セッカ 雪加
Sekka
Cisticola juncidis
Zitting Cisticola

セッカ スズメ目セッカ科
 ブレーキの壊れた自転車のような鳴き声をする
 葦原に棲む妖精

   

セッカの紹介



 初夏に河川敷を散歩しますと、ブレーキの壊れた自転車のような「ヒッヒッヒッヒ」と際限なく続く鳴き声が聞こえてきます。よく聞いていれば、この声は大きくなったり小さくなったり周期的に変動しますので、自転車のブレーキ音ではなく、小鳥が首を振ってあっちこっちに向いてさえずっているだろうなと思えてきます。
 声の聞こえてくる方向をじっと観察していると、やがて同じあたりをぐるぐる回って飛びながら鳴くとても小さな小鳥がいるのに気づきます。あとは飛翔が終わるのを待ちながらレンズを向けるわけですが、小鳥は飛び終わると草原の中に飛び込んでしまい、結局姿を見せてくれません。。
 頑張って何度も何度も飛翔を観察していると、それまで「ヒッヒッヒ」と鳴いていた声が、降りるときには「チャッチャッチャ」に変わることに気づきます。「ヒッヒッヒ」と鳴きながらやや高く飛び、降下に入ると「チャッチャッチャ」に変わる感じです。そして「チャッチャッチャ」の鳴き終わりと同時に姿を草原の中に隠します。その神出鬼没さはまるで葦原に棲む小さな妖精のようです。
 この小さな鳥の正体はセッカという茶色い地味な姿をした小鳥です。図鑑では体調13cmとなっていますが、やや尾羽が長いので、体の大きさ自体はミソサザイやキクイタダキのように日本最小クラスの可愛らしい姿をしています。
 棲み処は主に河川敷の葦原です。それ以外では低地の開けた草地で見た(声を聞いた)ことがあると記憶しています。





「セッカ 春」 クリックで拡大します。

セッカ 春

千葉県土庄町
1024×682 px
2021/04/30
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3


 セッカは葦原や広い草地で一年中を過ごす留鳥です。見た目は年中ほぼ変わらず地味で、多少姿が見えやすくなる冬場に、枯れた草と見分けがつきにくくなる姿をしているのかなと思います。
 季節ごとのセッカを紹介します。最初の一枚は春のものです。図鑑によれば、開いたくちばしの中が黒く見えるのは ♂ の特徴とのことです。
 



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セッカ 初夏

岡山県笠岡市
1024×682 px
2015/06/28
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3


 初夏のセッカです。GWを過ぎて陽気が上がってくる5~6月の頃は、飛ぶときだけでなく草に止まっているときもさえずることがあります。なので、この時期は一年のうちでセッカを一番見つけやすい季節と思います。
 この絵は小川の横にある草むらで撮りました。葦原だと大抵は中に潜り込んだり、上に出ても風で揺れやすいので、このような草原での出会いは嬉しかったですね。
 



「セッカ 盛夏」 クリックで拡大します。

セッカ 盛夏

茨城県稲敷市
1024×682 px
2017/08/06
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 真夏のセッカです。この時期はどの鳥の繁殖もひと段落ついた時期ですし、レンズが茹るほどの日差しなので、野鳥撮影にはあまり適した時期ではありません。それでもレンズを通して葦原などを観察していると、「この時期だからこその空気感」というものが感じられて、結局のところ毎年出かけてしまいます。
 この個体はクチバシの中が黒く見えませんし、胸の羽毛が割れているように見えるので、おそらくこの夏に抱卵していた ♀ だと思われます。
 



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セッカ 秋

岡山県笠岡市
1024×682 px
2015/09/06
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3


 秋のセッカです。と言っても、まだまだ残暑残る時期ですが、この日は珍しく低木に止まっている姿を捉えることができました。
 



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セッカ 冬

茨城県稲敷市
1024×682 px
2023/01/08
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 冬の葦原で見つけたセッカです。猛禽類の観察のため、夕方に現地に入りますと、土手の下で枯れた葦に出入りするセッカを見つけることができました。既に日差しが落ちてきている時間帯なので葦の影が体に映ってしまいますが、これもまた一興かと。
 




「セッカの飛翔」 クリックで拡大します。

セッカの飛翔

千葉県土庄町
1024×682 px
2021/04/30
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3


 飛翔というよりは飛び出しの絵です。
 セッカはよくさえずりしながら周囲を飛び回るので、飛翔姿自体はかなりよく見かけます。そこで毎回飛翔撮影に挑戦しますが、未だにまともな一枚を撮れた試しがありません。
 まず、身体が小さいので遠くからだと飛んでいる虫みたいな絵にしかなりません。近づいたら近づいたで、今度は低空を不規則に飛び回るため、レンズを目いっぱい振り回わすことになってしまって、結果的にばっちり撮るのはとんでもない難易度になります。今年もまたボツ画像の量産は続くのでしょうか。。
 



観察データ

場所と回数:福山市2、岡山県笠岡市4、千葉県土庄町2、茨城県稲敷市5、計13回

観察月と回数:
1月1 〇
2月1 〇
3月0
4月4 〇〇〇〇
5月2 〇〇
6月1 〇
7月0
8月1 〇
9月2 〇〇
10月0
11月0
12月1 〇
計13回
通年葦原や河川敷等、開けた草地ににいる小鳥です。低地で、できるだけ大きな川の葦原に行けば、見られる可能性はぐっと上がると思います。初夏にさえずって低空を飛び回わりますから、観察はGW以降~梅雨時ぐらいがお勧めです。

 (トップ画像 冬のセッカ 2023/01/08 D500 500mm/F4.0 茨城県稲敷市にて撮影)

 初出:2015/07/26
 改訂:画像の差し替え2015/10/19
 改訂:2018/06/04 文章の校正
 改訂:2019/08/27 文章の校正
 改訂:2020/1/1 飛翔絵、観察データを追加
 改訂:2021/2/25 文章の校正、観察データを変更
 改訂:全面作り直し