x 日本の野鳥 アマサギ Japanese Wild Birds Cattle egret

アマサギ 猩々鷺
Amasagi
Bubulcus ibis
Cattle egret

アマサギ ペリカン目サギ科アマサギ属
 初夏の田んぼで見かける
 オレンジ色の顔をしたサギ

   

福山市近辺での観察について


アマサギについて、動画の紹介

 福山時代の自宅のような周りに田畑が多い田舎では、「シラサギ」はどこにでもいて周りの風景に溶け込んでいる存在だといえます。しかし一口に「シラサギ」といっても実際は大・中・小の三種類と、これから紹介するアマサギが季節・場所によって入れ替わって現れているのであり、実態は少々複雑です。
 私の経験でお話ししますが、アマサギを見るなら初夏の田んぼに限ります。今まで川や池、海で朱色のサギを見たことがないので、アマサギを見たいならまず田んぼにでかけましょう。季節はGWから梅雨の間、田に水が張られて田植えが始まる頃がベストです。また山間地のような田んぼより、市街地に近い平地の田んぼの方でよく見かけるように思います。サギ類は鳥見も慣れてくればおよそスルーするしてしまうことが多いのですが、一見同じように見える「シラサギ」でも初夏の繁殖の時期は顔の周りに独特の色目が付いたり、美しい飾り羽が出たりするので絵にするには一番チャンスの時期であります。そしてその最たる鳥がこのアマサギだと思います。
 アマサギは日本では夏鳥で、冬は東南アジアで過ごすそうです。アマサギ英名の"Cattle egret"のCattleとは牛のことらしく、東南アジアで農耕に使われる水牛などの周りをうろちょろしておこぼれをもらうことからつけられた名前だそうです。
 これは私の実体験です。佐賀県に旅行に出かけた際、偶然ですが畑の中にアマサギを見つけました。その畑に耕運機が入っていたのですが、耕運機のすぐ横をアマサギが付いて歩きます。。。アマサギからすれば牛も耕運機も同じなのか。。。噂には聞いていましたが、実際見てみるとその怖さ知らずの姿に思わず笑ってしまいました。

 アマサギが田んぼやあぜを練り歩く動画を置いておきます。最初の耕運機について回るところは佐賀の東与賀町にて。その後のアップは福山の我が家近辺です。左「アマサギの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


アマサギの夏羽

 シラサギ類についてもう少し詳しく観察してみましょう。うちの近所での話しとなりますが、夏の田んぼではまずチュウサギが多いですね。チュウサギとは中くらいのサイズのサギという意味で、アマサギと同じく夏の渡り鳥です。夏場にあぜの辺りでカエルをくわえているのはたいていチュウサギです。夏以外の田んぼではコサギが主になります。もちろん「小さいサギ」の「コサギ」です。コサギは留鳥なので夏でも見られるのですが、それ以上にチュウサギが多いので影が薄くなりがちです。冬になるとチュウサギと入れ替わってダイサギを見る機会がふえます。言わなくても分かるかと思いますが、「大きいサギ」です。ダイサギに限っては田畑というより川や池、海など足がしっかり水につかるような場所を好みますので田んぼで見かけることは稀です。しかし田んぼの近くには川が流れていることが多いので、田の周りでもダイサギを見かけることはよくあります。
 もっと細かくサギ科の中での分類でいうと、アマサギはアマサギ属、ダイサギはアオサギ属、チュウサギとコサギはコサギ属です。チュウサギなどダイサギに近い印象ですが、コサギの仲間なんですね。ちょっと不思議。
 これら大中小のシラサギ類は年中真っ白な姿をしているので、クチバシの色や長さ、足の色、微妙な身体サイズの違いなどをよほどよく知っていなければ見分けがつきません。一方、アマサギだけは丁度田植えの始まる頃に顔がオレンジ色に染まるので、このときばかりは「これはちょっと普通と違うぞ」と容易く気付くことができます。
 アマサギは漢字で「猩々鷺」と書きます。猩々とは中国から伝わった赤い顔をしたお猿の妖怪のことです。確かに言い得て妙なネーミングですね。赤い色には個体差があって、個体によっては目まで血走っているものがいます。「おまえもうちょっと落ち着けよ」と諭してやりたいくらいです。

