キンクロハジロ 金黒羽白
Kinkurohajiro
Aythya fuligula
Tufted duck

キンクロハジロ カモ目カモ科
 後ろ頭に髪飾りを垂らした
 黒白の潜水カモ
 

   

キンクロハジロについて



 キンクロハジロは街の公園の親水池でもごく普通に見られる冬の渡り鳥です。公園では人にすぐ近いところまでやってきて、愛嬌を振りまいてくれます。そのフレンドリーさからか、一般の方々にも人気のカモです。
 基本淡水域のカモですが、河口などの汽水域でもたまにみることがあります。サイズはマガモ・カルガモよりは一回り小さく、首が短めなため、少し丸っこくて愛嬌を感じるカモです。頭から背中、翼は黒っぽく、腹は真っ白でコントラストがはっきりしていて、見た目も特徴的だと思います。白黒姿よりもっとわかりやすい特徴と言えるのが、金色をした眼と、後ろ頭に垂れ下がる飾り羽根でしょうか。飾り羽は ♂ が特に長く、生殖羽では首まで垂れ下がります。♀ は少し後ろに伸びた羽根が尖ってみえるくらいで、ちょっと寝ぐせっぽい感じ。♂ の黒っぽく見える頭は、光の当たり具合によって紫色に光ったりしてきれいです。
 キンクロハジロは潜水ガモと言われるタイプのカモで、観察していると定期的に水中に潜ります。そうして水中の魚類や甲殻類、両生類などの動物を餌にしているそうです。
 関東で観察していると、キンクロハジロはおよそ淡水の池で、似た姿をしていて同属のスズガモは内湾などの海水で、という棲み分けになっているように思えます。更にキンクロハジロと場所的な競合をしている同属のカモがおりまして、こちらはホシハジロという種となります。どちらも淡水が種で、ときに内湾で見かける感じです。しかし私は「両者の群れを一か所で見ることは少ないな」という印象を持っています。少し調べてみると、私のキンクロハジロの観察数とホシハジロの観察数は合わせて109回ありまして、その中で琵琶湖以外の(水面がざっと見渡せる程度の大きさの)場所で両者を同じ場所、且つ同時刻にカウントしている回数は7回でした。琵琶湖以外の同時エンカウントを確率にすると、14/83なので約17%くらいとなります。冬の池で両者を同時に見る確率は1/5以下という感じで、やはり何かお互い遠慮(?)があるのでしょうか。






「キンクロハジロ ♂ 」 クリックで拡大します。

キンクロハジロ ♂


神奈川県横浜市
2023/02/19
1024x682 px
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR


 横浜市内の公園で撮ったキンクロハジロの ♂ くんです。頭はおしゃれなんですが、体形がちょっとおちゃめな感じでどことなく憎めないやつです。
 



「キンクロハジロ ♀」 クリックで拡大します。

キンクロハジロ ♀


神奈川県横浜市
2023/02/19
1024x682 px
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR


 上の ♂ くんと同日同場所で撮った ♀ さんです。この個体は鼻先が少し白くなっています。全体的には個体差があって、白くならないものやもっと大きく白くなるものなど、色々なようです。ちなみに同属で姿がよく似たスズガモ ♀ は、この白色部がかなりはっきりと大きいので見分けに使えます。
 この個体は背中がこげ茶に見えますが、もっと黒っぽいものもいます。スズガモ ♀ の背中はもっと色が薄くて、グレーがかっています。難しいのはキンクロハジロ ♀ の幼鳥で、全体的に色が薄いため、スズガモ ♀ とかなり似ています。
 



「キンクロハジロ 群れ 」 クリックで拡大します。

キンクロハジロ 群れ


神奈川県横浜市
2023/02/19
1024x682 px
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR


