ルリビタキ 瑠璃鶲
Ruribitaki
Tarsiger cyanurus
Red-flanked bluetail

ルリビタキ スズメ目ヒタキ科ルリビタキ属
 冬の青い鳥
 脇のオレンジ色がチャームポイント

   

福山市ふれ愛ランドでの観察


ルリビタキ♂、♀の動画

 自然を相手にした遊びでは、遊びの熟練度に合ったマイルストーンのような種によく出会います。例えば私が以前(老眼が始まる前まで)はまっていた魚釣りでは、黒鯛がそれに当たります。黒鯛を狙って釣れるか/釣れないかで、釣り初心者と本格的な釣り好きの分かれ目になっていたように思えるのです。釣り方さえ分かれば誰にでも釣れるのだけれど、道具の選定を始めとして釣れる条件を知らなければなかなかお目にかかれない。そして念願かなって釣れたなら、引きが強くてやり取りが面白く、サイズはまずまずお刺身が取れる大きさが望め、いただいても美味。感動。。。当然いい思いをしたのでまた釣りに出かけたくなる。黒鯛はそんなお魚でした。

 長い枕でしたが、ルリビタキもバードウォッチャーの経験値としての曲がり角みたいな位置にいる野鳥ではないかと感じています。瑠璃色に輝く非常に魅力的な小鳥ですが、家の近所(住宅地)を散歩するだけでは出会えません。出会うには冬になってから山へ足を一歩踏み入れることから始めなければなりません。そうすればまずはメジロ、ヤマガラ、シジュウカラなどの留鳥を見つけ、やがて森や林に目が慣れてくれば自然とルリビタキとの出会いが訪れることとなるでしょう。そして冬の妖精のような青い輝きを間近で目にした日には、「瑠璃」の魅力に心を奪われてすっかり彼の虜になってしまうわけです。
 一方夏に山で出会えるルリビタキは美しい鳴き声を聞かせてくれるものの、残念ながらその羽は瑠璃色が抜けて、くすんだ灰色にしか見えません。11月の初旬なら青くてさえずるルリビタキに出会えることもありますが、基本、冬の瑠璃色をとるか夏の囀りをとるかになってしまします。私がお勧めするのは圧倒的に冬のルリビタキです。
 さて全身が青く輝くのはルリビタキの♂通称「ルリ男」のみです。一方♀の「ルリ子」は見つけるのに慣れて来ると山道沿いの低木にそこらじゅうで縄張っていていることに気付きます。ルリ子は淡いモスグリーンでパッと見は青くありませんが、脇のオレンジはルリ男と同じで、すぐにルリビタキだとわかります。

 ルリ男とルリ子の動画をおいておきます。ルリ男前半の鳴いているもののみ6月の富士山五合目で撮ったもの。あとは皆冬の福山ふれ愛ランドで撮ったものです。ファイルはルリ男とルリ子で分けてあります。ルリ男もルリ子もたまに我々の目の前に現れて、しばらくショータイムに入ってくれることがあります。V1にサンヨンなどという装備の場合、画面からはみ出しそうになって後ずさりすることさえあります。

 左「ルリビタキ♂の動画」「ルリビタキ♀の動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。動画はそれぞれ20MB、13MBありますので、DL環境にご注意ください。


ルリビタキ♀のスロー動画

 ルリビタキは出会うと尾羽をピョンピョン上下させて愛嬌を振りまいてくれます。(侵入者に怒っているだけなのかもしれませんが)ジョウビタキも尾羽を上下させるのですが、振り方が少し違います。ジョウビタキの場合は最初の一振りが大きくてだんだん小さくなっていく感じ。ルリビタキは一定間隔で尾羽をチョンと振る感じで、その際に翼も少し開いているように見えます。とは言え現場で見ても一瞬のことなので、どんな風に動いているのかわかりません。そこでスロー動画に収めてみたところ、尾羽を振るのと同時に翼を少しだけ開いていることがわかりました。掃う虫がいるわけでもなく、何のために振るのでしょうね。一度ルリ子さんにに聞いてみたい。

