ウチヤマセンニュウ 内山仙入
Uchiyamasennyu
Locustella pleskei
Styan's grasshopper-warbler

ウチヤマセンニュウ スズメ目センニュウ科 絶滅危惧ⅠB類 EN
 海沿いの草原で歌う
 オオヨシキリ風の姿をした小鳥

   



ウチヤマセンニュウについて

 2021年5月、あこがれの島、伊豆諸島の三宅島に到着しました。関東に来てからずっと行きたくて仕方なかった南の離島です。周囲を外洋で隔離された島だけあって、本土では見られない野鳥がたくさんいると聞かされ、わくわくしながらやってきました。
 金曜夜に東京からフェリーに乗船し、翌土曜の早朝、島に到着。この日は一日鳥見と島の観光をして島の民宿で一泊。翌日曜は早朝に最後の観察を済ませ、午前中には島を出港。明るい間はフェリーのデッキから海鳥観察をしつつ、晩には東京へ戻る。といった、船中1泊、島で1泊の2泊3日の行程です。土日の休みのみで行って帰れるのが魅力ですね。なお島内はバスも出ていますが、レンタカーを事前に予約しておくのが自由で動きやすいと思います。

 三宅島には伊豆諸島特有の種がいくつかいます。もっとも代表的な鳥は島のマスコットにもなっているアカコッコです。一方地味なため知名度では落ちますが、ここで紹介するウチヤマセンニュウも本土ではめったに見られない目玉の鳥の一つです。
 ウチヤマセンニュウは夏鳥で、繁殖のために日本の島嶼部へ飛来します。鳥の中でも珍しい繁殖環境を持っていて、海に近い草原を繁殖地とするそうです。そこで私も、今回はそのような海辺の場所でウチヤマセンニュウを探してみることにしました。
 聞けば、西暦2000年以前、島のシンボルでもある雄山が噴火するまでは、山頂にある八丁平と呼ばれる火口が草原になっていて、ここがウチヤマセンニュウの一番の繁殖地になっていたそうです。なので、必ずしも「海のすぐそばでないと繁殖しない」というわけではなさそうです。しかし八丁平は噴火から時間が経って今はガスも収まってきたものの、まだ火口部は立ち入り禁止区域指定が解かれていません(2021年当時)。ウチヤマセンニュウたちもまだ危険を感じているのか、現状は山の麓である海岸部のみで繁殖をするようになっているとのこと。その分、場所が島の外周にぼやけているので、私のような一見さんにとって探索は少々難しいものとなっています。
 ウチヤマセンニュウは以上のような(無防備な)場所で営巣するので、外敵のいない小さめの島でしか繁殖しない(できない)とのこと。仲間のオオセッカ(後述)などのように湿地の葦原であればまだ本土でも繁殖可能な場所が残されていますが、ただの草原で繁殖するにはタヌキやイタチなどの捕食者がいない孤立した島であることが条件になるようです。





「ウチヤマセンニュウ さえずりの姿 1、2」 クリックで拡大します。

ウチヤマセンニュウ さえずりの姿 1


ウチヤマセンニュウ さえずりの姿 2

東京都三宅島
1024×682 px
2021/05/15,16
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 さえずりの絵その1:
 さて、このウチヤマセンニュウですが、姿もサイズもおよそオオヨシキリな感じです。ただ科とみると、ウチヤマセンニュウはセンニュウ科、オオヨシキリはヨシキリ科で、系統ではお隣さんのグループのようです。私の所持する30年ほど前の図鑑では「ウグイス-センニュウ-ヨシキリ-ムシクイ」まで全て「ヒタキ科ウグイス亜科」で一まとめになっていました。これらは確かに皆が皆よく似た姿ですね。また古い図鑑ではウチヤマセンニュウはシマセンニュウの亜種として紹介されていて、名前も「ウチヤマシマセンニュウ」と紹介されています。ちなみに現在の図鑑で近いところを探してみると、私の見てきた種では、オオセッカがセンニュウ科で一番近い種となります。先に「姿はおよそオオヨシキリ」と言いましたが、さえずりの方は同じ科のオオセッカとよく似ています。またオオセッカは空に向かってぐるりと大きな輪を描いて飛びながらさえずりをするわけですが、このウチヤマセンニュウも同じように草原から飛び出しつつさえずりを行います。一方、オオヨシキリはそのような行動はしません。ですので、ウチヤマセンニュウを探すときはオオセッカ探しと同じように、「繁殖期に観察に出かけ、草原から飛び出しするところを見つける」のがポイントとなります。
 このようにして、私は当地でなんとかウチヤマセンニュウと出会うことができました。しかし次にまたまた難題が現れることになります。姿をカメラに収めようとすると、これがとても難しいのです。オオセッカの観察時も毎度苦労していますが、
 1.飛び出ししても、あっという間に降下して草原に飛び込んでしまう。
 2.いつ飛び出すかわからないので、いざ出てきたときにレンズを振ってもなかなか飛翔に追いつかない。レンズで追いやすいようにしようと思うと、少し距離をおくことになり、写りが米粒になる。
 3.草藪の中で鳴いているのは分かっても、まず草藪から姿を現すことはない。見えても当たり前ながら枝被り、草被りばかり。
 ここから先は我慢と運です。私は到着日の大半をアカコッコ探しで山(森)の方に行っていたので、草原のある海岸方面に着いたのは午後も遅い時間でした。幸い日の長い季節でしたので、陽が暮れるぎりぎりまで粘って、奇跡的に姿を見せてくれた個体と出会うことができました。
 
