カワウ 河鵜
kawau
Phalacrocorax carbo
Great Cormorant

カワウ カツオドリ目ウ科
  絶滅の危機を経てせっかく復活したにも関わらず、
 今は増えすぎて駆除対象にされつつある不遇の鳥

   

カワウについて



 カワウは国内の池や川ならどこででも見かけるくらいにポピュラーな存在です。また淡水だけでなく波の穏やかな海水域でも見られます。私が以前住んでいた瀬戸内中央部の沿岸では、見られるウは皆カワウでした。
 今では信じられないようなことですが、カワウは今から50年ほど前に一度全滅の危機に瀕していました。原因は農薬等による水質環境悪化によるものだったそうです。最悪な時期は全国で3,000羽程まで減ったとのこと。その後環境保護や河川湖沼の浄化活動などが実り、今では全国どこででも見られるようにまで個体数が増えました。逆に最近は、営巣地でしばしば糞害が発生したり、漁業権のある川で魚を食い荒らすなどの被害も増えてきたため、2007年以降は狩猟鳥として指定されています。なお「狩猟鳥指定」と言っても、カワウには食用としての価値がないので、単に駆除目的のみの狩猟対象となっています。
 私もカワウは黒いし、でかくて可愛げがないし、どこにでもいるし、と、あまり積極的に観察対象にすることはありません。それでも彼らが続々と増えていくのは、それはそれで自然の中に何かがあるのだろうと思いますので、人とも共存していければよいな、と個人的には思っています。(バイク移動中の糞爆弾だけは避けたいところですが。。特に千葉湾岸線の行徳~谷津干潟あたりが怖い。。)






「川のカワウ」 クリックで拡大します。

川のカワウ


横浜市
1024x682(800x533) px
2021/10/31
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 自宅からほど近い川に沿って散歩していたときの一枚だと思います。時期的にも非繁殖時期の平常な羽色姿です。
 非常に浅い川なので潜って餌を捕ることもできないような場所ですが、こんな川でも歩くたびにカワウを見かけます。川には50cmオーバーのどでかいコイがうじゃうじゃいて、「これはさすがに大食らいのウでも食えないだろう」と思うのですが、小さい魚もいるのでしょうか。

 カワウの特徴を紹介します。まず、口の後ろ、黄色い肌が露出した部分の形を見て下さい。口角(上下クチバシの後端)の後ろが尖らずにそのまま真下に降りているのがわかると思います。口角から下の黄色い部分の面積が広いですね。ウミウの場合はここが尖ったようになっていて、下側の面積が狭くなっています。(左メニューにウミウのページへのリンクがあります。口まわりがわかる絵もありますので、そちらもご覧ください)
 もう一つ。翼の色が赤紫っぽく見えると思います。ウミウは翼が緑っぽい感じに見えます。ただ、遠めに見るとどちらも黒く見えるだけなので、ぱっと見の判断に使うには難しいかもしれません。



「海のカワウ 若」 クリックで拡大します。

海のカワウ 若


神奈川県横須賀市
2017/04/30
1024x682 px
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3


 ウの仲間は若鳥の間、茶色い姿をしています。また、腹が白っぽいのも特徴です。このカワウはお腹が茶色と白のまだら模様になっていて、もうすぐ成鳥になる手前なのかと思われます。
 この絵を撮った場所は、ウミウが多い三浦半島先端部から10Kmも離れていない駿河湾の海岸からすぐの磯場です。こういう場所ではよくよく観察しないと「ウミ」ウなのか「カワ」ウなのか、どちらの種なのかわかりませんね。
 



「カワウ 飛翔」 クリックで拡大します。

カワウ 飛翔


千葉県銚子市
1024x682 px
2021/02/11
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3


 銚子港はカモメが多いことで全国的にも有名な場所ですが、ウ類も3種が一度に見られ、数も非常に多い場所です。なので見られるウも、浮いたり、潜ったり、飛んだり、羽根を乾かしたり、と様々な姿が簡単に観察で来て飽きることがありません。ウ類をまとめてしっかりと観察したい方に、銚子港は絶対的にお勧めの場所であります。