 まずはアマサギの初夏の代表的な姿を2枚続けて紹介します。

 左「アマサギの夏羽その1、その2」のサムネイルをクリックしてごらんください。


アマサギの田植え

 小さな群れの紹介です。場所は福山時代の自宅裏の田んぼ。。。つまり我が家の部屋から撮っています。我が家周辺の田舎度がわかろうかという一枚ですね。。。この日は5羽くらいの個体がおりました。中でも全身白いのが混じっていますが、同じアマサギで冬羽型の個体です。くちばしが黄色いのでコサギでもチュウサギでもなくアマサギだとわかります。コサギやダイサギを川や海で観察していると、足の指先をぞぞぞっと揺り動かしながら、足元のエサを追い出して食する行動が見られるのですが、アマサギは行動的でどんどん歩きます。この日は田んぼの端から端まで耕運機か田植え機のように行ったり来たりの往復をしておりました。

 左「アマサギの田植え」のサムネイルをクリックしてごらんください。


ハワイのアマサギ

 こちらはハワイのオアフで見かけたアマサギです。アマサギをご存じの方からするとちょっと違和感があることだろうと思います。
 アマサギは学名Bubulcus ibis1種のみでアマサギ属を作ります。しかし亜種が2種(3種?)認められており、これらは"Bubulcus ibis ibis"と"Bubulcus ibis coromandus"いう2亜種となります。"B i ibis"は英名で"Western cattle egret"、ヨーロッパ、アフリカから南北アメリカにいる亜種です。もう一つの"B i coromandus"は"Eastern cattle egret"と言われ、アジアからオセアニアにいるものです。つまり今回のオアフのものはニシアマサギで、日本のものはヒガシアマサギ(日本では単に「アマサギ」ですが海外からみるとヒガシアマサギ」)となります。ニシアマサギは日本のものに比べて赤色が薄目ですね。赤というよりほとんど薄いオレンジでしょうか。オアフのものは頭と胸だけが色づいています(背は飾り羽がほんのりレベル)が、日本のものは頭と胸以外にあご、喉や背中もオレンジ色になり、色も濃いためより派手に見えます。左のオアフの個体は目やクチバシをみると真っ赤になっていて婚姻色であることがわかりますから、これでも一番派手な衣装になったところなのでしょうね。

 左「ハワイのアマサギ」のサムネイルをクリックしてごらんください。



観察データ

場所と回数:九州 1、中国 2、ハワイ・オアフ島 1回。計4回。
 観察場所は基本的に田んぼ、畑です。福山市時代の自宅すぐ裏や近所の田んぼで見かけました。九州で見た場所は佐賀の有明海のすぐ横にあった畑です。不思議と山の中での田んぼや畑、平地含めて川と海では見たことがありません。
 国内での撮影回数は3度とレア的な数になっていますが、福山では車で買い物に行く途中などでたまに見かけることがあって、実際にはもっと出会っています。ただコサギやチュウサギよりは明らかに数が少ないです。関東に来てからも一度だけですが、相模川沿いの田んぼに紅い頭をした白サギをみたので、こちらでもたぶん見られると思います。その時は日帰り旅行で道を急いでいて、すぐに停める場所もない道すがらだったので縁がありませんでした。いつか田植えの季節にバイクででかけてみよう。

観察月と回数:

1月0
2月0
3月0
4月1 〇
5月1 2 〇〇
6月0
7月0
8月1 〇
9月0
10月0
11月0
12月0
計 4 回

 4月はオアフのものなのでデータがちょっと違うかも。日本では夏鳥です。九州から関東までの平地の田んぼ、畑。代掻きが終わった田植えの頃から梅雨時くらいの頃が稲の穂が低いので見やすいと思います。その頃が婚姻色も出るのでコサギとの見分けもし易いですね。サギではチュウサギと同じく夏鳥です。



  (トップ画像 アマサギ 2015/05/16 D7100 Tamron 150-600mm 福山市駅家町周辺にて撮影)

 初出:2015/05/24
 改訂:2015/08/18
 改訂:2018/08/19 観察データを追加
 改訂:2020/05/24 亜種ニシアマサギの静止画を追加、観察データを修正
改訂:2021/08/15 サギ科へのリンクを追加。観察データを更新