- 日本の野鳥 オオミズナギドリ Japanese Wild Birds Streaked Shearwater

オオミズナギドリ 大水薙鳥
Oomizunagidori
Calonectris leucomelas
Streaked Shearwater

オオミズナギドリ ミズナギドリ目ミズナギドリ科

羽ばたかずに海面を滑るように飛ぶ
翼が細長い夏の海鳥 

   

オオミズナギドリ



 私の手元に「海鳥ハンドブック」という図鑑があります。表紙はオオミズナギドリです。海鳥とは海洋での生活を主にする鳥のこと。もちろん繁殖時は島や陸地に上がるわけですが、それ以外は24h海洋上で暮らします。ただ「海鳥」というカテゴリーの中には、カイツブリやウ類、カモメ類、さらにクロガモなどの海ガモ類も含め、沿岸性の種も入れられることがあるので、おなじ「海鳥」でも人や立場で解釈が微妙に違っていたりします。
 純粋に海洋性の海鳥たちは、陸からの観察がかなり厳しい相手です。南風の吹く嵐の翌日などは、風に押し流されたり迷ったりして陸地に近づくことがありますが、基本的にフェリーや沖合の島に行かないと観察が難しいと思います。そんな海洋性の海鳥の中で、このオオミズナギドリだけは結構な距離で陸から観察ができたりする有り難い海鳥です。



「九十九里浜ののオオミズナギドリ 春」 クリックで拡大します。

九十九里浜のオオミズナギドリ 春

千葉県匝瑳市
1024×682 px
2019/04/28
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E
FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3

 春の九十九里浜の一枚です。陸からでは自分の経験で過去一二を争う近い距離で観察することができ、青い海と心地よい潮風も相まって、最高のひとときを過ごすことができました。ただ近いとは言っても100mくらいの距離があって、この絵も鳥の姿が分かる程度にまでトリミングしてあります。



「沖のオオミズナギドリ」 クリックで拡大します。

沖のオオミズナギドリ

東京都八丈航路
1024×682 px
2021/05/16
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E
FL ED VR

 三宅島から帰りのフェリーは朝に出発なため、海鳥観察の時間がたっぷりと持てました。当日は小雨交じりの天気で、海の色もグレーっぽい感じでしたが、陸からでは見られない距離でオオミズナギドリが観察できて大満足な一日となりました。



「横須賀沖のオオミズナギドリ 秋」 クリックで拡大します。

横須賀沖のオオミズナギドリ 秋

神奈川県横須賀沖
1024×682 px
2023/10/21
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 南房総へ向かうために久里浜港発のフェリーに乗りました。南房総のグルメと、太平洋岸で観察する秋のオオミズナギドリを期待して出かけたところ、思いもかけず久里浜を出てすぐ、東京湾の中でオオミズナギドリの群れに出会うことができました。ただ短い時間のフェリー乗船だったこともあって、撮影には色々と準備不足がありました。
 まず、観察していた外洋側の右舷は逆光の撮影環境でした。私は思ってもみなかったオオミズナギドリの群れが見えて興奮してしまい、反対側のデッキへ移動することに頭が回らなくなっていました。またTamron A011の600mmレンズを手持ちで撮ったため、あまり良い絵が撮れないままに終わってしまいました。こうして一度目の短時間の勝負は「失敗の巻き」で終わりました。
 その後の南房総一周の夫婦タンデムツーリングでは、当初予定していた太平洋の観察はあまり時間が取れず、鳥見は帰りの航路のワンチャンにかけることとなりました。
 復路は三脚も用意して、順光となる側でミズナギドリを探します。幸い、行きと同じく航路半分を越えた神奈川寄りの海域でオオミズナギドリを見つけ、頑張って撮った結果がこちらの絵です。時間は15:00前くらいでしたが、既に陽が斜めから射すようになっていて、波の模様が面白い感じになりました。
 陸からのオオミズナギドリ観察も結構感動しますが、やはりフェリーから間近に見るオオミズナギドリも興奮しますね。またフェリーで海鳥観察をしたいです。
 なお、オオミズナギドリのようにひらひらと速い速度で飛ぶ鳥は、撮影の難易度が非常に高いです。なので、最初は少し遠め(小さめ)の鳥を狙い、徐々に慣れるのがよいと思います。(変幻自在に飛ぶ鳥を追うのはマニュアルフォーカス前提となるため、一度にやることがすごく多いのです。私はいまだダメダメのままです。)



