メリケンキアシシギ メリケン黄足鷸
Meriken_kiashishigi
Tringa incanus
Wandering Tattler

メリケンキアシシギ チドリ目シギ科
 名前の通りアメリカンな
 ときどき日本でも見られるらしいキアシシギ

   

ハワイオアフ島での観察


メリケンキアシシギとの出会い、動画の紹介

 2019年4月に次男の挙式でオアフへでかけました。彼らの挙式が終わった翌日、一日だけフリーな日があって、レンタカーにて島の東半分を一周(?)しました。途中、島の東海岸でトイレ休憩できそうな砂浜があったので車を停めて、せっかくなのでカメラを持って少し海岸を散策することとしました。
 ときはもう午後も4時に近い時間。空は薄曇りで風もかなり強くなっていました。近くの芝生を歩くコウカンチョウを撮ろうとしても、超強い風が吹いてきてレンズが震え、手持ちではうまく撮れません。そんなとき海岸沿いに低く飛ぶ、やや大きめの鳥の影が見えました。せっかく近くにいたのに、存在に気づかずうっかり飛ばしてしまったようです。幸い50mほど向こうで磯に降りた模様。また飛ばしてはいけないので、焦る気持ちを抑えつつゆっくりとそちらへ向かいました。
 その磯近くに近づいたとき、悔しいことに嫁さんに先にあっさりと逃げた鳥さんを見つけられてしましました。ま、それはありがたく聞き入れ(かなり悔しかった)濃い目のグレーな鳥さんにカメラを向けます。シギであることはすぐに気づきましたが、種としては初見のシギのようです。ラッキー!しかし風が強くて手元が落ち着きません。600mmにレンズを伸ばして手持ちで10mほどの距離を撮ろうとすると、先端がぶれぶれになります。手振れ補正の範囲外です。腰を落として腕を締めてなんとか静止画は撮れましたが、動画の方はいくら頑張ってもまるっきりのぶれぶれです。ただ、ここで今を逃すと次がいつになるかわからない相手なので、とにかく録画を進めました。

 ということでここで紹介する動画はぶれぶれです。言い訳ごめんなさい。岩礁が好きなところがポイントですね。左「メリケンキアシシギの動画 オアフ東海岸ハウウラ周辺にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


海岸のメリケンキアシシギ

 メリケンキアシシギはアラスカで繁殖し、アメリカからメキシコのいわゆる米大陸西海岸沿い、太平洋の中央から東側の島々を移動する渡り鳥だそうです。日本へは、小笠原辺りでは比較的頻度が上がるそうですが、本州でもたまに迷ってやってくるとのこと。

 名前の通り本家キアシシギと姿がよく似ています。違いというと上クチバシにある鼻腔の先の溝がクチバシ全体の2/3くらいと長いこと。(キアシシギは半分くらい)同じくくちばしが全体的に黒いこと。羽をたたんだとき、風切りが尾羽より飛び出ることなどとのことです。また全体に色が暗い灰色に寄っています。とここまで書いて、ちょっと自身にひっかかる記憶(記録)があることに気づきました。その解明は後に回すこととして、ここではとりあえずオアフで見たメリケンキアシシギの静止画を紹介します。

 左「メリケンキアシシギの動画」「メリケンキアシシギ ハウウラ海岸にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


メリケンキアシシギかもしれなかったキアシシギ

 今回ハワイで初めてメリケンキアシシギを記録して、「日本の野鳥」に登録をしました。ハワイの図鑑にも載っていて、見た目も図鑑のままですから、これは間違いないでしょう。ただ、上の紹介文で日本のキアシシギとの違いを描いていた時、自分の過去のキアシシギの記録の中で、メリケンキアシシギの特徴に近い絵があることを思い出しました。

 松永湾では2013年の観察開始から2015年の関東転居までは、毎年春からGW頃に渡り途中のキアシシギを記録していました。この頃のキアシシギは皆胸から脇あたりにかけて波模様があって、夏羽の装いです。ところが2014年9月に一度だけ秋の渡りの個体を撮影していました。こちらは冬羽の姿をしていました。というか、細かくみるとまだ幼鳥の羽色の特徴が残っている若鳥です。このときは干潟ではなく、湾に浮べられた丸太の上でうろうろしていました。記録では2羽いたことがわかります。で、このキアシシギは私自身初めて見た冬羽だったので、なんの疑問も持たず、初めてみた冬羽のキアシシギとしてキアシシギのページでアップ絵を紹介しております。しかし上のメリケンキアシシギの特徴を調べるうち、まず灰色が濃いということで、この松永湾の秋のキアシシギに長年抱いていた違和感を思い出しました。春のキアシシギの背中は茶系が強いのにこの秋のキアシシギは濃い目のモノトーンです。それと秋のキアシシギはクチバシの艶がやけに印象的でした。これは若鳥であることもあるかもしれません。しかしそれ以上にクチバシ全体が黒っぽい色合いなことがその印象を強くしていました。キアシシギのクチバシは特に下側の付け根あたりが黄色っぽくて薄い色をしています。またメリケンキアシシギは鼻腔先の溝がクチバシの2/3程度とキアシシギ(1/2)より長いのだとか。こちらもアップで見ると確かに長いように見えます。
 そんなことからあらためて2014年の当日の記録(ざっと75枚ほど)を見返したところ、これはもしかするとメリケンさんだったのではないかとの疑惑(?)が持ち上がりました。上で紹介したメリケンキアシシギの特徴がすべて当たっているのです。念のため過去中国地方でメリケンキアシシギの観察記録がないかweb検索で調べましたところ、そのような記録や記事はありません。では「メリケンキアシシギ」で検索をかけ、出てきた画像の中で冬羽のものを調べますと、私がみたものとよく似た特徴の個体の写真がいくつか出てきました。しかしよく調べるとそれらは皆、実際には「キアシシギの冬羽」として紹介されていました。この辺りのデータの信憑性はweb世界の限界ですね。
 結局私が見た冬羽のキアシシギは果たしてどちらのキアシシギなのでしょうか。真相はやぶの中です。
 当日は10羽ほどのソリハシシギの小群がいましたので、疑惑の二羽は彼らと一緒に飛んできた可能性が大です。ただソリハシくんの生息域とメリケンキアシシギの棲息域も一致しませんから、その関係性も不確かです。ちなみにソリハシシギと同時に写っている姿をみるとソリハシシギより二回りくらい大きいことがわかります。図鑑によるとソリハシシギは22~25cm、キアシシギは24~26cm、メリケンキアシシギは26~29cmと書かれていますので、このことからもメリケンさん疑惑は強くなります。
 結局のところこの二羽がキアシシギなのかメリケンキアシシギなのかは断定できていません。今後もっと調べてみて、その地域で過去の記録でも見つかればもう少し自信が沸くのかな。取り敢えずは参考としてその個体をこちらのページでも紹介させていただこうと思います。

 左「メリケンキアシシギかもしれないキアシシギ 福山市松永湾にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


観察データ

場所と回数:オアフ島1。東海岸ハウウラ近辺。砂浜にあった岩場にいました。

観察月と回数:
 1月0
 2月0
 3月0
 4月1 〇
 5月0
 6月0
 7月0
 8月0
 9月0
10月0
11月0
12月0
都合1回
渡り鳥とのことです。でもここは常夏の国なので、どういう感覚でハワイに来たり他所へ去ったりするのでしょうか。実際のところ、この地にいつからいるまでいるのかはよくわかりません。




(トップ画像 メリケンキアシシギ 2019/04/15 オアフ島ハウウラの海岸にて撮影)

 初出:2019/08/25