「カワウ 群れの飛翔」 クリックで拡大します。

カワウ 群れの飛翔


千葉県船橋市
1024x682 px
2021/04/11
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3

 千葉の行徳から谷津干潟あたりまでの湾岸道路沿いは、カワウが非常に多い地域です。
 この辺りでは陽が昇ってしばらくすると、カワウの団体が餌場に移動していくのを見ることができます。群れの数は多いときは100を軽く越えまして、近くで見ると結構な迫力があります。




「カワウ 塒(ねぐら)」 クリックで拡大します。

カワウ 塒(ねぐら)


広島県福山市
1024x682(800x533) px
2020/12/12
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 福山市の池の畔にあるカワウの塒です。カワウは足に立派なヒレがあって、木の枝を掴むには邪魔で難しそうな気がしますが、実際は皆上手に木に止まります。
 先に書いた通り、ウの仲間は水に潜るのは得意ですが、浮かぶのはあまり上手でありません。ですから、カモの仲間のように安全な水面に集まって塒をとることはないようです。
 



「カワウ 繁殖中」 クリックで拡大します。

カワウ 繁殖中


広島県福山市
1024x682(800x533) px
2020/05/28
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3

 カワウは湖沼や川の畔の木々に枝を集めて大きな巣を架けます。こちらは池の中にある枯れた木に巣が架けられていますが、ちょっと天候が荒れると、折れたり吹き飛ばされたりしそうな不安定な巣に見えます。カワウからすれば水辺の巣であればなんでもいいのでしょうね。ちなみにカワウはコロニーをつくって集団的な繁殖をするので、糞が巣の下の水に駄々洩れになります。結果、湖沼の富栄養化を起こして藻が異常繁殖したり、単純に水が汚れて悪臭が発生したりと、人間からすれば地域にとっては迷惑というか環境問題にまでなる報告が増えています。
 大きく捉えれば、魚食が中心なカワウがこれだけ増えているということは、それなりに餌となる魚も増えているということなので、なにかしら自然のバランスはとれているのかな、と思えたりしています。なんとか皆で知恵を出しつつ、共存していきたいものです。





観察データ

場所と回数:大分県 1、広島県 35、鳥取県 1、岡山県 7、滋賀県 4、福井県 1、静岡県 5、長野県 1、山梨県 1、新潟県 1、神奈川県 13、東京都 8、千葉県 20、茨城県 9、栃木県 2、宮城県 2、秋田県 1、計112回。私が行く先ではどこでもたいていみられる水鳥です。
名前の通り川で普通に見られる鳥ですが、池、湖などの淡水域はもちろん、瀬戸内海や東京湾など、波の穏やか内湾・港湾などの海水域でも普通に見られます。

観察月と回数:
1月16 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
2月9  〇〇〇〇〇〇〇〇〇
3月11 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
4月8  〇〇〇〇〇〇〇〇
5月7  〇〇〇〇〇〇〇
6月4  〇〇〇〇
7月2  〇〇
8月2  〇〇
9月3  〇〇〇
10月17 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
11月15 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
12月18 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
計112回

留鳥です。外見が非常によく似たウミウは冬鳥のため、夏場に海水域で見るウはカワウだと思ってまず間違いありません。一方冬場の内湾には、例えば銚子港のようにウミウやヒメウが入ってくることもあるので、注意が必要です。



 カワウは何と言うか、色が地味で、動作ももっさりしていて、とても損な鳥に思えます。たぶん水中では面目躍如の活躍をしているのだろうと思うのですが、残念ながら我々はその雄姿を見ることができません。管理された清流では「鮎泥棒」のレッテルを張られ、繁殖地では糞害が叫ばれ、「なんと不憫な奴」とちょっと同情してしまいます。でも、海で集団でエサを追い水面を盛り上げながらにぐんぐん突き進む様は恰好良かったなぁ。
  (トップ画像 「カワウ 指揮者?」 2013/03/17 福山市)

 初出:2014/08/25
 改訂:2022/02/18 静止画とウ科へのリンクを追加。観察データの追加 
 全面改訂:2024/01/21