ハチクマ 蜂角鷹
Hachikuma
Pernis ptilorhyncus
Oriental honey-buzzard

ハチクマ タカ目タカ科 準絶滅危惧 NT
 ハチを好んで食べる
 秋の渡りで有名なタカ
 

   

ハチクマ


 ハチクマは名前に「ハチ」が付く通り、ハチを好物とする珍しい鳥です。シルエットはイヌワシを小さくしたような感じで、飛翔姿も非常に格好いい。クマタカをもう少しスマートにしたような感じといえば分かりやすいでしょうか。
 日本では夏鳥で、繁殖のためやや涼しい山中にやってくるようです。一番観察し易いのは秋に南へ戻る渡りの時期で、数ではサシバに譲るものの、サイズや羽の厚みなどでサシバ以上の存在感を見せてくれる「タカの渡り」の主役を張るタカです。



「ハチクマの飛翔 ♀」 クリックで拡大します。

ハチクマの飛翔 ♀

長野県松本市
1024×682 px
2019/09/14
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
FL ED VR + AF-S TC-14E III TC14E3

 長野県松本市で観察したハチクマの♀です。♀ は ♂ と比べて白黒のコントラストがはっきりしている個体が多いです。この個体は三毛みたいな色で中でも派手めな感じです。
 顔から胸当たりの羽毛がびっしりと詰まっていて、ウロコみたいに見えます。これならハチの攻撃に対して鎧になりそうですね。



「ハチクマの飛翔 ♂」 クリックで拡大します。

ハチクマの飛翔 ♂

長野県松本市
1024×682 px
2019/09/14
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
FL ED VR + AF-S TC-14E III TC14E3

 こちらは ♂ の個体です。顔が蒼っぽくのっぺりとしていて、少し幼い感じの顔に見えます。というか眼が可愛い。
 ここまで三枚続けて同じ日の記録絵です。タカの渡りはその日の天候で当たり外れがあります。基本悪天候の後に晴れた日を狙って行くと、最低限「はずれ」はありません。しかし天気が良すぎるとタカはどんどん上昇していって、「数は多いけれど見られるのは米粒ばかり」、みたいな感じになることがあります。「当たりの中のはずれ」みたいな感じです。この日2019年9月14日は「基本青空だけど時々雲が出る」といった感じでしたが、そこまで上昇気流が強くなかったのか鳥達が峠をかすめるように低く通ってくれたため、今までになく近い距離で観察することができました。数もそこそこ出てくれて、私にとっては過去一番の「大当たり日」でした。



「ハチクマの飛翔 若」 クリックで拡大します。

ハチクマの飛翔 若

長野県松本市
1024×682 px
2019/09/14
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
FL ED VR + AF-S TC-14E III TC14E3

 ハチクマの若鳥です。若は全体的に白っぽいのですが、翼の先は黒くなります。尾羽の横縞も細いですね。
 成鳥と一番違うのは羽姿全体がまとまっていてくたびれた感が感じられないところです。逆に親鳥は皆、子育て疲れで羽があちこち傷んでいるので違いが分かりますね。この若鳥は姿が本当にきれいです。



「ハチクマとサシバの飛翔」 クリックで拡大します。

ハチクマとサシバの飛翔

長野県松本市
1024×682 px
2023/09/24
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 長野県松本市で観察するタカの渡りはサシバとハチクマが主役です。それぞれの良さを一言でいうと、数のサシバ、迫力のハチクマでしょうか。通過する数は圧倒的にサシバが多いですが、ハチクマの方が翼が大きいので目立ちます。そんな二者が揃った絵がこちら。サイズ的には二回りくらい差がありますね。



「ハチクマの群れ 山をバックに」 クリックで拡大します。

ハチクマの群れ 山をバックに

長野県松本市
1024×682 px
2022/09/25
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 タカの渡りを観察していると、タカ柱と言うタカ達がまとまって上昇気流に乗っていく姿を見ることがあります。というか、タカ柱を見ることはタカの渡り観察では一番のメインイベントです。
 この絵の中には12羽のハチクマが舞っています。青空をバックにたくさんのハチクマが舞うことはときどきありますが、見下ろす形は結構レアで、記憶に残るシーンの一つです。



「ハチクマの飛翔 山をバックに」 クリックで拡大します。

ハチクマの飛翔 山をバックに

長野県松本市
1024×682 px
2022/09/25
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 上の絵よりもう少し近いところで輪を描き始めたハチクマです。標高1,700mだからこそ見られる風景ですね。観察に幸せを感じる瞬間です。



「福山のハチクマ」 クリックで拡大します。

福山のハチクマ

広島県福山市
1024×682 px
2013/7/13 Nikon D200 Mode A Nion AiAF ED 300mm/F4s  

 広島で住んでいたときはあまり猛禽類に興味が向いていませんでした。よく見るタカ類と言えばトビ、ミサゴ、ノスリ、ハイタカくらい。ですのでこの日突然私の前に現れたこのタカらしき鳥がいったい何者なのかわかっておらず、「きっとミサゴの若だろう」くらいに思ってそのままお蔵入りさせていました。5年後に記録の見返しをしていて、その頃はタカの渡りを観察するようになっていたこともあり、「これハチクマじゃん」と気づいた次第。
 この場所は福山時代に何年も通い続けた場所ですので、見られる鳥は大体察しがついていましたが、ハチクマとの出会いはこれがただの一度限りでありました。ただ渡りの時期ではないので、もしかすると福山近辺でもハチクマはきていたのかもしれませんね。


観察データ

場所と回数:広島県福山市 1、長野県松本市 6、計7回。今のところタカの渡り以外で見たのは福山での一度のみです。しかも一瞬のことでした。ですので、ハチクマを見たいなら、やはりタカの渡りで有名な場所に行くのが一番かと思います。ちなみに愛知県伊良湖岬にタカの渡りを観察に行ったときは、私自身が渡りの初心者だったこともあり、サシバとノスリとトビしか見つけられませんでした。きっとハチクマもいないことはなかったと思いますが、米粒を見上げながら見たことのないタカを見極めるのはとても難しいと感じました。そんな経験もありますので、これから初心者の方がタカの渡りを見に行くならば、比較的近距離で見られる山の上をお勧めしたいと思います。山なので天気や交通の便は多少厳しいものがありますが、条件が合えば一日中タカたちを堪能できると思います。

観察月と回数:

1月0
2月0
3月0
4月0
5月0
6月0
7月1 〇
8月0
9月6 〇〇〇〇〇〇
10月0
11月0
12月0
計7回
夏鳥です。渡りで見るなら、本州の山の中なら9月中旬から後半、南の海沿いなら10月に入るころまでがお勧めです。



 (トップ画像 ハチクマ ♂ 2019/9/14 D500 500mm/F4.0 長野県松本市にて撮影)

 初出:2018/12/24
 改訂:2018/6/16 動画の差し替え
 改訂:2019/9/23 静止画の差し替え
 改訂:2019/10/1 静止画(若鳥の飛翔)を追加
 改定:2021/7/27 観察データ、タカ科へのリンクを追加
 改定:2023/11/10 全面改訂