる者、奴らはこちらからは遠くの浅瀬に舞い降りて、米粒状態でしか姿を撮らせてくれません。こうなると訪れる回数を増やして、偶然近くに降りてくれるのを気長に待つしかありません。
 2017年の2月、この冬もそろそろ終わろうかという頃、新調したゴーヨンを担いで再度三番瀬に降り立ちました。まだ潮が多少高い時間帯、ハマシギやトウネンと遊んでもらいながらミヤコドリの飛来を待っていますと、やがて数百の群れが飛んで来てくれました。今回もあまり近くには来てくれませんでしたが、ゴーヨンの力を借りて、今までよりは多少なりとも鮮明な姿を記録することができたので、ここで紹介させてもらうこととしました。

 左「ミヤコドリの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。動画は17MBありますのでDL環境にご注意ください。



ミヤコドリ 成鳥と若鳥

 ミヤコドリがエサを探して水辺をうろついている絵です。ミヤコドリは二枚貝を主食にしているとの話ですが、この日はどちらかというと環形類などを捕っているように見えました。もっとも三番瀬は貝類がとても豊富なのでミヤコドリにとっては最適な越冬地なのでしょうね。都心に近い干潟ですが、水質もきれいだしこのままこの環境が維持されることを切に願っています。三番瀬はいつきても心が洗われる本当に素晴らしい海だと思います。
 2020年、三年ぶりにミヤコドリの絵を更新することとしました。前回と違って曇天で撮った絵のため、ちょっと寂しい色目の絵になりましたが、これも冬らしくていいかなと。一枚目は成鳥の絵。二枚目は若鳥の絵です。

 成鳥:
 羽色が漆黒
 目もクチバシも真っ赤
 足はピンク色  
 若鳥:
 背中が茶色がかってて目の赤色が鈍い
 クチバシはややオレンジがかっていて、先端が黒ずむ
 足は肉色

 今まで気づきませんでしたが、こうやって近くから観察すると結構若鳥が混じっていることを知りました。世代が代わってもここが彼らのお気に入りでありますよう、微力ながらきれいな海を守っていきたいと思います。

 左「ミヤコドリ 成鳥」「ミヤコドリ 若鳥」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。



ミヤコドリの飛翔

 ミヤコドリの飛翔絵です。百は超えようかというミヤコドリが高層ビルをバックに群れて飛ぶ絵を見ているとどこか不思議な感じがします。少し前までは都会直下の海=汚れた海という印象しかありませんでした。しかし私の足元の海は蒼くて美しく、その向こうに見える高層ビルも整然としていて美しい。「こんな相反する風景が今やありとなった日本って結構すごいじゃん」と思わされるその鳥の名が都鳥であるって、ちょっと出来過ぎな気がしないでもありません。いや、本当に素晴らしい光景でありました。

 左「ミヤコドリの飛翔」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。



ミヤコドリの羽

 2020年の10月三番瀬に秋の水鳥を観察しに行きました。この日は大潮。朝6時頃が満潮で、私は当地に7:30頃に着きました。浜に降りたときは、まだ潮が高くて周囲に水鳥の姿は見えません。しかしそろそろ少し向こうに砂地が現れ始めてきているので、海岸沿いに散歩しながら少し待つこととしました。
 やがて30分も経つと、砂地がどんどん現れてきて、そこにミユビシギを主としたシギチ類がエサを求めて飛んできます。まだ水に濡れた砂地の足元を見ると、1cmにも満たないような小さなカニが無数にいます。ミユビシギサイズの小型シギやチドリたちには格好の餌なのでしょう。そうこうしている間に、今度は少し遠い場所にミヤコドリがやってきました。その砂地との間にはまだ引かない海があって、長靴程度では近づくことができません。岸辺から観察していると、そのうち一羽が頭かきをし始めました。カメラで覗いてみると、ミヤコドリの足元にいくつかの白い羽が浮かんでいることに気づきました。しかもその羽はゆっくりとこちらの岸辺に向かっているようです。これはラッキー。待つこと10分くらいだったでしょうか。10ほどの羽を拾うことができました。

 白と黒が混じった羽などは明確にミヤコドリのものと分かります。基本胸から背中上部が黒色、翼の先と喉から下が白です。一番左の白黒の羽は形状からおそらく大雨覆いなのではと思われます。当初次列風切りの羽かと思いましたが、自身の記録を見返してみて、黒色から先端が白くなるパターンが風切りにないと分かりました。右側の大きめの白い羽は3列風切りかな?ちなみにミヤコドリの頭かきは、翼をまたいで行われていました。シギ科の鳥は直接に頭かきます。ということは姿はシギに似ていてもDNA的にはチドリ側に近いのかな。セイタカシギもそうですね。天気もよく観察していてとても楽しい秋の朝でした。

 左「ミヤコドリの羽」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。



観察データ

場所と回数:全て千葉船橋三番瀬での記録です。他では見たことがありません。都合9回。餌になる二枚貝が豊富で群れで冬を越せる場所ってたぶんそんなにないのでしょうね。

観察月と回数:

1月3 〇〇〇
2月1 〇
3月0
4月1 〇
5月0
6月0
7月0
8月0
9月0
10月1 〇
11月3 〇〇〇
12月0
都合9回
真夏にはあまり三番瀬にいかないので夏の記録は不詳です。冬は間違いなくいます。




 (トップ画像 ミヤコドリ 2017/02/26 D500 500mm/F4+1.4xテレコン 船橋三番瀬にて撮影)

 初出:2017/02/26
 改訂:2020/01/13 成鳥、若鳥の画像を更新及び追加。観察データを追加。
 改訂:2020/10/03 羽の画像を追加。観察データを更新。
 改訂:2020/10/05 文章の見直し