ウミウ 海鵜
Umiu
Phalacrocorax capillatus
Japanese Cormorant

ウミウ カツオドリ目ウ科
 荒海に棲むウなのに、
 なぜか川の鵜飼に使われる潜水名人

   

ウミウについて



 ウミウは名前の通り「海にいるウ」です。ウミウに姿がよく似ていて、より一般的な「カワウ」は、名前の通り川をはじめとした淡水系のウです。これだけ聞くと、「なんだ、簡単じゃないか」と皆さんは思われるかもしれません。しかし実際のところ、カワウは海でも普通に見られ、必ずしも淡水域でしか棲めないわけではありません。私がよく水鳥観察に訪れる千葉の船橋三番瀬は、東京湾というれっきとした海ですが、そこで見られるのはカワウのみです。カワウは穏やかな海が好きなので私が以前住んでいた瀬戸内海中央部沿岸などはカワウばかりでした。逆にウミウの方は荒海が好きで、港湾くらいまでは入ってくることはあってもその先、池や川では見たことがありません。また、ウミウを見たことがある港湾も、皆近くに岩場や外海があるような港ばかりです。
 「ウ」という鳥はカラスみたいなもので、どこにでもいて、全身が黒く、身体も大きくてあまり可愛げがない(失礼・・)ため、そこに見つけても「ふーん・・」で終わってしまうことが多い鳥です。しかし、見る機会が少ないウミウの存在を知ってみると、両者含めて「ウ」に対する興味も少しくらいは出てくるのではないでしょうか。

 ウミウとカワウの見た目の違いに関しては、このあとの写真の紹介で詳しく説明しますが、先にウの見極め方の極意(?)をお話ししておきます。
 両者は見た目よりも彼らの生活環境・習性の違いの方がはっきりしています。ウミウは「冬鳥」で、例えば関東以西で夏に見ることはまずありません。一方カワウは、池や川の畔の木々に枝を集めてつくった巣を架けて繁殖を行う「留鳥」です。カワウは巣のある木々で塒(ねぐら)を取りますが、ウミウは海辺の断崖絶壁で集団的にねぐらを取ります。これを知っていれば、ウミウやカワウを観察できる場所も自然と想像がつきますでしょうし、そこで見たウがどちらなのか?という問題も、およそ察しがつくだろうと思います。

 神奈川県三浦半島先端に位置する城ヶ島の一部は「ウミウ、ヒメウ及びクロサギの生息地」として県の天然記念物に指定されています。この場所は島に断崖があるのでウミウやヒメウの生息地(越冬地)となるわけです。ウミウは潜水が得意な大型の鳥なので、渡り鳥とはいえ飛翔力はそれほど高い方ではありません。従って塒に近い場所の方がウミウを観察できるチャンスは多いことになります。

 これからウミウを見てみたいと思われる方は、
 1.冬に海へ向かい
 2.崖がある岬のような地形の
 3.磯近くまで降りられる場所
 を探してみてください。きっと一生懸命潜って漁をしているウミウに出会えると思います。






「水の上のウミウ」 クリックで拡大します。

水の上のウミウ


千葉県銚子市
1024x682(800x533) px
2016/12/18
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 こちらは非繁殖期=平常の羽色です。場所は銚子港なので汽水です。
 一般的に波が穏やかな港内で見るウはカワウであることの方が多いので注意が必要です。カワウとの判別は「口角の黄色い部分が後方に向かって尖っているのがウミウ」と覚えておくと分かりやすいです。またウミウは光線具合で緑色っぽく輝いて見えますが、カワウは紫っぽく光るので慣れたらそのあたりも差として感じるようになってきます。ただ光の具合はその時その場所で微妙に変わりますので、判別が難しい種を見つけたらとりあえず写真を撮っておくのが一番ですね。
 この絵でもわかります通り、ウはカモ類と違って普段から身体の大半が水面下に沈んでいます。羽根に油分が少なくて水を吸いやすいため、飛んだり浮いたりでは不利ですが、その分水中深く潜り易くなっているのだとか。そんなこともあって、ウ類は陸に上がってから羽を広げ、風を受けつつ天日干ししているところをよく見かけます。
 



「岩場のウミウ 生殖羽の成鳥と若」 クリックで拡大します。

ウミウ 生殖羽 右 と若 左


石川県珠洲市
2016/03/20
1024x682 px
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3


 右側が生殖羽に着飾った成鳥、左側が若です。以前このWebで同じ絵を生殖羽の ♂ と ♀ であると書いてしまっていました。しかしそれは私の思い込みだったようで、あらためて図鑑をみると、どこにも ♂ のみが生殖羽になるとは書かれていません。書かれているのは 「雌雄同色である」のと「春先に生殖羽になる」、そして「若鳥の間は茶色い」の3点だけでした。カモ類などは ♂ のみが生殖羽になるため、同じく水に浮かぶウ類も同じではないかとろくに調べず不正確な情報を出してしまっていて、誠に申し訳ございませんでした。
 



