オバシギ 尾羽鷸
Obashigi
Calidris tenuirostris
Great Knot

オバシギ チドリ目シギ科
 あまり見かけない上、とても地味な
 存在感の薄いシギ

   

佐賀県大授搦干潟、福山市松永湾干潟、船橋三番瀬での観察

 2014年のお盆に長崎まで車旅行に出かけた際、佐賀の大授搦に立ち寄ることができました。当日は体が溶けてしまいそうなほど暑い陽射しの下、多数の珍しいシギ・チドリ類を見ることができました。その中でも最も地味なシギがオバシギでした。
身体は中くらい。ソリハシシギ程度です。でもソリハシシギのような面白いクチバシではありません。多少長めですがほぼまっすぐなクチバシを持っており、同じ日に見たオオソリハシシギのように凄く長いわけでもなく、ダイシャクシギのような弓なりの反りようでもありません。羽色はシギらしい茶色と白のモノトーンチックな配色です。仲間のコオバシギは夏羽にオレンジ色が胸まで濃く現れてとてもよく目立ちますが、オバシギはわずかに背中の羽に赤っぽい色が浮く程度です。個体数も少ないため、ハマシギのように群れで目立つわけでもありません。私が思いますに、このオバシギの地味さはアオアシシギと双璧をなす地味さではないかと思います。
 同じ年の秋、今度は地元松永湾でホウロクシギを観察していた時のこと。ホウロクシギがいた海の上に浮かんだ丸太の上に地味なシギが一羽おりました。ここでよくみるイソシギよりは大きく、キアシシギによくにているものの足が黒くて短め。オバシギかな?などと頭に浮かびますが、なんせ特徴のないシギなので全く自信がありません。とりあえず写真に収めてあとで調べることとしました。
 家で図鑑を開いて確認すると、このシギはやはりオバシギでした。大授搦でみたものは夏羽でそれなりに赤っぽかったりしたのに対し、こちらは本格的にモノトーンで地味です。大授搦では多くの種が群れている中、皆夏羽であったためそれぞれに特徴があって現地でも区別がつきやすかったのですが、もしあれが冬羽の集まりだったらきっと私の頭はパニックになったのではないかと思います。
 その後横浜に移り、シギチを見るなら船橋三番瀬に行くのが常となりました。ここも四季折々、色々な水鳥がやってきます。2018年10月、秋晴れの下で広い砂浜を歩きながら、どれも似たような姿のシギチをのんびりと観察しておりました。するとハマシギにしては少し大きなシギがいます。しばらく歩くとまた同じようなシギがぽつんといたりします。「オバシギだろうか?それともコオバシギだろうか?もしかしたら未見の新しいシギだろうか?」など頭の上にたくさんの?マークを点灯させながらレンズを向けて一通り写真と動画を撮っておきました。

 家で図鑑を開いて確認すると、なんとオバシギとコオバシギの両方がいたことがわかりました。現地での観察では、ハマシギ含めて皆、見ている間の半分以上の時間は水面や地面にくちばしを突っ込んでいるので、くちばしの長さも中々見えづらく、種を判別しにくいのですね。シギチが好きな方はこれらの違いも現地ですぐに判別されていて、「すごいなぁ」とあらためて感心する私でありました。
 オバシギの動画を置いておきます。最初の場面は大授搦で撮った夏羽で、次は三番瀬の冬羽。最後は松永湾で撮った冬羽のものです。大授搦の場面は群れの中でわかりにくいですが、最初、画面中央から右方向に移動する中型のシギがオバシギ、続く場面では画面下1/5くらいのところを左から右に移動する個体がオバシギです。三番瀬と松永湾は単体なので分かり易いかと思います。

 左「オバシギの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。動画は13MBありますのでDL環境にご注意ください。


オバシギ 冬羽

 三番瀬で撮ったオバシギです。三番瀬で小型~中型のシギを見た場合、主を占めているのはハマシギです。次に多いのがミユビシギとなります。オバシギやコオバシギ、キアシシギ、ソリハシシギなどはハマシギほどの群れを組みません。特にオバシギ、コオバシギは今のところ単体でしかみていません。一方、近くにはたいていハマシギがわんさかいまして、パッと見ただけでは皆同じように見えてしまいます。ここからハマシギでない種を見つけるには
 クチバシの長さと曲がり具合
 足の色が黒いか黄緑か
 サイズが違う鳥がいないか
 などを比較して見ることになります。しかし相手は生き物なので、あっちこっちとちょこまか動き回り、ゆっくり比較したり観察したりする暇がないのも事実です。そうなると結局のところ、何度も足を運んで経験値を上げるしかないのかなと思います。どんなことにもスキルを上げるには訓練が必要ということでしょうか。私の場合、まだまだ経験値が足りないのですが、とりあえず「違和感」を感じる程度にはなってきました。そこにいるたくさんのシギチを「ぼぉっと」見ていても、違う種が混じっていたら違和感を感じるようになれば、「まずは写真でも撮っておこうか」と目が向きます。ただ、そこから瞬時に種が同定できるようになるには、更なる努力と修業が必要なのでしょうね。頑張ろう。

