ホオジロ 頬白
Hohjiro
Emberiza cioides
Meadow Bunting

ホオジロ スズメ目ホオジロ科
 姿は地味だが初夏の囀りが美しい
 里山の小鳥

   

ホオジロの紹介



 ホオジロは日本を代表する里山の小鳥です。性格的にはかなり慎重派で、シジュウカラやメジロのように住宅地にまでは入り込まないが、ぎりぎり山の裾までは降りてくる、みたいな、人とは絶妙な距離感を保った小鳥だと思います。分かりやすい話としては、たとえば野鳥公園の餌台を見に行くと、シジュウカラ、ヤマガラ、メジロ、カワラヒワなどはいくらでもやってきますがホオジロはまず見ることがありません。似たような鳥としては、ウグイスなども近い感じでしょうか。
 見た目はスズメみたいで、茶色い地味な姿です。ただスズメと比べると尾羽が少し長くて、よりスマートな姿をしています。また飛ぶときに尾羽を広げると、両端に白い帯が出て目立ち、これでスズメではないと見分けがつきます。
 ホオジロは留鳥で一年中観察することが可能ですが、特に初夏には長めの美しいさえずりを聞かせてくれます。鳴くのは ♂ のみで、大抵は木々の一番高い場所あたりで逃げることなく、天を向いて高らかにさえずりを続けますから、見つけるのもとても容易です。地域によって節回しが変化するので、普段行くことのない地域に出かけても、「またホオジロかー!」とは言わず、是非複雑なさえずりを楽しんでいただきたいと思います。そういう意味では他の小鳥よりは動画向きなのかもしれません。





「ホオジロ ♂ 春」 クリックで拡大します。

ホオジロ ♂ 春

神奈川県清川村
1024×682 px
2017/05/05
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E
FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3


 さえずる ♂ です。ホオジロはかなり気合を入れて(?)上を向いてさえずります。色んな小鳥のさえずりを見てきていますが、ここまで背筋よく天を仰ぐ姿勢で鳴く小鳥を、私は他に知りません。
 



「ホオジロ 若 夏」 クリックで拡大します。

ホオジロ 若 夏

山梨県南都留郡
1024×682 px
2019/08/01
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E
FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3


 ♂ の若鳥です。夏の水飲み場で観察しているときの記録です。水浴の後で羽が濡れています。若なので頬の白い部分がまだ小さいですね。



「ホオジロ ♂ 夏山」 クリックで拡大します。

ホオジロ ♂ 夏山

滋賀県米原市
1024×682 px
2021/07/22
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E
FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3


 真夏の絵ですが、標高1,200mを越える亜高山での記録のため、涼し気で少し秋っぽさも感じるようなお気に入りの一枚になりました。



「ホオジロ ♂ 秋」 クリックで拡大します。

ホオジロ ♂ 秋

広島県福山市
1024×682 px
2009/10/31
Nikon D200 Mode A
Nion AiAF ED 300mm/F4s


 D200とオールドサンヨンで撮ったかなり古い記録です。15年近く経ちますが、未だにお気に入りの一枚です。



「ホオジロ ♂ 冬1、2」 クリックで拡大します。

ホオジロ ♂ 冬 1



ホオジロ ♂ 冬 2

茨城県稲敷市
1.2020/02/01
2.2024/01/08
1024×682 px
Nikon D500 Mode A
1.AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
  AF-S TC-14E III TC14E3
2.AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 福山にいた頃は、冬と言えば山に行くのが週末の楽しみになっていました。しかし、横浜に来てからは茨城の葦原に行くのが一番の楽しみになりました。この絵のような何気ない葦原の風景が何故か心に残り、「また見たい、また行きたい」と思わされるのです。



「ホオジロ ♀ 冬 雪の日」 クリックで拡大します。

ホオジロ ♀ 冬 雪の日

広島県福山市
1024×682 px
2020/02/01
広島県福山市
1024×682 px
2009/10/31
Nikon D200 Mode A
Nion AiAF ED 300mm/F4s


