日本の野鳥 キアシシギ Japanese Wild Birds Grey-tailed Tattler

キアシシギ 黄足鴫
Kiashishigi
Tringa brevipes
Grey-tailed Tattler

キアシシギ チドリ目シギ科
 その名の通りに足が黄色い
 中型のスマートなシギ

   

福山市松永湾での観察


キアシシギの動画

 キアシシギは福山近辺では春と秋に干潟で見ることができる中型サイズのシギです。福山在住時、私がシギ・チドリの観察を始めたのは2013年のGWからで、横浜に移る2015年9月までは毎年出会うことができていましたから、この地へは定期的に来てくれているようでした。ただ真夏や真冬には見かけたことがないので、期間限定の渡り鳥としての飛来であると思います。
 大きさはシギ類の中では中サイズ。よく見る陸の鳥と比べるなら、ハトより小さくツグミよりはやや大きいサイズといった感じです。ただシギ類は足が長いので、ファインダーを覗いていると陸の鳥より感覚的に大きく見えます。もう一つの見方として干潟の鳥と比べるなら、同時に見ることが多いハマシギより大きく、チュウシャクシギより小さく、そしてソリハシシギとはほぼ同じサイズです。
 そのソリハシシギも足が黄色いので、遠めには間違うことがあるかもしれません。実際群れの中でも混じっていることがよくあります。実際、キアシシギとソリハシシギは属としては違うものの、系統としては近い間柄のようです。「両者は似ている」と申しましたが、ソリハシさんは双眼鏡や望遠鏡で覗いてみれば、名前のとおりくちばしが上方に反り上がっているので、拡大して見られれば他のシギとの見分けは簡単です。そもそもソリハシシギは足が黄色くてもくちばしの特徴で名前が付けられているのですから、キアシシギは逆に「足が黄色いことくらいしか特徴がない」ということになりますね。確かにクチバシはまっすぐで短くも無く長くも無く、羽の色は夏と冬で多少違うものの、どちらも地味なモノトーンであり、特に特徴的な模様も印もありません。
 全体的にみると体型もしゅっとしてシギらしいといえばとてもシギらしい姿のこのキアシくん、逆に言えばどこかで見たような特徴のないスタイルです。アオアシシギやオバシギのページでも彼らを「地味だ」と言いましたが、キアシシギもかなり地味な部類のシギです。ただキアシシギは足が明るい色をしているだけまだ明るい印象があります。結局それだけかと言うと、やっぱりそれだけのような気もします。。。どうも上手な紹介ができずにごめんね、キアシくん。

 左「キアシシギの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。最初の色んな種が混じった中で水浴びするのが広島県福山市のキアシシギです。ときは2015年4月。これから夏を迎えるのに、既に夏羽の装いです。水浴びしているのがキアシシギで、左がダイゼン、右はヒドリガモです。続く少しきれいな砂浜、二羽もしくは単独で写っているのは、千葉県東京湾でのキアシシギ。こちら2020年8月のキアシシギはもう冬羽の様相です。


キアシシギ 冬羽 福山市にて

 キアシシギのアップ絵です。この絵は昨年の初秋にホウロクシギがやってきて、彼らを追いかけている時に撮りました。姿は既に冬羽になっていますね。トップ画像の羽色と比べてもらうとよく分かりますが、春に見られる夏羽姿では首から胸の筋模様が目立ち、頭もグレーの帽子を被ったように見えます。一方この秋の姿は既に冬羽で胸の筋模様は無くなり、全体的にグレーで、頭も全体的に色が濃い目です。
 お顔の方は地味なものの、アップで見てみると目の周りに白いアイラインが入っていてよく目立ちます。そういえばソリハシシギやアオアシシギにも同じように白いアイラインが見られますね。また近くで見るとキアシシギの足の色は純粋に黄色っぽいのがわかります。ソリハシシギはどちらかというとオレンジっぽくてより赤みが強いです。私がキアシシギを見分けるポイントはまずサイズと体形となります。次に頭がグレーの帽子を被ったような濃いグレーの色目になっているところも見分けに使います。よく似た体形のアオアシシギは頭の色が全体的に薄いグレーなので、慣れればなんとなく見分けられるようになると思います。
 さて、このキアシシギ、2019年4月にハワイでメリケンキアシシギを見て以来、もしかしてキアシシギではなくてメリケンさんなのだったのでは?と疑念が沸いています。色がとても濃くて、当時からどこか引っかかっていた個体です。ただキアシシギに関しては秋の渡りの記録が少なかったため、「?」以上前に進みませんでした。その辺りは次の2020年8月15日の個体と比較して、もう少し考えてみたいと思います。

