ゴイサギ 五位鷺
Goisagi
Nycticorax nycticorax
Black-crowned night heron

ゴイサギ ペリカン目サギ科ゴイサギ属
  一本の白い髪飾りがお洒落な、夜元気になる蒼いサギ

   

福山市での観察


ゴイサギとの出会い、動画について

 福山に住んでいた当時の思い出です。夜遅くなった仕事の帰り道、我が家に近づいた辺りで景色は静まり返った田園風景に変わります。田舎の夜道なもので街灯などは無く、前方の頼りは最早車のヘッドライトだけです。そうして田んぼの側溝沿いに細く曲がりくねった道をそろそろと進んでいると、突然、ヘッドライトに照らされたゴイサギが浮かび上がって、びっくりさせられることがよくありました。もっとも当時の我が家付近の環境ですと、夜はゴイサギだけでなく、マガモやカルガモが道の真ん中を歩いていて、慌ててブレーキ!などということ度々。
 ゴイサギは夜行性のため、夜道で出会うことはあっても逆に陽の下で出会うことはまずありません。当然こんな出会いばかりでは写真に収めるなど不可能で、私にとってゴイサギは長く「近くて遠い幻の鳥」となっておりました。
  2014年6月、朝早くから鳥見にでかけようと車で家を出ますと、裏の田んぼの真ん中付近に、妙に寸詰まりなアオサギが見えました。気になって車を止め、カメラを手に持ってファインダーを覗いて見ますと、頭の後ろに白く伸びた一本の髪飾りがはっきりと見えました。アオサギではありません。ゴイサギです。長く待った明るい時間帯での出会いでしたので、早速シャッターを切り始めたところ、残念ながらすぐに彼(彼女?)は山の方へ向かって飛び去ってしまいました。目も真っ赤だしまるで朝日を浴びて慌てて帰ろうとするドラキュラのようなやつです。

  左「ゴイサギの動画 福山市にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


ホシゴイ ゴイサギの幼鳥

 長く出会えなかった鳥に一度出会うと、今までのすれ違いは一体で何だったのか?というくらいに続けざまに顔を合わすのは世の常です。先の出会いから半月ほど経った夏の昼間、偶然通りすがりの池でゴイサギが複数休んでいるのを見つけました。もしかしたら昼間のねぐらになっている場所かもしれません。何度か同じ池に寄っていると、ある日変な色のサギも見つけました。「これは初見のサギかも!」と記録して家で帰って見ると、初見では無かった。。。上の動画後半に出てくるのは、ぱっと見全く違う色目の鳥ですが、実は同じゴイサギでした。但しまだ幼鳥で、愛称として「ホシゴイ」と呼ばれているそうです。どうやらゴイサギはこの池周辺で繁殖しているようです。ホシゴイは羽の色も違いますが、アップでみると目の色も少し違って、こちらは濃いオレンジ色です。成鳥になると黄色気が抜けて真っ赤な目となります。もっとも幼鳥と言っても既にでかいですが。。。特に足がでかいですね。

  左「ホシゴイ 福山市にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


朝のゴイサギ

 私がゴイサギと初めて出会った際に「寸詰まりのアオサギ」と見えた姿を置いておきます。時間は朝7時過ぎでした。距離にして40~50mくらいだったかな。確かに距離が遠いと裸眼目視で同定するのが微妙な姿だと思います。「疑わしきはしっかり確認せよ」という良い教訓になりました。丁度Tamron 150-600mmを買いたてだったので、こいつが役に立ってくれました。

  左「朝のゴイサギ 福山市にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


夕暮れ時のゴイサギ(カップル?)?

