キバシリ 木走
Kibashiri
Certhia familiaris
Treecreeper

キバシリ スズメ目キバシリ科
 木の幹をはいずり回る
 クチバシが細く曲がった小鳥

   

北海道然別湖、栃木県中禅寺湖、埼玉県秩父郡の山での観察について


キバシリとの出会い、ぶれぶれ写真の紹介
 2003年の6月、学生時代の友に会いに北海道帯広へ向かいました。北海道の地に降りたのは生まれて初めてのことでした。季節は6月初旬、普段住んでいる備後地方では梅雨入りの頃。初夏から夏に移り変わる時期です。しかし北海道はまだまだ涼しかった。友人宅の庭にはたんぽぽの綿帽子がきれいに残っていました。
 そこに集まった学生時代の友人たち7人で然別湖(しかりべつこ)にバーベキューと温泉につかりに出かけました。然別湖は帯広からまだ車で一時間くらい山の中に入ったところにある静かな湖です。ここの畔に公園があり、そこでエゾシカ肉のバーベキューなどをしながら歓談していたところ、近くの木の幹に何か小鳥がいることに気づきました。持っていたカメラにサンヨンをつけて撮ってみましたが、やつはとてもすばしこくて、うまく撮れないままどこかへ逃げていきました。残った絵はぶれぶれでよくわかりません。ただすでに福山の地元でコゲラは判別できる知識に達していたので、サイズや見えた色目からしてそれがキバシリであることはわかりました。
 キバシリは福山近辺の低地では見かけない小鳥です。図鑑などで調べると亜高山にいる鳥とのこと。ただし北海道では低地でも見られると書かれています。ちなみに北海道は本州の者とは亜種レベルで違っていて、亜種キタキバシリになるそうです。また、英語名にあるcreepとは「はいずる」という意味です。Treecreeperは「木をはいずりまわるもの」という意味になりますから、正に言い得て妙な表現だと思います。ただしゴジュウカラのように木を上下に歩くことはできず、常に下から上に移動し、上まで上がったら一旦落下して、また下から登るを繰り返します。フィールドで見間違いやすい、よく似た動きをするコゲラとの見分け方ですが、コゲラよりかは小さくスマートで、徘徊する場所をもっと木の下の方に降ろし、「トントン」を「ホジホジ」に変えた動きと言えばよろしいでしょうか。(余計にわかんないか。。)細く曲がったクチバシを使って木の皮に隠れた虫をほじりだしてエサにするので、どちらかというと地面に近い場所にいる間隔が長いように思います。

 左は然別湖のぶれぶれ写真です。木の幹に付いている姿ですが、保護色なので目を凝らさないとわからないかも。こんな絵なのでつい最近までキバシリは弊Webの登録種に上げることは憚っておりました。翼の両脇(風切り)部分に逆L字型の明るい筋が見えるのでキバシリであることがわかります)写真の価値はありませんが、ネタとして貼っておきます。左サムネイルをクリックしてご覧ください。


キバシリの動画

 中禅寺湖の近くの林で撮った動画を紹介します。当日は前回の然別の失敗があったため、まずはまともな静止画を撮ろうと、やつをレンズで追いかけました。しかし、すばしっこいし、すぐに木の裏に回って見えなくなってしまいます。そんなこんなで動画を後回しにしていたら、やつは急に奥に引っ込んでしまいました。しばらく待って一度だけまた前に戻って来たので、よっしゃとカメラを回したら、今度はまたすぐに戻っていった。。。
 結局動画は30秒もなく、ちょっと寂しいですが動きはそれなりに撮れているのでお許しを。ちなみに最後に一瞬落ちてくるキバシリが映っています。コマ送りでみるとちゃんと頭から真っ逆さまに落ちていますね。あたりまえか。。その後、画面一番下に差し掛かったところで羽を広げ始めているのを確認できました。やはり小さい生き物は我々とは時間分解能の世界に生きているのだとわかります。私の反射神経だと、仮に羽があっても間違いなく地面に激突です。。。


 左「キバシリの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。動画は10MBあるのでDL環境にはご注意ください。


中禅寺湖畔のキバシリ

 動画で撮ったときと同じ時間、同じ場所で撮ったキバシリです。キバシリは雌雄同色なので ♂ ♀ はわかりません。ただこの個体は風切りのところに見える逆L字型のややオレンジがかった筋目がはっきりしないので、もしかすると若い個体なのかな?それとも個体差程度でよくあることなのでしょうか。数をあまり見ていないのでわかりません。
 キバシリはこの絵のように木の正面に張り付いていると、保護色になって非常に気づきにくいです。図鑑ではサイズも13cmとあるので長めの尾羽やクチバシを換算すれば身体自体は非常に小さく、木に付いた虫みたいなものです。木の側面を動いているところが見つけ出すチャンスですね。この日は先に嫁さんに見つけられてしまった・・・いや見つけていただいた、ので、彼女には誠に感謝の次第。

 左「中禅寺湖のキバシリ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


秩父の山のキバシリ

 こちらは埼玉県の秩父の山に上った時に見つけたキバシリです。中禅寺湖は標高1,200m、この山も標高は900m以上あるので、標高1,000mがキバシリを探す一つの目途になるのではと思います。北海道では平地の林でも見られるとのことですが、私が見た然別湖も標高800mの湖なのでやはり涼しいところの方が見つけやすいようです。
 絵を見てわかる通り、キバシリは木の幹に止まっているとき、尾羽の先を木の幹に押し付けて身体を支えています。尾羽の先端の形はひとつ上の絵を見てもらうとわかりますが、キツツキとそっくりです。私はそんなものでキバシリはキツツキの仲間だと長く思い込んでおりました。しかしキバシリは系統的にはキツツキとは遠く、どちらかといえばゴジュウカラとかの方が近いようです。見た目だけではわからないものですね。なおこちらの個体は、上で書いている「風切りのところにオレンジ色っぽい逆L字型の模様」がはっきり見えると思います。

 左「秩父の山のキバシリ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。



観察データ

場所と回数:中禅寺湖、秩父の山、北海道然別湖畔、都合3回

観察月と回数:
 1月0
 2月1 〇
 3月1 〇
 4月0
 5月0
 6月1 〇
 7月0
 8月0
 9月0
10月0
11月0
12月0
本州では通年山にいる小鳥です。およそ1,000m以上の標高に行けば会える確率は随分と上がると思います。





 (Top画像 キバシリ 2020/02/24 D500 500mm/F4 栃木県中禅寺湖畔にて撮影)


 初出:2020/03/14