 こちらも上2枚と同じ日同じ場所の絵です。人が非常に多い街中の公園で、池を一周しても2~3分くらいな小さい池ですから、鳥たちも完全に人慣れしています。たぶんときどきパンなどもらえるからなのか、人が岸辺に近づいたら逆に足元まで近づいてくるものもいます。



「キンクロハジロ ♂ 飛翔」 クリックで拡大します。

キンクロハジロ ♂ 飛翔


栃木県日光市
2020/02/24
1024x682 px
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3

 キンクロハジロが飛ぶ姿を見るのは割と稀です。水面採餌タイプのカモなら、その場で即飛び上がって逃げられるので、飛ぶ姿も割とよく見かけますが、潜水ガモは飛ぶのに助走が必要なため、飛ぶより先に潜って逃げる方が速いのですよね。そういう理由もあって、キンクロハジロは飛ぶところを見る機会があまりありません。
 ではどんなところへ行けばキンクロの飛ぶ姿を見られる確率が上がるかですが、答えとしては大きな湖に出かけるのがよいと思います。例えば琵琶湖みたいに大きな湖だと、群れの数も多いため、ずっと眺めているとそのうち群れで移動するグループが出てきます。ここで紹介はしませんが、実際琵琶湖では群れの飛翔を撮っています。(逆光かつ米粒なため、紹介するには至らず)ちなみに上の絵は ♂ 単体ですが、場所はやはり広い湖で撮っています。ある程度水面が広くないと、飛んでまで移動する必要もありませんので、結局そうなりますね。。あと仮に狭いところで飛ばれても、おそらくレンズの振りが大きくなりすぎて飛ぶ姿に追いつきません。これは私の腕の問題でもありますが、カモの飛翔は結構スピードが速くて、近いところの絵を撮るのはかなり難しいです。一方真っすぐ飛ぶので、ある程度距離があると逆に飛行経路の予想がついて撮りやすい鳥だと言えます。ガンカモ類の大きな飛翔絵を撮りたいときは、広い湖の縁に陣取り、遠くからこちらに向かって飛んでくるのを待ち構えて写すに限りますね。
 




観察データ

場所と回数:広島県 淡水 15、岡山県 汽水 6、鳥取県 淡水 1、汽水 3、大阪 淡水 1、滋賀県 淡水 6、長野 淡水 1、新潟 淡水 1、神奈川 淡水 5、東京 淡水 3、千葉 汽水 3、茨城 淡水 1、栃木 淡水 1、北海道 淡水2、計49回。ほぼ淡水で見ています。千葉の汽水は銚子港なので、ここのみは海水が濃い目かもしれません。他の汽水は淡水寄りな気がします。場所は湖と池がほとんどで、川にいる場合は河口に近いところや、完全に淀んだ流れのないところくらいです。東京湾沿いの海のすぐ横にある池で見たことが何度かありますが、お隣の海に行くと、こちらにいるのはスズガモだけです。逆もありませんが。。

観察月と回数:

1月7  〇〇〇〇〇〇〇
2月8  〇〇〇〇〇〇〇〇
3月6  〇〇〇〇〇〇
4月2  〇〇
5月3  〇〇〇
6月0
7月0
8月1  〇
9月0
10月1  〇
11月6  〇〇〇〇〇〇
12月14 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
計49回

冬鳥です。5月の2回は北海道で、あと1回は米子の水鳥公園。8月も米子の水鳥公園。米子では何か理由があって北に行けなかった個体が夏を越したのだと思います。米子水鳥公園は日本海側の渡りの経路でしょうし、ラムサール条約にも登録された保護区なので北行きを諦めた鳥たちに居心地がよかったのかもしれませんね。
 



 (トップ画像 キンクロハジロ ♂ 2018/02/11 D500 500mm/F4 長野県)

 初出:2018/03/25
 改訂:2020/01/07 漢字名の追記
改訂:2021/08/14 カモ科(潜水採餌型種)へのリンクを追加、観察データを追加
 全面改訂:2024/02/15