 さえずりの絵その2:
 1枚目の絵は島に着いた当日夕方の記録でした。翌朝夜明け頃を狙ってもう一度同じ場所に出かけてみましたところ、昨日とは打って変わってさえずりが四方から聞こえてきて、とてもにぎやかです。姿を見かけたあたりでじっと座って待っていたところ、やがて枝の上に出てきてさえずりしてくれる個体と出会うことができました。



「ウチヤマセンニュウ 飛翔」 クリックで拡大します。

ウチヤマセンニュウ 飛翔

東京都三宅島
1024×682 px
2021/05/15,16
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 毎度の飛翔絵ならぬ飛び出し絵です。見た目はやはりオオヨシキリみたいな感じです。ページトップの絵を見てもらうと分かりやすいですが、藪の中を潜って移動する鳥なため、通行の邪魔にならないように風切り羽が短いです。この手の羽姿をしている鳥は短距離をささっと移動するタイプが多いですね。



「ウチヤマセンニュウ 藪の中」 クリックで拡大します。

ウチヤマセンニュウ 藪の中

東京都三宅島
1024×682 px
2021/05/15,16
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 こちらの絵は「人にお見せする絵としてはどうよ?」という代物ですが、実情をお見せするのには丁度良いので紹介させていただくこととしました。
 ウチヤマセンニュウは繁殖地(草っぱら)を探してそこに行けば、昼間でも声はそれなりに聞こえてきます。ただ、声はすれども姿はさっぱり見えません。ウグイスみたいなものですね。とはいえ、せっかく三宅島まで来たのですから、何としてもウチヤマセンニュウの姿を一目見たい!と思うのは人情というものです。で、一生懸命藪の中を探してやっと姿を発見!というのがこの絵の場面です。
 先に全身が写った絵を紹介しているので、後からこの絵を見ても何のことかと思われるでしょうけれど、苦労した後の記録としては捨てられない一枚だったりします。(お粗末)




観察データ

場所と回数:東京都三宅島 2、計2回。繁殖のために島嶼にしか飛来しない鳥なため、観察するにはそこまで行くしかありません。九州、近畿、伊豆諸島などの限られた島に飛来しているようです。なお三宅島で観察する場合ですが、場所を知らない初見の方は、初日は先に場所の当たりを付けておき、一泊して翌日出向前の早朝(できれば夜明けと同時の頃)に本番チャレンジする行程をお勧めします。宿の朝食の前にレンタカーでひとっ走りして、ささっと撮って朝食に戻る感じですね。到着当日は他にもたくさん見たい種がいるはずなので、ウチヤマセンニュウにこだわってしまって、出の悪い(午後の)時間に頑張るのは(特に三宅島初回の場合は)時間がもったいないと思います。

観察月と回数:

1月0
2月0
3月0
4月0
5月2 〇〇
6月0
7月0
8月0
9月0
10月0
11月0
12月0
計2回

 夏鳥なので4月後半~6月くらいがよいようです。

 
 (トップ画像 ウチヤマセンニュウ 2021/05/16 D500 500mm/F4.0 東京都三宅島)
 
 初出:2022/01/22
 全面改訂:2024/03/30
 改訂:2024/04/25 文章の見直し