クロジ 黒鵐
Kuroji
Emberiza variabilis
Grey Bunting

クロジ スズメ目ホオジロ科
 森の暗がりに潜む
 蒼いホオジロ

   

山口県、神奈川県横浜市での観察


クロジの動画

 2014年の3月、福山市在住時代に勤めていた会社の日帰り社員旅行で、山口県岩国市の錦帯橋近辺に行きました。その日の昼ごはん(宴席)は、玖珂町にあって、かの地では結構有名な「いろり山賊」というお店で行われました。ここは国道2号線が山の中に入ったところで突然現れる昔ながらの佇まいをした炭火焼きの串料理が有名なお店です。道を走っていると突然炭火焼きの凄くいい匂いが漂って来るので、誰もが気づき、通り過ぎてからもとても気になるお店です。炭火焼き以外でももの凄く大きな山賊おにぎりもあって、これ目当てに訪れる人も多いと聞きます。
 ご飯が終わって少し自由時間がありました。私はお店の横の森が気になり、広い庭の端っこへ移動。すると少し大きめの小鳥が藪の中に見えました。鞄に入れておいたV1にサンヨンを取り付けて覗いてみますと、見たことがない小鳥です。色がやや濃い目の灰色。クチバシの形からしてホオジロ系なのでおそらくこれはクロジでしょう。ホームタウンの福山市ふれ愛ランドでは何度も観察のチャンスを逸していたとても会いたかった小鳥です。ラッキー。しかしチャンスは一瞬で、この日は証拠レベルの絵しか残すことができませんでした。(弊webの「く」のメニュー内で長年サムネイルで紹介していた絵がその時の絵でした)
 ふれ愛ランドでは、知り合いの鳥見の方から、「この間そこでクロジを見たよ」という情報を何度かもらっていました。しかし私が訪れるといつもそこにはもういません。そんな空振りが続くまま、出会いは叶わず、私は横浜に引っ越すこととなりました。時は進み、2019年の3月、初めての出会いからは既に5年の月日が経っています。近頃は近場の公園ではあまり良い出会いが見込めないと、遠出ばかりしています。しかし正直なところ遠出もあまり効率がよいとは言えません。空振り続きの連続です。そんなこともあり、久しぶりに近場の公園に行ってみることにしました。なお、バイクで行くので、ゴーヨンを担いで行くには少しリスクもあり、久々にTamron A011を持ち出しました。現場に着いて公園の池でカワセミさんカップルの微笑ましい給餌など観察していましたところ、常連の方からなんとクロジがいると教えてもらうことができました。教わった場所に行って待つこと数分、本当にクロジが出てきたではありませんか。しかも距離にして10mもないくらいで観察できます。クロジといえば、藪に引っ込んで中々観察させてもらえない鳥、との評価が一般的です。しかしここのクロジはとても気前がよい。おかげさまでじっくり観察と撮影を行うことができました。

 動画を置いておきます。最初は♂、次の茶色いのが♀、三番目が♂の若鳥です。以上は3月に横浜市緑区の公園で撮ったもの。クロジの♂くんはしっかり観察すると、思っていた以上にきれいな小鳥でした。出会いに感謝。教えていただいた公園の常連さんたちに感謝。場面が変わって「フィーチッチ」とさえずるのは7月に志賀高原で撮った♂です。動画で一度だけのさえずりですが、当地では結構な頻度で繰り返しさえずっていました。他のホオジロ類の複雑なさえずりと違って、至ってシンプルなさえずりですね。

 左「クロジの動画 横浜市緑区の里山公園にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。ファイルは26Mbありますので、ダウンロード環境にご注意ください。


クロジ♂

 クロジは名の通り黒っぽい色をしたホオジロ科の小鳥です。漢字で書けば黒鵐となります。ホオジロ科は総じて茶色系の色目をした種が多いです。例えばカシラダカ、ミヤマホオジロ、ホオアカなどなど。そこで全体が黒っぽいクロジは少々異質な存在となります。ちなみに英語名はGrey Buntingですから、「灰色のホオジロ」的な名前です。果たして黒なのか灰色なのか。私的には蒼いホオジロに見えました。♂くんの色は青みの強い灰色です。というか、灰色にくすんだ青色と言った方が正しいかもしれません。先人がこの鳥を「黒い」と見たのは、たぶんこの鳥が藪の中、暗いところにいることが多いので、より黒っぽく見えたのではないかな、などと思いました。

 ここでは先に横浜で撮った絵を飾っていましたが、山梨で羽がより蒼い個体を撮れたので差し替えすることとしました。左「クロジ♂ 柳沢峠にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


クロジ♀

 こちらは♀さんです。ぱっと見はアオジの♀さんに似ていますね。♂くんは特徴的な色目ですが、♀さんはいつものホオジロ系の地味な♀さんでした。

 左「クロジ♀ 横浜市緑区の里山公園にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


クロジ♂の若鳥

 最後は♂の若鳥です。背中の茶色い部分が多く残っています。♂は成鳥になればなるほど茶色が抜けて青みが買った灰色になっていくのだとか。クロジはこの後春を迎えると北の地方に戻っていきます。つまり生まれ故郷は横浜ではありません。この日見た成鳥♂♀と若鳥はもしかして親子で渡って来た親子だったのでしょうか。それともたまたま一緒になった他人(鳥?)だったのでしょうか。どちらにしろ、来年もっと青くなってここにまた戻ってきてほしいものです。

 左「クロジ♂ 若鳥 横浜市緑区の里山公園にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


観察データ

場所と回数:山口県 1、長野県 2、神奈川県 1、都合4回。
 薄暗いような森の中で見かけています。木の茂みの影になったような場所にいるので、黒っぽい色もあって見つけにくい小鳥だと思います。
 神奈川では横浜市内の公園で見ているので、思ったより近くに潜んでいるのかもしれません。

観察月と回数:

1月 0
2月 0
3月 2 〇〇
4月 1 〇
5月 0
6月 0
7月 1 〇
8月 0
9月 0
10月 0
11月 0
12月 0
都合4回
関東以西の平地では冬鳥です。7月の記録は志賀高原でのもです。このときは特徴的なさえずりのおかげで見つけることができました。夏に亜高山に登って探してみるのもよいかも。



 (トップ画像 クロジ 2019/03/24 横浜市緑区の里山公園にて撮影)

 初出:2019/03/24
 改訂:2019/05/06 ♂画像の差し替え、観察データの書き換え
 改訂:2019/07/31 動画にさえずりのシーンを追加、サムネールの差し替え
 改訂:2021/08/03 観察データの更新、ホオジロ科へのリンクを追加