 ♂ の絵が続いたので、♀ も紹介しておきましょう。
 こちらは福山時代、雪が降った翌日に河川敷に観察に行ったときの記録です。雪で他に食べ物がみつからないのか、倒れたイネ科の雑草に残った実を脱穀するように、横に滑らせてついばんでいました。



「ホオジロ ♀ 春の訪れ」 クリックで拡大します。

ホオジロ ♀ 春の訪れ

茨城県稲敷市
1024×682 px
2022/03/12
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 まだ冬枯れの景色ではありますが、実際は春の兆しが感じられる3月初旬の記録です。私は冬の葦原が好きなので、毎年この季節になると「また一年が終わってしまったなぁ」などと寂しさを感じてしまいます。



「ホオジロ ♂ 冬のカップル」 クリックで拡大します。

ホオジロ ♂  冬のカップル


「ホオジロ ♀ 冬のカップル」 クリックで拡大します。

ホオジロ ♀  冬のカップル

神奈川県相模原市
1024×682 px
2020/02/01
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E
FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3


 最後は ♂ ♀ のアップ絵を紹介して終わりとします。この絵は500mmF4レンズを買ってから勇んでフィールドに出かけた日の記録です。残念ながら目ぼしい鳥には振られたものの、最後にこのホオジロたちが慰めに出てきてくれたという絵には見えないエピソードがあります。家に帰ってこの画像を見つめ、「やはりゴーヨンは絵の抜けがいい!」と感激したものです。




観察データ

場所と回数:九州 4、四国 1、中国地方 92、近畿 3、中部 2、甲信越 30、関東 28、東北地方 3、北海道 1、計164回。九州から北海道まで、山、河原、芦原、海辺の草地など、市街地以外ではほぼ観察しています。(現在私の中では記録数No.1の鳥だと思います)
 あらためて観察地を眺めていくと、中国地方や甲信越地方では本当によく見かけるものの、関東では中心部ではまず見かけず、西は丹沢、北東は利根川沿い、東は九十九里浜近くなど周辺部に行かないと出会いがない記録になっています。特に以前住んでいた福山市近辺では出会い数に関してチャンピオンクラスの小鳥でした。横浜に移動してきてからぐんと出会いが減ったことに対しては、とても寂しいと感じています。(福山市ふれ愛ランドだけで50回の記録が残っています。行けば季節を問わず毎回必ず出会える感じでしたね。)

観察月と回数:
1月25 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
2月22 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
3月9  〇〇〇〇〇〇〇〇〇
4月8  〇〇〇〇〇〇〇〇
5月21 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
6月9  〇〇〇〇〇〇〇〇〇
7月14 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
8月12 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
9月7  〇〇〇〇〇〇〇
10月10 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
11月10 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
12月17 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
計164回

奄美/沖縄などの南の島や冬の北海道には行ったことがないのでわかりませんが、それ以外、九州以北・北海道以南ならどこでも一年中みられる留鳥だと思います。そして、お勧めの季節は断然初夏です!
 上の星取表の5月をみていただければ、その数が前後と比べて抜けて多いのに気づかれると思います。♂ に限りますが、5月はさえずりが一番盛んな時期なので、観察数も自然と増えるのですね。とにかく上品なさえずりが周囲によく響きますし、木の天辺で鳴いてくれるので見つけるのも簡単です。一方 ♀ に関しては冬の方が見つけやすいと思います。
 田舎のやや丈の高い草原や、山際の開けた土地などでよく見かけます。



 (トップ画像 ホオジロ 2014/01/03 笠岡干拓周辺にて撮影)
 自身のホオジロの記録を今一度見つめ直すと、地味な鳥こそ絵に季節感を浮かび上がらせてくれるのかな、と思えます。季節の変わり目で鳥がとんと見つからないでも、当たり前のように現れて私の相手をしてくれるホオジロに、あらためて感謝の次第。

 初出:2014/09/30
 改訂:2017/02/08 ♀の画像を差し替え
 改訂:2019/08/18 動画を更新
 改訂:2021/07/24 夏山の♂の絵を追加、観察データの追加
 改訂:2022/03/13 ♀の画像を差し替え、観察データの追加
 全面改訂:2023/03/20 全面書き直し
 改訂:2024/01/09 冬の ♂ 画像を追加