ミソサザイ 鷦鷯
Misosazai
Troglodytes troglodytes
Eurasian Wren
 
ミソサザイ スズメ目ミソサザイ科
 とても小さな
 初夏の山の妖精

   

広島県福山市、岡山県奥津、富士山麓周辺での観察について
 


ミソサザイの動画
 GWを過ぎた頃から標高500m以上の山に入りますと周囲からとても高音で美しい小鳥のさえずりが聞こえてきます。この頃はキビタキやオオルリ、センダイムシクイなど夏の歌鳥たちはもちろん、春の歌鳥であるウグイスやホオジロ、カラ類も一緒になって一斉に合唱を始め、一年中で一番山が元気な時期です。その中でも特に声が高く、また一節が長くて変化に富んでいるのがここで紹介するミソサザイというとても小さな小鳥です。
 ミソサザイは山の中の沢に近い場所で営巣するため、街中の公園ではまず見ることができません。ちなみに古い図鑑でミソサザイを探しますと隣のページにカワガラスが載っていました。確かに色目や姿はよく似ているし、図鑑でもお隣同士なので種としては近縁なのかなと思っていましたが、最近の図鑑ではページが少し離れていました。
 あらためて両者を見比べてみると、確かに体の輪郭、色目、尾羽をピョンと立てるところや、川沿いの巣作りでコケを使うところなどはとてもよく似ています。一方でサイズは大人と子供ほど違います。そもそもカワガラスとサイズを比べる以前に、ミソサザイはキクイタダキに続いて日本で最も小さな部類に入る小鳥ですので、やはりトポロジー的には姿形が似ていても、種としては離れているのが正解な気がします。ちなみに図鑑ではキクちゃん10cm、ミソくん11cmとありますから2番目に小さいのかな?エナガは14cmだけどもし尾羽が短ければいい線いっているのかもしれませんね。
 このミソサザイ、体が小さいということで、声質がとても高くてきれいです。そしてその体からは想像できないくらいに周囲に声がよく響きます。初夏を代表する歌鳥であるオオルリやウグイスのような声の艶やかさこそありませんが、その声の清涼さではミソサザイが一番なのではないかと思います。
 ミソサザイに関しては初めて出会ったのが福山で鳥見を始めて間もない2008年の頃だったのに、何故かしらそれ以後長く良い出会いがありませんでした。ただ2015年横浜に来てからは山梨や長野の高い山に上がることが増え、ミソサザイの声もよく聞こえるようになりましたので、そのうち動画も撮れるだろうと楽観視していました。そうして2018年の5月、長野北部の戸隠森林植物園でやっと私の目の前で景気よく鳴いてくれるミソくんに出会えました。ここに至るまで、初めて出会ってから10年ですか。いやぁ、やっぱりいい声してますね。感動です。
 
 左サムネイルをクリックすると動画にリンクしています。動画は22MBありますのでDL環境にご注意ください。
 

ふれ愛ランドのミソサザイ(お尻ペンペン)
 
 私がミソサザイに初めて出会ったのは福山で鳥見を初めて間もない2008年の真冬、1月のことです。ウグイスのように「ジャッジャ!」という地鳴きが聞こえ、いきなり私のまん前の木、しかも目線的に同じ高さの杭上の木の天辺に止まってくれました。さえぎるものもなく、距離も5m以内ですから、いくら小さくても目視ではっきりとわかります。旧サンヨンとD200のセットでも余裕で羽模様がわかるくらい大写しに撮れました。ちなみにこの場所は日常的に水が流れるような沢ではなく、雨が降れば沢が湿るくらいの場所でした。またふれ愛ランドには長く通いましたが、初夏にミソサザイのさえずりを聞いた記憶がありません。でもミソサザイの姿は何度も見ていまして、今思い出してもちょっと不思議です。
 
 左「ふれ愛ランドのミソサザイ(お尻ペンペン)」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 

富士のミソサザイ
 
 2021年の初夏、富士山周辺に鳥見にでかけました。早朝からの鳥見はまだまだ厚着をしないと寒いくらいの場所でしたが、鳥たちは既に恋の季節に入り、ミソサザイも元気にさえずっています。
 ミソサザイはやや高い山中の沢沿いに多く、岩がごろごろして周囲から水が染み出たような湿っぽい場所で営巣します。緑い苔がとても似合う小鳥です。
 
 左「富士のミソサザイ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 

観察データ

場所と回数:広島県福山市ふれ愛ランド 2、岡山県立森林公園 1、長野県戸隠 1、山梨県北部 2、富士山周辺4、 神奈川県宮ケ瀬 1、都合11回。私の記録では西日本から東日本まで、山ならどこにでもいる印象です。見かけたり声を聴いたりするだけなら、結構出会いは多いです。ただとても小さく茶色く目立たない小鳥ですし、暗いところにいる上にちょこちょこよく動くため、繁殖期以外は中々見つけにくいと思います。

観察月と回数:
1月1 〇
2月0
3月0
4月2 〇〇
5月3 〇〇〇
6月3 〇〇〇
7月0
8月1 〇
9月0
10月0
11月1 〇
12月0
都合11回
 
 夏の繁殖期は亜高山で、冬は低山で見られる留鳥(漂鳥)です。初夏に亜高山の沢沿いを散策すると美しい鳴き声が聞こえてくるので、この時期に探すのが一番楽しめると思います。冬はウグイス風の「チャッチャ」という地鳴きで探すことができますが、藪の中にいることが多く姿を見かけるのは稀だと思います。


 
 (Top画像 森の中のミソサザイ 2017/06/24 D500 500mm/F4 1.4xテレコン 富士宮市富士山周辺にて撮影)
 
 
 初出:2017/07/2
 改訂:2018/06/2 動画と静止画の差し替え
 改訂:2020/09/23 動画の更新、観察データの追加、文章の見直し
 改訂:2020/09/23 写真の差し替え、観察データの更新