コハクチョウ 小白鳥
Kohakuchou
Cygnus columbianus
Tundra swan

コハクチョウ カモ目カモ科
 真っ白で優雅な水鳥
 

   

亜種コハクチョウ、亜種アメリカコハクチョウについて


 コハクチョウは冬の日本に現れる真っ白で大柄な水鳥です。コハクチョウと名付けられたとおり、同属のオオハクチョウよりは少し小さいものの、それでも翼を広げると2mにもなるカモ科の大きな鳥です。
 関東より東北側の地域では各地で見られますが、中部以西ではおよそ山間地から日本海側で見られ、西端は島根県の宍道湖あたりになっています。ちなみに私が以前住んでいた瀬戸内沿いではまぐれもなくて、一度も見られませんでした。




「亜種コハクチョウ C.c.bewickii 夜明け」 クリックで拡大します。

亜種コハクチョウ 夜明け

滋賀県琵琶湖湖北
1024×682 px
2020/11/22 06:44
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 まだ陽が昇り切らない薄暗い時間帯。コハクチョウやヒシクイたちもまだ塒の浅瀬で飛び立ちの準備中です。琵琶湖は水鳥の楽園で、一部海ワシなども飛来することで有名ですが、行く度に新しい発見があって大好きな野鳥観察地です。近くには水鳥観察センターや道の駅もあり、訪れる人たちへの受け入れ施設もばっちりなため、初心者でも安心して出かけられるところも良いですね。



「亜種コハクチョウ 朝焼け」 クリックで拡大します。

亜種コハクチョウ 朝焼け

鳥取県米子市
1024×682 px
2014/11/23 7:13
Nikon D200 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 2014年のNikonカレンダーに「朝霧で赤く染まった沼に休むハクチョウの群れの絵」がありました。当月、目の前に飾ってあったこの写真を見ながら「自分もこんな感じの(雰囲気一杯な)絵が撮ってみたい!」と思ったものです。そんなこともあって、冬が近づいた11月末にコハクチョウの飛来地として有名な米子の水鳥公園に出かけてみました。
 同じ年の2月、ここには既に一度寄らせてもらったことがあったので、およそ場所の撮影環境は事前にわかっていました。あとは時間と天候を読んで出かけるだけです。瀬戸内から日本海への遠征であるため、天候に関してはぶっつけ要素も大きいのですが、とりあえず夜中に福山の家を出て夜明け前に現地に着き、準備万端の状態で日の出を待ちました。
 結果的にほぼ思った通りの絵が撮れました。というか、当時の自分の野鳥撮影キャリアを考えれば奇跡の一枚と言えるかもしれません。もちろん世界各国から選りすぐりで選ばれたNikonカレンダーの絵とは比べるべくもなく、世に自慢できる程の出来ではありませんが、とりあえず自分でイメージした「赤い空気の中のハクチョウの絵」が撮れたという結果には、非常に満足のいくものでした。10年経った今も思い出に残るお気に入りの一枚です。



「亜種コハクチョウ 揉め事」 クリックで拡大します。

亜種コハクチョウ 揉め事

千葉県香取郡
1280×853 px
2024/02/17 07:15
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 2月くらいになるとカモの仲間にとっては恋の季節の始まりです。このときもそのようなちょっとした恋のさや当てだったのかもしれません。



「亜種アメリカコハクチョウ C.c columbianus」 クリックで拡大します。

亜種アメリカコハクチョウ

千葉県香取郡
1280×853 px
2024/02/17 07:13
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 亜種アメリカコハクチョウは見ての通り、くちばしがほぼ黒一色です。鼻先に少しだけ黄色い地肌が見えますが、中には全部真っ黒な個体もいるらしいです。ちなみに和名亜種コハクチョウとは両者ひっくるめて Cygnus columbianus と呼ばれる種=「コハクチョウ」となっています。このうち基亜種と呼ばれる最も代表的な亜種は、こちらの亜種アメリカコハクチョウの方なのだそうです。コハクチョウという種の学名もワシントン州に流れるコロンビア川から来ているので、「コハクチョウ」は世界的にみれば「アメリカ大陸のハクチョウ」なイメージなのかもしれません。



「亜種コハクチョウの飛び立ち」 クリックで拡大します。

亜種コハクチョウの飛び立ち

長野県安曇野市
1024×682 px
2018/2/11 08:09
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 長野県のど真ん中に流れる、いかにも冷たそうな川で見たコハクチョウです。身体が大きい鳥なので、飛び立つには助走が必要です。近くで観察していると、まるで飛行場から飛び立つジェット機を見るかのような迫力があります。