 左「オバシギ 冬羽」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


オバシギ 冬羽の飛翔

 オバシギ冬羽の飛翔絵です。ブレた絵ですが、オバシギの雰囲気が見えているのでよしとしました。オバシギは腰が白いので、これもひとつの見分けに使えます。飛んでくれたらの話ではありますが。。ちなみにコオバシギは黒色の斑が混じるとのこと。
 これを撮ったのは2014年の秋で、2羽の大きなホウロクシギにお供して足元をうろついていました。上に書いた通りハマシギとつるむのは何となくわかるのですが、オバシギがホウロクシギと同行する姿はなんとも不思議な光景でした。シギ達って自力で穴掘ってエサを取るので、お供してもご相伴にあずかれるわけでもないし。。。遊んで欲しかっただけかな?

 左「オバシギ 冬羽の飛翔」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


オバシギ 夏羽

 左「オバシギ冬羽の飛翔」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。

 こちらは大授搦で撮った夏羽のものです。群れの中でわかりにくいですが、舗装路の上真ん中右手の2羽と、真ん中やや上の石の上にいる一羽で胸が黒く脇がごま塩で腹が白いのがオバシギです。その付近にいる小さいのがハマシギ。画面左側で胸からお腹がオレンジ色しているのがコオバシギです。オバシギとコオバシギは胸の色とクチバシの長さで見分けられます。コオバシギはクチバシの長さが頭と同じくらいしかありませんが、オバシギは明らかに頭より長いクチバシをしています。左下から右に2番目の背中しか見えない個体は冬羽っぽい色をしていますが、一緒に撮った前後の絵を見てみるとどうやらこれもオバシギのようです。ただ色目からしてお子様っぽいですね。

 左「オバシギ夏羽」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


オバシギ 夏羽の着地

 これも大授搦で撮った夏羽のものです。群れの中真ん中のダイゼンの右で羽を広げて着地しようとしているのがオバシギです。こうやって見ると脇は白いのですね。最初「アオアシシギかな?」とか思いましたが、アオアシさんはクチバシがもう少し長くてちょっとだけ上反りしているので違いますね。

 左「オバシギ夏羽の着地」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


観察データ

場所と回数:佐賀県大授搦2、福山市松永湾1、千葉県船橋三番瀬1、都合4回。九州から関東で見ているので、結構広い範囲に寄る旅鳥なのだろうと思います。旅鳥なので、出会いは結構運も必要かもしれません。ただ、そこまでレアな種でもなさそうなので、数を重ねていればいつか出会える種だと思います。まずはハマシギが多数いる場所を根気よく探しましょう。

観察月と回数:
 1月0
 2月0
 3月0
 4月0
 5月0
 6月0
 7月0
 8月2 〇〇
 9月0
10月2 〇〇
11月0
12月0
渡りを行う旅鳥です。松永湾では似た種のコオバシギ含めて、春と秋にしか記録がありません。大授搦では盆と正月休みにしか出かけたことがないので、詳細は不明ですが、今のところ夏のみで冬は見ていません。三番瀬は秋にしか記録がありません。


 このオバシギのページを最初に作ったのは2015年のこと。以来5年間改訂なしでおいておりました。2020年3月になり、コオバシギのページがまだないのでこちらを調べなおしていたところ、このオバシギのページに一部コオバシギの記録が混じっていたことに気づきました。2015年当時は私のシギチを判別するスキルがまだまだ不足していたのが最大の原因だとは思いますが、作ったページをしっかりと見直しをしていればもっと早く気付いたかもしれません。使った絵がクチバシが水に浸かっていたり、動画がすばしっこかったりと同定するのに一番特徴的なクチバシの比較がしにくかったのもひとつあったかもと思います。ご覧になった方々にはお詫び申し上げます。

  (トップ画像 オバシギ 2018/10/21 D500 500mm 船橋三番瀬にて撮影)

 初出:2015/04/29
 初出:2020/03/28 全面改訂