 左「キアシシギ 冬羽 福山市にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


キアシシギ 夏羽 千葉県九十九里浜にて

 GWに毎年恒例の九十九里浜めぐりをしました。この日は2羽のキョウジョシギと1羽のキアシシギに遊んでもらうことができました。
 羽模様は夏羽に換装中な感じです。冬羽でもなく夏羽でもないという感じ。
 この日の場所は干潟でなくまた砂浜でもなく、消波ブロックの間を行ったり来たりしていました。すぐ横に広い九十九里浜の砂浜がありますが、そちらへ行くことはなかったなぁ。ちなみに同じ場所で前の冬にハジロコチドリを見ました。こちらもブロックの上がお気に入りで砂浜には行きませんでした。ミユビシギは砂浜が好きなんだけどなぁ。よく似たシギチでも色々違うものです。

  左「キアシシギ 夏羽 千葉県九十九里浜にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


キアシシギ 冬羽 千葉県東京湾にて

 2020年8月のお盆に千葉県東京湾の干潟に出かけました。数日前から殺人的な猛暑が続いていたこともあり、早朝から観察を開始することとしました。
 当日は朝5時前が夜明け。その30分後の5:30頃から鳥見を開始しますが、結構な数の鳥見の方がいらっしゃいました。貝堀りなど人が増え始めると鳥見どころでなくなるので、お互いの目的に合わせて時間分担ができている感じがします。
 時期はお盆で正に真夏です。しかし鳥達にとってはそろそろ秋の渡りが始まる季節。キアシシギの装いもそろそろ冬羽に移り始めているようです。一つ上の姿と似ていますが、季節で考えれば上は冬 → 夏、こちらは夏 → 冬な途中でしょうか。過程は違うけど両者似ているのが面白いですね。もう一つ、2015年秋の個体と比較してみると、全体的に色目が淡い気がします。見分けの一つ、上クチバシの鼻孔から続く溝の長さは両者同じように見えます。やはりどちらもキアシシギなのかな?でも色目が随分違いますよね。まだまだ観察を続けなくては。同じ9月くらいのキアシシギをもう一度探してみたいです。

  左「キアシシギ 冬羽 千葉県東京湾にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


キアシシギ 夏羽の群れ

   福山で見かけるキアシシギの群れは、どちらかというと小さい群れサイズです。多くても数羽程度で、私は今のところ10羽以上の群れは見たことがありません。ソリハシシギやチュウシャクシギは10羽以上の群れを見ますので、キアシシギは見ること自体が珍しい部類ではないものの、個体数はそれほど多くない印象です。2014年の夏に有明回の干潟に出かけ、ものすごい数のシギ・チドリ類を見ましたが、その時もキアシシギに関しては数羽しか見ることがありませんでした。よく見るパターンはソリハシシギの群れに混じっているパターンです。もっともここで紹介する絵は逆で、6羽のキアシシギと一羽のソリハシシギですね。さてここでクイズです。ソリハシシギはどこに隠れているでしょうか?(答えは一番下に)

 左「キアシシギ 夏羽の群れ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


観察データ

場所と回数:佐賀県有明海 1、福山市 6、千葉県東京湾 3、千葉県九十九里浜 1、都合11回。九州から関東まで、渡り鳥として見られます。

観察月と回数:
1月0
2月0
3月0
4月3 〇〇〇
5月2 〇〇
6月1 〇
7月1 〇
8月2 〇〇
9月1 〇
10月1 〇
11月0
12月0
都合11回

渡り鳥として日本に来るシギチには秋から春にかけて越冬でやってくるものと、春や秋に渡りの途中に立ち寄るシギチがいますが、本種は明らかに後者です。ただ4月から9月までずっとどこかで観察できているので、単に立ち寄りというよりどこかで繁殖しているような気もします。それとも時間差で渡るのでしょうか。


 (トップ画像 キアシシギ夏羽 2015/05/04 福山市松永湾周辺にて撮影)

 初出:2015/05/10
 改訂:2017/12/23 文章の校正
 改訂:2020/09/06 動画の更新、静止画、観察データの追加
改訂:2021/09/15 トップ絵、九十九里浜の夏羽の絵、シギ科へのリンクを追加。観察データの更新

 (クイズの答え:右から2番目がソリハシシギです。クチバシが上に反っているのが分かりますでしょうか)