「亜種コハクチョウの飛翔 成鳥」 クリックで拡大します。

亜種コハクチョウの飛翔 成鳥

千葉県香取郡
1280×853 px
2024/02/17 08:14
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 コハクチョウの飛翔。アップな絵です。真っ白なので成鳥です。ちなみにハクチョウ類は雌雄同色なので性別はよくわかりません。
 コハクチョウが頭上近くに飛んでくると、「ブイブイ」というような連続的な羽音が聞こえてきます。割と低めな振動音のような感じの音です。「たまたまかな?」と思いましたが、その後何羽も同じような音が聞こえてきたので、おそらくコハクチョウの飛翔ではよく聞こえる音なのだろうと思われます。初めて聞くタイプの羽音でしたので、印象に残っています。


「亜種コハクチョウの飛翔 若鳥」 クリックで拡大します。

亜種コハクチョウの飛翔 若鳥

千葉県香取郡
1280×853 px
2024/02/17 07:25
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 こちらはコハクチョウの若鳥の飛翔。生まれた年の11月くらいはもっと灰色な姿をしています。この日はたくさんのコハクチョウが池で休んでいましたが、自分の知る全身灰色の明らかな幼鳥は見られませんで、この絵のように翼や腹は白いものの、首から頭がまだやや灰色を残していて、クチバシの黄色くなる部分がピンク色をした個体が多く見られました。年を越して春も近くなるとこのように若鳥っぽい感じに成鳥したということなのでしょうか。



「コハクチョウの羽根」 クリックで拡大します。

コハクチョウの羽根

千葉県香取郡で拾得
1280×853 px
2024/02/17
Nikon D7100 Mode A
Nion DX Zoom 18-55mm/F3.5-5.6G II ED

 真ん中左の一番大きい羽根はおそらく三次風切りあたりではないかと思われます。他は皆小さめ且つ、付け根のホワホワした部分の割合が広いので、腹や脇などの羽根かと思います。



 観察データ

場所と回数:宍道湖周辺 1、米子水鳥公園 3、琵琶湖湖北 5、長野県安曇野市 1、宮城県北部 2、千葉県香取郡 1、 計13回
 宮城あたりまで行くとオオハクチョウの方がずっと多く見られるようになりますが、関東より西では逆にコハクチョウが大勢を占める感じです。

 コハクチョウの観察については、以下を参考にいただければ、出会いの効率が上がると思いますので、参考になさってください。

 コハクチョウの越冬地での生活は、
・夜は浅瀬で休み
・朝日が昇ってしばらくすると餌場の田んぼに飛んでいき
・夕暮れにまた池などの水辺(ねぐら)に戻ってくる
 を繰り返す毎日です。

 ですから、もしきれいなハクチョウを写真に残したいなら、夜明けから1.5時間程度が勝負の時間となります。ベストシーズンの11月後半~2月中旬くらいだと、およそ6:30~8:00くらいまででしょうか。いくら有名なハクチョウの飛来地(湖沼)に行っても、お昼どきなどに着いた場合は、残念ながら水面はもぬけの殻です。しかたなく周囲の田んぼに移動して姿を見に行くと、お口が泥だらけなハクチョウか、首を畳んで背中に顔を隠してお休みしているハクチョウしか見られません。(初めてハクチョウ見物に出かけたときの私の経験です)なのでハクチョウ観察は早起きして早朝にいくに限ります。

観察月と回数:

1月0
2月4 〇〇〇〇
3月0
4月0
5月0
6月0
7月0
8月0
9月0
10月0
11月6 〇〇〇〇〇〇
12月3 〇〇〇
計13回

 冬の渡り鳥です。私の記録では11月19日~2月22日の間で見ています。例年初飛来は10月からで割と早目にやってくるイメージです。帰りの方は2月に入ると徐々に北国へ向かって飛び立ち始めるようですが、皆で一気にまとめて戻るのではなく、群れ単位で徐々に出発し、移動距離も割と寄り道しながらゆっくりめで移動するようです。なので青森辺りなら3月下旬まで、北海道なら4月でもまだ見られると思います。




 (トップ画像 コハクチョウ 2018/2/11 D500 500mm/F4 長野県安曇野市)

 初出:2014/12/02
 改訂:2018/2/11 トップ絵と飛翔絵を差し替え
 改訂:2024/2/21 全面見直し