 左「ルリビタキ♀のスロー動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。動画は6MBありますので、DL環境にご注意ください。


ルリビタキ♂

 このページの構成を見ていただくとおよそ察しが付くかと思いますが、このルリビタキは私が最も愛する野鳥の種です。「幸せの青い鳥」と言いう有名な戯曲がありますが、「青い鳥」自体は幸せや希望の象徴であって、いくら追いかけても手に入れることはできません。
 ルリビタキの青を眺めていると、とても幸せな気分になってきます。そこでこの美しさを絵に留めて「幸せ」を自分の手元に残しておこう頑張るのですが、未だ本当に納得のいく「瑠璃色」を絵に残せたことはありません。梢の陰からちらりと見かける瑠璃の輝きと、カメラを通じて出てきた画像の絵は同じように見えてもやはり違うのです。その違いを口で説明するのは難しくうまく表現できませんが、今年もまた少しでも「森の中の瑠璃」に近い絵が残せるよう修行を続けたいと思います。「そうやって追いかけている時こそが幸せなんだよな」とはわかっているものの、やはり冬が来る度また理想の瑠璃色を絵に残したくなる。そんな魅力のあるルリビタキです。

 左「ルリビタキ♂ 福山市ふれ愛ランド周辺にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


ルリビタキ♀

 上に「青いルリビタキこそが私の最も愛する小鳥だ」と書きました。その青いルリビタキとは当然ながら♂くんのこととなります。しかし青くない♀のルリ子さんも非常に魅力的な小鳥です。色目はほぼオリーブ色でやや地味になりますが、とにかくクリクリお目目の表情が可愛い。またルリ男よりはよく表に出て来てくれるので、目にする機会もずっと多い小鳥です。
 ルリビタキはジョウビタキの近縁で、羽の色目以外姿や習性がよく似ています。またお互いのテリトリーがよく重なりあっており、山道を歩いていると「右にルリ子/左にジョビ子」みたいな出会いがしょっちゅうあります。どちらも「ヒッヒッ」と続けて鳴くので、表に出てくるまでは一体どちらなのか分からないことが多いです。ただよく聞くとジョビ子は「ヒッヒッ」の他にヒタキの由来通り「カッカッ」と石を打ったような音をクチバシで鳴らします。片やルリ子は何故かこれが「ゲゲッ」とカエルさんのような声になって聞こえます。ルリ子さんはせっかく見た目が可愛いのに声で損しているなぁと「ゲゲ」を聞くたび思う私です。
 ここで紹介するルリ子さんは2010年の正月にD200+1990年製サンヨンのセットで撮った絵です。古いレンズなものでクリアさはありませんが、その分優しい感じの写りとなっていてお気に入りの一枚です。

 左「ルリビタキ♀ 福山市ふれ愛ランド周辺にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


夏の青くないルリビタキ♂

 2017年6月、初めて八ヶ岳の一番北に位置する蓼科へ出かけました。ロープウェイを登った先にある御泉水自然園に入りまして庭園を歩き始めると、さっそく周囲から小鳥達の鳴き声が聞こえてきます。中でも目立つのがルリビタキのさえずりです。丁度繁殖っ真っ盛りの季節なのでしょう。あちこちからヒヨヒヨヒヨヒヨーというルリ男くんの歌声が聞こえます。よく見ているとすぐそこの木の周りを何羽ものルリビタキが飛び回っていまして、そのうちの一羽は口に餌を咥えていました。ヒナに餌を運ぶ途中でしょうか。ただこのルリビタキ、やはり青くありません。「やはり」といいますのは、昨年富士山五合目でみた個体も確かに全身グレーだったからです。さきほどさえずっていたので確かに♂くんのはずです。かすかに尾羽が青いくらいで、冬場の宝石のように美しい青いルリビタキの面影はありません。鳥の♂くんって普通繁殖期に一番きれいになるはずなのに、ルリビタキはなぜか地味です。それとも冬の低山にいる間に恋をして、カップルで春に高山へ仲良く帰って、繁殖の地では地味に変身するのでしょうか。うーん、気になる。。
 と、ここまで書いて今日本で読んだ情報では、ルリビタキの♂は2~3年経ってからでないと青くならないのだとか。そして1年経った夏から♂くんはもう繁殖するので、その時はまだ青くないのだとのこと。私が見たのはその若い♂くんだったのかな?でもそれならたまには繁殖中の青い♂くんがいてもいいはずだし、よけいにわからなくなってしまいました。また来年、夏の青いルリ男くんを探しに行こうと思います。