 最後の絵は夕暮れというより日暮れ間近の19時頃に撮ったゴイサギです。ところで、上の絵の日付を見ると丁度一年前のもので、ちょっとびっくりしました。この時期はゴイサギが活発な季節のようですね。
 当時仕事で毎日の帰りが遅かったものの、この日はたまたま平日に定時速攻で家に帰ることができました。あまりないチャンスなので用が済んだあとすぐ近くの川にカメラを持って出かけてみましたところ、結構レアなヒクイナを見つけることができラッキー。その後家に帰る途中、今度はゴイサギに出会うことができました。ラッキー続きです。
 ヒクイナもゴイサギも夜行性の鳥とのことですが、本当に夕方になるとごそごそ出てきて動き始めるのですね。ただ残念なことにこの日は曇り空で、絵には夕陽の赤色が出ませんでした。まあ、普通に薄暗いのも感じ出ていていいかな?

  左「夕暮れ時のゴイサギ(カップル?) 福山市」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


オアフ島の昼間のゴイサギ

 2019年に息子の結婚式でオアフ島へ行きました。早朝着でホテルのチェックインまでに時間があるため、市バスに乗ってCMで有名な「このきなんの木」のある公園に行きました。中に入って散策していると、公園の端っこに小川が流れていて、そこにグレーの大きな鳥が。。アオサギかな?とか思ってよくみると首がない。。。なんと常夏の島の真昼間でゴイサギの登場です。
 見た感じは日本のものとほぼ一緒。写真で見る限りオアフのものはややくちばしが太い気もしますが、これは写りの角度によるものかもしれません。ただ日本では真夏の気温の太陽が降り注ぐ真昼間に芝生の上を歩くゴイサギは見たことがないので、習性としてはかなり違うようにも思われます。
 ハワイは移入種が多いのでこちらも例によってアジア方面からハワイに持ち込まれたものかな?とハワイ当地の図鑑で調べてみたところ、こちらは当地原産種とありました。現地名では”Auku'u”と呼ばれているそうです。ということは似ていても亜種としては違うのかな?と思ってよく調べてみると、日本のものは”Nycticorax nycticorax nycticorax”といってユーラシア大陸やアジアなどで見られる基亜種。オアフで見たこのゴイサギは”N n hoactli”と言って南北アメリカ大陸で見られる亜種なのだとか。ちなみにゴイサギにはもう一亜種があって、そちらは南米アルゼンチンの離島であるフォークランド諸島で見られるものだそうです。ただ日本版Wikipediaなどではこのオアフを含むアメリカ大陸のN n hoactli亜種は記述がなく、基亜種とフォークランドの2亜種しか書かれていませんので、見方によれば日本のものとオアフのものは同じ亜種としてよいのかもしれません。

  左「オアフ島のゴイサギ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。



観察データ

場所と回数:福山市 4、東京都(三宅島) 1、ホノルル 1、計 6 回。川や池、田んぼのなどの水辺で見ます。

観察月と回数:

1月0
2月0
3月0
4月1 〇
5月1 〇
6月2 〇〇
7月1 〇
8月1 〇
9月0
10月0
11月0
12月0
計 6 回

留鳥です。私の記録で見る限り、初夏から夏場までの繁殖時の方が明るい時間帯に観察できる可能性が高い気がします。英語の名前の通り、基本夜行性なので、観察の可能性を上げるには朝・夕の間詰め時に水辺を探すのがよいと思います。



 ゴイサギの名前には醍醐天皇から正五位の位を授けられた鷺との由来があるそうです。五位の位といいますと、今の社会でなら大学の名誉教授クラスや、社会の発展に大きな寄与を残した企業経営者とかに与えられる位なのだだそうで、例えば有名な野口英世先生なんかがこれをもらっているのだとか。ゴイサギって偉いんだなぁとちょっと見方が変わりました。ドラキュラ扱いしてごめんなさい。

  (トップ画像 ゴイサギ 2014/07/05 福山市にて撮影)

 初出:2014/09/02
 改訂:2015/06/16
改訂:2021/08/15 オアフのゴイサギを追加。サギ科へのリンクを追加。観察データを追加