キビタキ 黄鶲
Kibitaki
Ficedula narcissina
Narcissus Flycatcher

キビタキ スズメ目ヒタキ科キビタキ属
 夏の黄色い鳥

   

広島県福山市、長野県、山梨県での観察について


キビタキの動画

 毎年のことですが、厳しい冬の寒さが緩んで来て河原の土手に土筆が伸びる頃には、河原や森の藪でウグイスが「ホーホケキョ」と鳴き始めます。その声は「もう春は近いよ」と告げてくれるように聞こえます。少しして桜が散る頃には山の緑も随分色濃くなり、新たにキビタキが森にやって来ます。そしてウグイスに負けじと大きな声で囀り始め、「もう夏が近いよ」と季節が移り行くことを教えてくれます。
 囀りが美しい日本の三鳴鳥と言えば、ウグイスコマドリオオルリの名が挙がるのですが、初夏のキビタキもこの3種に決して引けを取らない見事な鳴き声の持ち主です。また黒地の顔にきりりとした黄色の眉、鮮やかなオレンジ色の喉から薄黄色の腹へのグラデーションが誠に美しく、被写体としても申し分ありません。例えば私の持つ「日本の野鳥590」という野鳥図鑑や「日本野鳥歳時記」という写真エッセイ集ではキビタキが表紙を飾っています。
 そういえば「野鳥観察テクニック」というハンドブックの表紙はオオルリです。「日本の野鳥」という図鑑の裏表紙ではキビタキとオオルリの両方が参加しています。かように夏山の小鳥を観察する楽しみの半分は、このキビタキとオオルリを見ることにあるといっても過言でないと思います。
 過去キビタキを追った動画を置いておきます。いずれのフレームも短くて全体的にコマ切れですが、キビタキは緑の奥に隠れていることが多く、至近距離でばっちりフレームに収めることが難しい鳥さんです。お許しを。

 左「キビタキの動画 福山市、長野県戸隠周辺にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。ファイルは22MBありますのでダウンロード環境にお気を付けください。


キビタキ♂  
 5月は虫の湧く季節です。青葉の茂る森に虫を求めてやって来たキビタキやホトトギス、ムシクイなどが、姿を隠したままで自らの存在を声で競い合います。この季節は陽射しも強くなるので、観察の際は木陰に隠れて彼らの不意の到来を辛抱強く待つのですが、その間、頭上の木々から降ってくる毛虫との戦いとなります。その毛虫が好物な野鳥を探しているのですからこれは半ば仕方がないことなのですが、「毛虫の絨毯爆撃だけは勘弁して欲しい」とこの時期いつも泣きを入れる私です。それでもようやくのこと左の絵のように望む鳥が目の前に現れてくれた時には、毛虫のことも忘れてひたすらファインダーに集中し、嬉々としてシャッターを切っています。結局、毛虫との戦いは野鳥撮影の修行・試練の一環なのでしょうか。。。  
 皆さん、初夏の山へは首筋ごと守れる帽子と長袖・長ズボン、虫を払える手袋の備えをしっかり用意してお入りください。

 左「キビタキ♂ 福山市にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


キビタキ♀  
 冬のヒタキの仲間は概して♀さんが目立つものです。ジョウビタキやルリビタキは特にその傾向が強いと感じます。一方で夏のヒタキ、オオルリとキビタキは♂くんの方が目立ちます。理由はさえずりで見つけるからです。この2種は夏の定番ながら、♀の観察チャンスが低く、自分の過去の記録をみてもあまり多くありません。この日は五月も後半に入っていたものの、標高の高い山だからかまだ営巣には入っていないようで、飛んできた木の枝でじっとしている♀さんをゆっくり観察することができました。ちなみにこの日見た(絵で記録した)♂のキビタキは2羽、メスは1羽でした。やっぱり♂くんの勝ちです。

 左「キビタキ♀ 山梨県にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


キビタキ幼鳥その1、その2  
 こちらは今年生まれたばかりの幼鳥のようです。浅い水場で盛んに水浴びをしていました。この絵、グルグルの方はISO3200でSS1/100です。相当の回転数でグルグルしているのが分かります。飛んでいる虫を捕る小鳥ですから、生きている時間分解能が我々人間とは違うのでしょうね。ちなみに2枚目の立ち止まっている絵の方はISO1800でした。薄暗い森の中で木漏れ日が射したり消えたりするたび、露出が変わって絵の印影が微妙に変わります。頭の上に羽毛が乗っかっていてとぼけた感じで可愛いので飾っておくことにしました。

 さて、ここで生まれたこのキビちゃん、また来年ここに帰ってきて水浴びしているのでしょうか。そして帰って来たとき、背中は黒くなっているのかな、それともオリーブ色になっているのかな。

 左「キビタキ幼鳥その1、その2 山梨県富士山周辺にて」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


観察データ

場所と回数:広島県(全て福山市)19、長野県 2、静岡県 1、山梨県 11、神奈川県 1、新潟県1、青森県 1、北海道 1、都合37回。場所は近い仲間のオオルリと被ります。亜高山でも見かけますが、基本、低山に多い小鳥です。虫をエサにするいわゆるフライキャッチャーなので、山間の湿気っぽいところを探しましょう。ただオオルリのように渓流沿い狙いではなく、もう少し森の中に入ったところにいることが多いです。またオオルリのように樹上の天辺で鳴くことがなく、木々の枝葉に隠れて鳴くことが多いため、全身をはっきり捉えて写すチャンスは割と少ない小鳥だと思います。

観察月と回数:
1月0
2月0
3月0
4月3  〇〇〇
5月16 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
6月5  〇〇〇〇〇
7月4  〇〇〇〇
8月3  〇〇〇
9月4  〇〇〇〇
11月2  〇〇
12月0
都合37回
 夏鳥です。私の場合、4月後半のGW始め~10月末までの記録があります。渡りで南の国へ戻る時期は他の夏鳥の小鳥たちより結構遅いようです。さえずりを楽しむなら5月がベストだと思います。この時期は声量も大きくて、美しいさえずりを聞かせてくれ、一番見つけやすい時期と言えます。一方8月を過ぎてもさえずりは聞けますが、山梨県などでは「ツクツクホーシ」などとびっくりするような鳴き声を聞かせてくれたりして、これはこれで面白いですね。また秋の渡りエゾビタキやコサメビタキを観察していると、たまにキビタキのメスが混じっていたりして見間違うこともありました。♂くんだとすぐにキビタキだとわかるのですけどね。。。




 (トップ画像 キビタキ♂ 2019/07/05 山梨県富士山周辺にて撮影)

 初出:2014/09/10
 改訂:2015/06/14 動画と静止画の差し替え
 改訂:2016/07/09 幼鳥の画像を追加
 改訂:2018/05/20 トップ画像、幼鳥の画像を差し替え
 改訂:2018/06/03 トップ画像、♂画像変更、動画にさえずりを追加
 改訂:2019/05/19 ♀画像変更
 改訂:2019/07/05 トップ画像変更
 改訂:2021/08/04 ヒタキ科へのリンクを追加。観察データの追加