エゾビタキ 蝦夷鶲
Ezobitaki
Muscicapa griseisticta
Grey-streaked Flycatcher

エゾビタキ スズメ目ヒタキ科サメビタキ属
 秋に明るい林へやって来る灰色のヒタキ
 胸のスジ模様が見分けのポイント

   

福山市での観察


エゾビタキとの出会い、動画

 エゾビタキは秋口に見られる、地味な色をしたヒタキ科の小鳥です。サメビタキ、コサメビタキ、エゾビタキは3兄弟みたいなそっくりさんですが、エゾビタキは胸にスジスジが多く見られるのがポイントです。サメビタキにもスジがあったりするそうですが、他にない特徴として脇に薄くぼやけた灰褐色があるそうです。ここでで見られるエゾさんは脇が綺麗に白いのでエゾビタキと同定しました。
 ヒタキ類はテリトリーを持っているものが多く、このエゾビタキも同じ木、同じ枝に繰り返し飛んできます。従って被写体としてはもっとも望ましい(嬉しい)タイプと言えます。私はそんな撮り放題(鳥砲台ともいう)な場面に2010年と2014年の2度巡り会えました。2014年は最初に見つけてから2週間後、3度目のチャレンジにして初めてまずまず近いところから撮影することができました。当初と2度目のチャレンジでは、コサメビタキが機材設置場所から近いところに陣取ってくれたこともあり、エゾビタキは遠いところにしか出て来てくれませんでした。そこでその週でコサメさんを撮り切って終了とし、翌週3度目のチャレンジではエゾビタキ専用に場所を移動しました。ただ、あまり近づきすぎて機嫌を損ねては来年以降に響くかもしれませんので、15mくらい手前の木陰にしゃがんで飛来を待っていたところ、機嫌よく何度も同じ枝に止まってくれました。大写しにはなりませんでしたが、しっかりと絵を残せたので幸せ気分のまま本年のエゾさん終了としました。

 動画を置いておきます。前半は2度目のチャレンジで撮ったもの。距離にして25mくらいからでしょうか。後半は3度目のもの。距離は15m弱くらいでしょうか。コサメビタキと同じで、このエゾビタキも鳴き声を聞いたためしがありません。私は「恥ずかしがり屋3兄弟」と呼んでいます。

 左「エゾビタキの動画 福山市にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


エゾビタキとコサメビタキ

 2010年9月の渡りの季節、エゾビタキが福山にやって来てくれました。珍しいお客さんなので張り切って撮影に挑み、当時持っていた2GBのCFメモリー一杯になるまでシャッターを切って満足感一杯で家に帰りました。改めて家で記録を見直してみると、現場ではどの姿も皆エゾだと思って撮っていた中に、コサメとキビ子が混じっていたことを知りました。この写真はそのエゾ&コサメが仲良く一枚に納まっている絵です。左がエゾビタキ、右のぼやけているのががコサメビタキです。両者は胸にスジがあるかないかの違いがあるだけで、他はほとんどそっくりさんです。よーく見てみるとエゾの方が微妙に翼が長いのだそうですが、現場ではそこまでなかなか気付きません。キビ子も同じヒタキ科で確かに似てはいるものの、ややオリーブ色がかった色なので、現場で冷静に見ていればわかるはずだったのですが、この日はエゾさん撮り放題に興奮していてついつい気付かなかったようです。

 左「エゾタキとコサメビタキ 福山市にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


木陰のエゾビタキ

 最初に書きました通り、エゾビタキを同定するためには必ず胸のスジを目視確認しなければなりません。つまり背中から見るだけではよく似たコサメビタキと見分けが付かないということです。この絵はしっかりスジが見えますので、はっきりとエゾビタキであることがわかりました。

 左「木陰のエゾビタキ 福山市にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。



エゾビタキの背中

 もう一枚背中も見える絵を置いておきます。胸のスジがポイントとはいえ正面だけを見ていてもスジが見えるだけであまり絵として映える構図になりません。せめて横から見て羽も胸もお顔も皆見える絵が欲しいと、今回は横を向いてくれるまでかなり粘りました。そこまで待つ間、モデルさんは色んなポーズを次々と決めてくれます。この絵を撮るのに都合220回シャッターを切っていました。とてもサービスの良いモデルさんでありました。また、こうして見ると翼が尾羽の付け根から半分位まで伸びているのがわかります。コサメビタキやサメビタキは翼の先が尾羽の付け根付近にしか届かなくもっと短いのだそうです。現場ではなかなか分かりませんが、よく見てみると確かに長い翼ですね。

 左「エゾビタキの背中  福山市にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


観察データ

場所と回数:広島県 6、愛知県 1、長野県 1、都合8回。広島県福山市では低山の山裾で、愛知は海岸沿いで、長野は亜高山の峠でみています。いずれも渡り途中だったのだと思います。

観察月と回数:
1月0
2月0
3月0
4月0
5月0
6月0
7月0
8月0
9月8 〇〇〇〇〇〇〇〇
10月0
11月0
12月0
都合8回

 典型的な渡り鳥です。9月の6日から26日までの20日間に記録が集中しています。タカの渡りで有名な山や海に猛禽類狙いで観察に出かけたら、なぜかセットで現れることが多く、この時期に限って影がとても濃い小鳥だと思います。渡りの時期は、逆にいつも見に行くような定置的な観察場所に出かけても鳥が少ない時期なので、この時期、エゾビタキは貴重な遊び相手だと思います。




 (トップ画像 エゾビタキ 2014/09/21 福山市にて撮影)

 初出:2014/09/23
 改訂:2019/01/15 校正、観察データを追加
 改訂:2021/08/04 ヒタキ科へのリンクを追加。観察データの追加