 左「夏の青くないルリビタキ♂ 富士山五合目にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


梢の中のルリビタキ

 最後によくみる冬の梢の中のルリビタキの絵を一枚置いておきます。ルリ男さんは大体がこんな感じで木々の枝葉の中にいますので、フォーカスが合わせにくいですね。この絵はV1に旧式サンヨンというマニュアルフォーカスで撮った絵なので、そもそもAFが迷うなどという心配は無用でした。今年はTamronA011でもっときれいなルリ男とルリ子を撮りたいのですが、さて、AFにするかMFにするか、今から迷うところです。

 左「梢の中のルリビタキ 福山市ふれ愛ランド周辺にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


観察データ

場所と回数:福山市ふれ愛ランド他46、岡山県3、長野県北アルプス方面1.長野県八ヶ岳方面2、富士山周辺4、神奈川県宮ケ瀬他県北方面10、神奈川県の横浜市内4、都合70回。私が行く先ではどこでも大抵みられる小鳥です。

観察月と回数:
1月22 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
2月12 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
3月6  〇〇〇〇〇〇
4月2  〇〇
5月1  〇
6月4  〇〇〇〇
7月0
8月0
9月0
10月0
11月4  〇〇〇〇
12月19 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
都合70回
漂鳥です。冬は比較的低山に降りて来ますので一番観察しやすい季節です。一方夏は1,500m級以上の亜高山に登れば観察できます。夏場に富士山の五合目に上がればそこかしこできれいなさえずりを聞くことができます。ちなみに低山でも11月の飛来当初であれば、ときおりさえずりを聞くことができますので「ルリビタキダヨ」の聞きなしで耳を傾けてみてください。
私の中では出会いカウント(撮った記録の数)がかなり多い方ですが、被写体としてきれいな小鳥のために、いれば必ずレンズを向けるためです。カラスやスズメの出会いカウントが少ないのは致し方なし。。。




 新しいレンズを買って最初に鳥見に出かけた日、方々へ車を走らせては歩き廻ったもののあまり良い絵には巡り合えず、時間も夕刻近くなったので「もう本日終了」と店仕舞いすることとしました。レンズを抱えて駐車場へ向かって歩いていると、突然ルリ男君が私の目の前に現れました。少し日陰の場所だったこともあって、目視でも背中の青色が物凄く綺麗に輝いています。「これチャンス!」とレンズを向けておもむろに追いかけました。お陰様でいくつかアップのポーズが取れたのですが、中でも一番きれいな青色が撮れたのはこの羽ばたきの瞬間のややブレた絵でありました。「でもこれもありかなと」、トップに飾らしてもらうこととしました。ルリ男くん、まさに「瑠璃色の宝石」のような小鳥ですね。


 (トップ画像 ルリビタキ 2017/01/22 Nikon D500 500mm F4 + 1.4x 城山湖周辺にて撮影)

 初出:2014/10/13
 改訂:2016/06/12 夏のルリビタキ追加、動画の差し替え
 改訂:2017/01/22 トップ絵を差し替え
 改訂:2017/11/19 ♀静止画を差し替え
 改訂:2018/06/03 科をツグミからヒタキに変更
 改訂:2020/01/27 観察データを追加
 改訂:2021/08/04 ヒタキ科へのリンクを追加