コクガン 黒雁
Kokugan
Branta bernicla
Brent goose
 
コクガン カモ目カモ科 天然記念物 VU
 首に蝶ネクタイを結んだ
 内湾のアマモ場にやってくる黒いガン
 

   

宮城県南三陸町での観察について
 


コクガンの観察と動画
 
 2019年12月22日、毎年恒例の宮城伊豆沼参りは今回初めて2泊3日と時間を増やし、初日は登米市でカリガネ探し、二日目は志津川湾に移動してコクガン探しをすることとしました。志津川方面へ行くのは今回が初めてです。
 南三陸町の志津川湾周辺は
1.2011年の大震災で甚大な津波被害を受けた場所である
2.地域の復興の象徴としてできたサンサン商店街では、美味しい海鮮丼がいただけるらしい
3.志津川湾にはコクガンが数百羽飛来して冬を越すらしい
 という事前情報を持ってでかけました。
 伊豆沼から志津川湾への道のりは登米を通って無料の三陸道に入り東へ40kmほど。時間にして一時間もかかりません。高速を降りて下道に入りしばらくすると、美しい青色をした静かな湾が見えてきます。しかし、先にいやでも先に目に入ってくるのは、津波で被害を受けた無機質な建物の遺構でした。かなり高い鉄筋の建物が屋上まで津波に浸かったのを見て取れ、桁違いの津波だったことがわかります。港周辺も護岸工事がなされていますが、完成にはまだまだのようです。一方牙をむいた海はいたっておだやかで、海を覗いてみるとヒドリガモやオオバンがゆったりと浮かんでいます。一羽ながらもホオジロガモの姿も見えます。ただ目的のコクガンは見えません。さら湾沿いに車を進めながら、そこかしこにある車止めで止まっては双眼鏡で眼下の海を観察する、ということを繰り返しておりますと、やがて岸辺にカモより大きめの水鳥が休んでいる姿を見つけました。10羽たらずですが、確かに図鑑で調べた通りの姿をしたコクガンです。しばらく撮影を続けていると、何かに驚いたのか急に飛び立って少し遠くへ行ってしまったので、そこはあきらめて別の場所に移動することとしました。近年は数百の数が飛来しているとの情報でしたから、探せばまだまだいるはずです。また海沿いに走っておりますと、割と近い場所で次の群れを見つけました。小群が2つほど見えます。先ほどより距離はありますがその分逃げる様子もなく、アマモを食んでいる光景や、オオバンとアマモの取り合いをしている様子を楽しむことができました。足元の海はとても澄んでいて非常にきれいで穏やかな海でした。
 
 コクガンの動画です。全て志津川湾で撮った絵です。左「コクガンの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 

コクガン
 
 コクガンはガンの仲間でもコクガン属に属します。
マガン属: マガン、ヒシクイ、カリガネ、ハクガンなど
コクガン属: コクガン、シジュウカラガン、ハワイガンなど
 同じコクガン属の中でもコクガンだけは海で棲息するガンなのでちょっと特殊です。というかガンの仲間全ての中でコクガンだけが海に棲む鳥です。マガンの仲間は基本植物食なのは皆同じですが、コクガンだけは田んぼでお食事せず、浅瀬で海草をいただくこととなります。ちなみにアマモという海草が大好きなようで、この海草は浅い場所にゆらゆらと生えるイネ科の植物です。幅1~2cmほどの細長くて平たい緑色した海藻です。私が以前済んでいた瀬戸内海でも多く生えていて、投げ釣りをすると大量に釣れたりしてやっかいな海草でした。しかしこのような海の草原は小魚やイカタコなどの産卵場だったり、隠れ家だったりして、海の生き物にとっては無くてはならない住処となります。この日見るコクガンやオオバンは潜らずに水面をつつくようにしてアマモを採って食っていたので、きっと志津川湾周辺は遠浅の海なのだろうなと思います。アマモはきれいな海にしか生えないらしいので、コクガンのためにもお魚のためにもアマモ場を大切にしたいところです。一方でこの地域は津波被害のあと大規模な護岸工事が進められています。岸辺がコンクリート化されて川の流れ込みや岸辺の潮流が変わると干潟や砂浜が消滅してしまう可能性があるので、コクガンの今後が少し心配になりました。両者が存続しあえる新しい技術の護岸工事などあれば良いな、などと思いつつ科学技術の進歩に期待しましょう。
 
 左「コクガン」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 

コクガンの小群
 
 この日見たコクガンは大きく分けて2か所で観察でき、数は合わせて30羽ほどでした。どの群れも10羽程度の小さな群れで固まっていました。翌日同じ宮城県の仙台市の東側にある蒲生干潟でもコクガンを観察したところ、こちらは29羽が一か所に集まっていました。ただこちらは蒲生干潟といってもコクガンがいるのはその横にある河口ですから、とても狭い場所です。一方志津川湾は棲息に適した海がもの凄く広いので、群れも自然とファミリー単位で散らばりやすいのかなと思いました。そもそも餌のアマモは凄く豊富なようでしたし、あまり敵もいないので大きく群れて固まる必要もないのかもしれないなとか想像しています。
 
 左「コクガンの小群」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。
 
コクガンの飛翔
 
 今回コクガンの飛翔を撮るチャンスは2度ほどありました。しかし、最近D500のオートフォーカスがバックに抜けることが多くて、どうもピントが来ません。設定が悪いのかも。そんなこんなでお尻を撮った絵しか残りませんでした。次回飛びものを撮りに行く時までには腕を含めて見直しをしなくっちゃ。
 そのお尻の黒白羽模様は同属のシジュウカラガンにそっくりですし、もっと言えばマガンにもヒシクイにも似ています。ハクガンは白一色ですが、他のガン類は共通して黒地に真ん中に太くて白いV字ラインが入る模様になっています。特に着地や着水のときは尾羽が広がるので、このラインはとても目立ちます。
 
 左「コクガンの飛翔」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。

 観察データ

場所と回数:志津川湾1、蒲生干潟1、いずれも宮城県の海辺都合2回。東北から北海道の内湾や河口で見られるようです。種全体で7~8000羽程度しかいないのでツル並みの希少度ですが、内湾にいるためそこにさえ行けば観察は容易です。

観察月と回数:
 1月0
 2月0
 3月0
 4月0
 5月0
 6月0
 7月0
 8月0
 9月0
10月0
11月0
12月2 〇〇
 志津川湾には毎年11月頃からおよそ300羽程度のコクガンが飛来するそうです。シジュウカラガンのように飛来数が段々と増えていけば良いですね。


 
 
 (トップ画像 コクガン 2016/11/20 D500 150-600mm/F5.6-6.3 宮城県南三陸町にて撮影)
   
 初出:2019/12/25