「ウミウ」 クリックで拡大します。

ウミウ


千葉県
1024x682 px
2024/01/06
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 千葉県の九十九里浜にいたウミウ。ここは広い砂浜なため、ウミウを見るのは結構珍しいこともあり、記念写真を撮っておきました。おそらく飯岡や犬吠埼あたりから出張してきたのだろうと思われます。




「ウミウ 飛翔」 クリックで拡大します。

ウミウ 飛翔


神奈川県三浦市
1024x682(800x533) px
2021/02/28
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 撮影した時間は朝の7:09です。日が昇ってすぐの時間帯なので陽の射す角度が低くて、丁度よい光加減となりました。おかげで羽毛姿に緑色が浮いて見えるかと思います。
 おそらくこの小群れは、これから餌場に揃ってご出勤されるところだろうと思われます。
 今まで結構ウミウの観察をしてきましたが、ウミウはカワウのように数十羽でV字を描いて団体で漁に出ていくことはないようです。また餌場となる海が深いからなのか、カワウのように群れで魚を追い詰めることもせず、採餌も割と個人主義な感じがします。
 



「ウミウ 塒(ねぐら)」 クリックで拡大します。

ウミウ 塒(ねぐら)


石川県珠洲市
1024x682(800x533) px
2016/03/20
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 石川県珠洲市の観光名所見附島(通称軍艦島)の横に大きな岩があり、見附島と共にウミウたちの休憩所や塒になっているようでした。荒天でなければこの岩場もこのままウたちの塒になっていたのだろうと思います。ウミウはこのように見るからに切り立った足場の狭い岩場を好みます。
 先日能登半島大地震で地域に甚大な被害が発生し、見附島も大きく崩れてしまったとの報道がありました。この岩ももしかすると崩れてしまっているのかもしれません。またいつか地域の傷がいえた頃には、もう一度能登へ鳥見に出かけたいと思っています。
 



「相模湾のウミウ」 クリックで拡大します。

相模湾のウミウ


神奈川県三浦市
1024x682(800x533) px
2021/02/20
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 荒波の駿河湾を元気に飛ぶウミウです。この日は天気自体は良いものの、前日の荒天の影響が残っていたためか、もの凄く荒れた様子の海でした。海岸べりでの観察はとても無理で、海から相当引いた位置まで退却しつつも、「せっかくなので何かしら撮って帰ろう」と思って粘った末の一枚です。
 この日は小さいバイクで出かけていたため、持って出たレンズは手ごろなタムロンズームでした。撮った位置は海まで100m近い距離があったにもかかわらず、岩に砕けた波しぶきがレンズまでバシバシと飛んできましたし、ズームを短くして富士山全景を入れられたりしたので、結果的にゴーヨンを持って行かず正解でした。(全身に潮を浴びたので帰ってからが大変でした)
 



「夕陽とウミウ」 クリックで拡大します。

夕陽とウミウ


島根県日御碕
1024x682(800x533) px
2014/11/23
Nikon D200 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 出雲さんへお参りに行ったついでに寄った日御碕での一枚です。
 11月末でしたが暖かい日だったので、カミさんと二人で夕陽が落ちるまで日本海の景色を楽しみました。良い思い出です。
 




観察データ

場所と回数:鹿児島県 東シナ海 1、島根県 日本海 1、福井県、石川県 日本海 2、三重県 伊勢 1、静岡 相模灘 1、神奈川県 三浦半島 相模灘で14、東京 大島 太平洋 1、千葉県 九十九里浜 1、千葉県 銚子 港湾 6、宮城県 太平洋 3、青森県 日本海 2、北海道 オホーツク海 2、北海道 太平洋1、計36回。
 九州から東北まで、比較的波の荒い外海に面した岩場近くで多く見つけています。海が荒れたときは港湾にも入ってくるので、近くで見たいときはこちらがチャンスでしょうか。

観察月と回数:
1月3 〇〇〇
2月7 〇〇〇〇〇〇〇
3月6 〇〇〇〇〇〇
4月4 〇〇〇〇
5月4 〇〇〇〇
6月0
7月0
8月0
9月0
10月0
11月5 〇〇〇〇〇
12月7 〇〇〇〇〇〇〇
計36回
関東近辺では秋から冬に見られる鳥です。青森より北に行けば夏でも見られるようです。私の関東以西の観察では11月3日~4月24日までで記録があります。そのうち3月20日以降でははっきりとした生殖羽姿の絵が残っているので、生殖羽を見るだけなら北国へ行かずとも、近場でも観察可能だと思います。銀髪姿は凄くカッコいいので、一度ご覧になってみてください。



 (トップ画像 ウミウの銅像 2020/12/27 神奈川県三浦市城ヶ島公園)

 初出:2016/04/03
 改訂:2016/12/31
 改訂2:2018/1/11 観察データを追加
 改訂3:2020/12/30 トップ絵と静止画、観察データを更新
 改訂4:2021/2/21 静止画の差し替えと削除、観察データを更新
 改訂5:2021/3/07 飛翔絵の追加と、観察データを更新
 改訂6:2022/2/19 ウ科へのリンクを追加、観察データを更新
 全面改訂:2024/01/19