「オオミズナギドリ 背/腹」 拡大はなしです。

オオミズナギドリ 背



オオミズナギドリ 腹

千葉県長生郡
450×300 px
2022/10/21
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E
FL ED VR

 こちらの2枚も陸からの撮影です。詳細が分かる程度まで最大限拡大してみました。一枚目は背中側、二枚目は腹側の模様が見えるかと思います。基本的に背中は茶色くて頭部のみ白く、腹側は翼も含めて全体的に白っぽく見えます。



「オオミズナギドリの群れ」 クリックで拡大します。

オオミズナギドリの群れ

神奈川県三浦市
1024×682 px
2021/03/14
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E
FL ED VR

 地元神奈川の海で春に見たオオミズナギドリの群れ。3月になって陽気も暖かくなってくると、伊豆諸島方面から駿河湾にも上がってくるようで、冬鳥と交代の時期になります。



「オオミズナギドリ 無数の群れ」 クリックで拡大します。

オオミズナギドリ 無数の群れ

神奈川県三浦市
1024×682 px
2022/03/19
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E
FL ED VR

 こちらも神奈川で見たオオミズナギドリ。ただ、この日は水平線のあたりにまるでベルトのように無数のオオミズナギドリが見えました。これだけの数の鳥を一度に見るのはたぶん初めての経験です。冬のカモメやカモも場所によってはかなりの数ですけれど、この数はそれらを凌駕していると思います。



「伊良湖のオオミズナギドリ 秋の夕暮れ」 クリックで拡大します。

伊良湖のオオミズナギドリ 秋の夕暮れ

愛知県田原市
1024×682 px
2017/09/23
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E
FL ED VR

 最後は愛知県の知多半島での観察記録です。翌日のタカの渡り観察に備えて、夕方に翌朝陣取る場所を下見にでかけたとき、海の向こうに舞うシルエットを見つけました。これが生まれて初めてみたオオミズナギドリでした。正直なところシルエットしか見えないし、初見なので何の鳥かわからず、たまたまおられた鳥見の方に教えてもらってわかった次第。ひらひらと舞い続けるシルエットが面白くて、ずっと見入っていた今も鮮明に思い出す記憶です。




観察データ

場所と回数:愛知県 1、三浦半島3、東京湾 1、九十九里浜3、三宅島1、八丈島航路2、計11回。太平洋の外海にいますが東京湾でも外海に近ければ見られるようです。このオオミズナギドリは1道1府3県の合計6か所で繁殖地が国の天然記念物に指定されているとのこと。そのうちの「府」とは京都府で、「京都府の鳥に」指定されているくらいですから、太平洋だけでなく日本海でもみられるようです(私は住んでいる地域の関係で太平洋でしか見たことがありませんが)。というか天然記念物指定の繁殖地は岩手県の釜石以外はみな日本海の島なので、実際は観察できる場所も日本海の方が多いのかもしれません。また私が長くいた瀬戸内中央部では見たことがありませんでした。ちなみに天然記念物指定対象は繁殖地だけで、オオミズナギドリ本人(鳥)は天然記念物ではありません。念のため。なんかかわいそうだ。。。

観察月と回数:
1月0
2月0
3月2 〇〇
4月2 〇〇
5月3 〇〇〇
6月1 〇
7月0
8月0
9月1 〇
10月2 〇〇
11月0
12月0
計11回
夏鳥です。なかなか真夏の海で鳥見をしようと思わないため、7、8月の記録はありません。文献を見ると、伊豆諸島で繁殖する群れは7月に入った頃から生息場所が北上するようで、東北方面より北でないと見つけにくいのかもしれません。そもそもこの時期の海は海水浴客がいたりするので、大砲もって海岸沿いをウロウロしていると危ない人間と見られるかもしれず、観察も難しいところです。秋にはまた関東でも戻りの群れが見られます。カツオみたいだ。。それともカツオを追いかけているのかもしれませんね?



 (トップ画像 オオミズナギドリ 2021/05/16 D500 500mm/F4×1.4テレコン 八丈島航路の客船から撮影。)


 初出:2020/01/16
 :改定 2021/03/14 群れの写真を追加、観察データを更新
 :改定 2021/07/04 単体の絵を差し替え、観察データを更新
 :改定 2022/04/09 群れの絵を追加、観察データを更新
 :全面改定 2022/10/25 
 :改定 2023/10/22 秋の絵を差し替え、観察データを更新