シノリガモ 晨鴨
Shinorigamo
Histrionicus histrionicus
Harlequin duck

シノリガモ カモ目カモ科
 波しぶき大好き!
 雅にカラフルな海ガモ
 

   

シノリガモについて



 シノリガモは英語名で"Harlequin duck"と名づけられている海ガモです。特に ♂ の顔に特徴があって、その顔の模様を道化師のお化粧に見立てて名前が付けられています。一方和名は"晨鴨"という漢字が当てられています。辞書では「しん」と読まれ、訓読みでは「あさ」などと読まれ、明け方を意味するとあります。しかしどこを探しても「しのり」と読まれるとはありません。
 「日本野鳥歳時記」で説明されているのをみますと、「しのり」とは古語で夜明けを意味することばとのこと。昔、まだ古語が生きている頃にシノリガモと名づけられてから、漢字で同義語の朝焼けを意味する「晨」の漢字が当てはめられたようです。確かに脇腹や眉にある赤茶色の部分が朝焼けの色ににていますし、耳の部分にある丸い模様は昇ってくる陽を表すのでしょうか。海に浮かぶカモなので、海の朝焼けの情景と被った姿だと考えれば納得です。本当にそうして名づけられたなら、名付け親の方は随分絵心のある感性豊かな方だったのだろうなと思います。姿だけでなく名前も雅なカモですね。







「荒海のシノリガモ」 クリックで拡大します。

荒海のシノリガモ


千葉県九十九里浜
1024x682 px
2024/01/06
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 シノリガモはカモの仲間では珍しい習性があって、外海の岩場周りに居つきます。なので普段から鍛えられていて(?)少々の波はへっちゃらです。人間なら間違いなくアウトな激しい波が来ても動じません。クロガモなんかもわりと激しい波の海に多い気がしますが、全体的には沖目に浮かんでいることが多く、シノリガモとは少し居場所が違います。同じ潜水型の海ガモでもスズガモなどは穏やかな内湾でしか見かけませんので、カモといっても色々な個性を持っていて面白いですね。
 



「シノリガモ ♂、♂ 若、♀」 クリックで拡大します。

シノリガモ ♂


シノリガモ ♂ 若



シノリガモ ♀


千葉県九十九里浜
♂ 2024/01/06
♂ 若 2020/03/20
♀ 2020/03/20
1024x682 px
Nikon D500 Mode A
♂ AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
♀ AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3


 シノリガモは中々アップで観察させてくれないカモです。そもそもが荒い海に多いので、こちらから近づくこともできません。近くで見るには、悪天候の翌日のように多少海が荒れているシチュエーションを求めて出かけ、沖に並んだテトラの内側に入っているのを探すなどが狙い目かと思います。
 シノリガモは御多分に漏れず ♂ は派手な色をしていて、♀ は地味な感じです。しかし色目だけでなく、目の後ろ側にある模様でも ♂ ♀ を区別できるので覚えておきましょう。♂ は満月プラス三日月があります。一方で ♀ は満月のみです。これは若鳥判別に役立つポイントで、生まれて一年目の ♂ は ♀ にそっくりな色目をしていますが、三日月もあるため ♀ と簡単に区別することができます。2枚目の画像を見てもらうと、雌によく似た色目なのに、満月の後ろに三日月模様があるのがわかると思います。これは ♂ の若です。
 



「知床のシノリガモ ♂、♀、若」 クリックで拡大します。

知床のシノリガモ ♂、♀、若


北海道斜里郡
1024x682 px
2022/05/03
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 2022年のGWに横浜から知床まで車でほぼ下道+フェリーで往復してきました。丁度知床の観光船事故の直後だったためにメインイベントで予定していた知床半島周辺の観光船に乗ってケイマフリなど北海道の海鳥を見ることは敵いませんでした。しかもGWというのに前日降った雪で知床峠が閉まってしまい、ギンザンマシコ探索も不可能に。失意の私を慰めてくれたのがこちらのシノリガモたち。皆で「また来いよ」と言ってくれているように思えました。
 一番左の個体は ♂ の若です。もうだいぶと成鳥に近い色目になっていますが、お腹周りがやや薄いまだら模様になっています。
 



「シノリガモ 飛翔1、2、♀」 クリックで拡大します。

シノリガモ 飛翔 1


シノリガモ 飛翔 2


シノリガモ 飛翔 ♀


千葉県九十九里浜
10248x682 px
2024/01/06
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 2024年に一泊二日で茨城と千葉を廻ってきました。2日目の午後、周遊の最後に訪れたのが毎年冬の楽しみにしている九十九里浜。
 今回は正月明けの連休中だったので、一番天気が良さそうな日を選んで出かけることができました。おかげさまで最高の環境でシノリガモをはじめとした海ガモ類を観察することができました。
 中でもシノリガモは今回一番岸よりに居てくれて、その姿を近かったり遠かったり色々と楽しめました。次はクロガモやビロードキンクロなんかももう少し近くで見たいな。
 





観察データ

場所と回数:九十九里浜8、北海道知床 2、計10回。海ガモです。過去瀬戸内海では見たことがなく、東京湾でも見たことがありません。九十九里浜のように関東より北の太平洋側の波の荒い外海、特に岩礁近くで見ています。(東北北海道の山の渓流沿いでは一部が夏季に繁殖しているとのこと)なお磯でなくても防波堤のテトラ近くにもいますので、観察するならその辺りがしやすいと思います。

観察月と回数:

1月3 〇〇〇
2月1 〇
3月2 〇〇
4月0
5月2 〇〇
6月0
7月0
8月0
9月0
10月0
11月0
12月2 〇〇
計10回

本州の海では基本冬鳥です。東北や北海道の山中の渓流で一部繁殖しているものがいるとのこと。ちなみに5月の2度のカウントはどちらも北海道の知床でのものです。



 (トップ画像 シノリガモ 2020/03/20 D500 500mm/F4×1.4テレコン 九十九里浜にて撮影。
 シノリガモはおよそ波を気にすることがない海ガモです。この絵のときも大波をザブンと食らっていましたが、その場に仁王立ちのままでした。凄いです。

 初出:2020/03/20
改訂:2021/08/11 カモ科(潜水採餌型種)へのリンクを追加、観察データを更新
改訂:2022/03/21 飛翔絵を差し替え、観察データを更新
 全面改訂:2023/12/10
改訂:2024/01/06 静止画を大幅に差し替え、観察データを更新
改訂:2024/01/14 若画像、♀ 飛翔画像を追加