スズガモ 鈴鴨
Suzugamo
Aythya marila
Greater scaup

スズガモ カモ目カモ科
 キンクロハジロによく似た
 海が好きな潜水ガモ
 

   

東京湾周辺での観察について


スズガモの観察と動画の紹介  
 福山に住んでいた頃、よく見る潜水系のカモと言えばキンクロハジロとホシハジロがトップ2でした。キンクロハジロは主に池で、ホシハジロは池、川、海どこにでもみられました。一方ここで紹介するスズガモはアサリなどが好物らしく、どちらかというと静かな海で見られるカモのようです。静かな海と言えば、瀬戸内海は正にそうなのですが、何故か何度海に通ってもスズガモには出会うことがありませんでした。私の持っている図鑑のスズガモのページには笠岡市で撮られた群れの写真が確かに載っていますので、「いないことはないはず」と、いつもカモの群れを丁寧に見ていたのですが、3年間海辺沿いを観察して回ったにもかかわらず、とうとうスズさんに出会うことはありませんでした。
 前述の通り、結局福山市ではスズさん達に一度も出会えなかったのですが、横浜に引っ越してきて何度か東京湾に面する公園に出かけたところ、あっさりとスズガモの群れに出会うことができました。というより東京湾ではスズさん達、確かに普通にいるのです。更に言えば、この界隈で冬に見るカモと言えばほぼスズガモばかりでした。。。
 スズガモはパッと見ると見慣れたキンクロハジロっぽいのですが、よく見れば ♂ の背中が白っぽいのでスズガモであるとわかります。もっとも総じていえば「どいつもこいつも単なる地味なカモの群れ」でありますから、佇まいはほとんどキンクロたちやホシハジロ達と変わりません。実際のところ、私などはしばらく見ているとすぐ観察に飽きてしまいます。まあ、奴らもほぼ顔を背中に埋めて休んでいますので、なんというかお互いの間に少し空気の壁がある気がしています。ちなみに「鈴鴨」の名の由来は「飛ぶときに鈴のような音が聞こえるから」なのだそうですが、私は今のところスズガモが間近を飛ぶところに遭遇していないので、まだ聞いたことがありません。東京湾のカモ達は人慣れしているので、人間が多少近づいても飛んで逃げるなどということがまずなく、なかなか飛ぶところに出会うチャンスが少ないのですが、いつかその「鈴の音」を聞いてみたいものですね。

 左「スズガモの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


スズガモの♂ ♀  
 まずは ♂ から紹介します。先に紹介したとおりキンクロハジロの背中が白っぽくなったような感じです。目も黄色でよく似ています。ただスズガモくんにはキンクロくんのような後ろ頭の冠羽はありません。後ろ頭に寝癖があるのがキンクロくんで、絶壁なのがスズガモくんと覚えておけば見分けが楽になるかも。
 その下は ♀ です。こちらもキンクロの ♀ とよく似ています。スズガモさんのクチバシの元には白斑があるので見分けに使えますが、キンクロさんにも同じような白斑がある個体がいるので絶対とは言えません。ま、近くに大抵カップルの ♂ がいるのでそちらで見分けるの確実です。

 左「スズガモ ♂」「スズガモ ♀」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


陸に上がったスズガモのカップル  
 こちらは陸に上がっていたスズガモのカップルらしき二羽の姿です。カモ類全般に言えることですが、細かな白黒模様が波のように重なり本当にきれいです。スズガモは潜水ガモなので陸の上を歩くのはあまり得意でありません。ですので浜にいる姿ではじっとしていることが多く写真も撮りやすいですね。

 左「陸に上がったスズガモのカップル」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


スズガモの羽と思しき羽毛  
 上で紹介した絵を撮ったときに三番瀬の岸辺で拾った、スズガモの肩羽と思しき羽毛を紹介します。
 スズガモだろうと考えた理由は
1.図鑑のスズガモの肩羽、もしくは腋羽に見た目サイズとも似ている。
2.羽が見た目そんなに傷んでおらず、抜けて間もないと思われるが、その日周囲で見たカモがほぼスズガモオンリーだった。
 という点からです。一枚二枚拾っただけの羽毛の種の同定は「断言」することが非常に難しいのですが、この羽に対する自信の程は8割くらいです(数字に根拠はありませんが。。)。羽毛の場所は ♂ の背中の白っぽい細かな斑模様の付け根あたりのものかな?ちょっと茶色っぽいので ♀ のものかもしれませんね。

 左「スズガモの肩羽と思しき羽毛」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


実は福山でも見ていたスズガモ

 先に福山時代はスズガモを一度も見たことがなかったと書きました。しかし私の眼はなんと当てにならないものでしょうか。。最近過去のファイルを見直ししていて、実はスズガモを見ていた(単に見逃していた!)ことが判明しました。場所は松永湾。時は2014年の1月4日。この日は確か大量のホシハジロが松永湾にいた日です。おそらく数百のホシハジロが松永湾横の河口近くにいて、「もしかしてアメリカホシハジロやアカハジロみたいな珍種が混じっていないか?」とレンズを振りながら適当に証拠写真を撮っておいたと記憶しています。きっとホシハジロだけみて、白黒のこやつは「キンクロだし」と無視していたに違いありません。。
 D200に旧サンヨン+1.4xテレコンを付けて撮った絵ですから、なんとも古めかしい冴えない絵です。それでも種の同定くらいはできたのですから文句言ったらバチがあたりますね(サンヨンは1990年製で親父の形見の使い古しですから・・・一つ上の羽毛を撮った60mmマクロも同じころのレンズです)。ちなみにこの頃にレンズの限界を感じることが増えたこともあって、丁度2013年12月に発売されたTamron-A011を買う決心をし、私の写真も同じ年の春からは一気に解像度が上がることになります。
 とりあえず、「山ほど見慣れた鳥がいたとしても、念のため一通りは撮っておけ」が鉄則ですね。ムクさんなんかも馬鹿にしていたらギンムクなど見逃してしまうかもしれませんし。(ギンムク撮ったことないけど、ムクさんは無視しがちな私です)

 左「福山のスズガモ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


観察データ

場所と回数:福山市1、東京湾 13、千葉県九十九里浜 2、銚子近辺の港湾 4、宮城県の湾内 2、都合22回。全て海でみています。九十九里浜の記録も北端の飯岡付近でしたから、基本、波の穏やかな内湾に多いと思います。

観察月と回数:

1月5 〇〇〇〇〇〇
2月5 〇〇〇〇〇〇
3月1 〇
4月3 〇〇〇
5月0
6月0
7月0
8月0
9月0
10月1 〇
11月1 〇
12月6 〇〇〇〇〇〇〇
都合22回

冬鳥です。東京湾では10月初旬から4月下旬まで記録がありますので、夏以外は普通に見られる感じでしょうか。



 (トップ画像 スズガモ 2015/01/03 D7100 150-600mm/F5.6-6.3 千葉県船橋市にて撮影)


 初出:2016/01/17
 改訂:2020/02/11
 改訂:2020/05/30 福山の記録と観察データを追加
改訂:2021/08/11 カモ科(潜水採餌型種)へのリンクを追加、観察データを更新