コマドリ 駒鳥
Komadori
Erithacus akahige
Japanese robin

コマドリ スズメ目ヒタキ科ノゴマ属
 高山の苔生す森で嘶く
 オレンジ色の小鳥

   

 コマドリの有名なエピソード

 コマドリには名前について面白いエピソードがあります。上の学名をご覧いただくと、最後に"akahige"なる言葉が見えると思います。鳥に詳しい方ならピンと来ると思いますが、コマドリのごく近縁にアカヒゲという名前の小鳥がいて、名前(学名)の入れ替わりが発生しているのです。では私がボケたのかと言うと、今回はそうでなく、なんとボケたのはかのシーボルト先生とのこと。。ま、シーボルト先生が悪いのでは無くて、きっとシーボルト先生に伝え役をしていた人との報連相がうまく機能していなかったのかと。。そして、当然のことながら(?)対するアカヒゲの学名はkomadoriになってしまいました。。嘘のような本当の話です。
 学名は一度正式登録されると二度と変更が利かないそうで、間違いに気づいたときは時すでに遅し。私がWeb作成でボケるのはいつでも直しが利きますが、やはりアカデミックな世界はそうはいかないということですね。まあ私も間違ったら「あ、魚屋またボケとるし。。」と笑われているはずなので、やはり見直し、校正は大事です。投稿の前に一息ついて見直ししよう。


八ヶ岳での観察 コマドリの動画

 枕が長くなりました。
 コマドリがその名を知られる一番の魅力はさえずりの美しさでしょう。馬のいななきのように「ヒンカラカラカラ」と聞きなしされるその声は、他のヒタキ類のさえずりがとても複雑なのに比べてわりと一本調子だけれど、逆にそれが凄く耳に残ります。また一度のさえずりは確かに一本調子ですが、実は毎回微妙に鳴き方が変わります。高かったり/低かったり、のどの回しが速かったり/遅かったり。小さい体なのに声量も豊かで、他の鳥と聞き間違えることはまずありません。ちなみにコマドリの「駒」の字は馬を意味する漢字です。
 コマドリは夏鳥で、およそ4月の中ごろ頃から山のあちこちでそのさえずりを聞くことができるようになります。冬の間は南の島にいるようで、夏に繁殖のため日本にやってきます。それだけ見ればオオルリやキビタキと似たような感じです。私は福山市のふれ愛ランドでこのコマドリのさえずりを何度も聞きました。ただ出会いの期間は短く、4月の一時だけ声を聞くも、すぐに声も気配も消えてしまいます。結局、ふれ愛ランドではコマドリの姿を見ることは一度もありませんでした。またもう少し山の奥に位置する福山市山野峡などでも同じようにレアな存在で、福山ではとうとう面と向かって出会うことはありませんでした。調べるとオオルリやキビタキと違い、コマドリは日本に来ると低山はさっさと通り過ぎ、1,500m以上の亜高山帯まで登ってしまうとのこと。福山からほど近い中国山地はせいぜい500mくらいの山しかありません。ようするに福山近辺は渡りの通過点だったため、コマドリとの出会いのチャンスは非常に小さかったのですね。
 福山市から横浜市に越して来たことで、家からは標高1,500m程度なら軽く超えてくる静岡、山梨、長野の山々や高原が近い場所となりました。おかげさまでそれまで出会いが少なかった亜高山以上で繁殖する鳥たち、例えば夏のビンズイ、ノビタキ、ホオアカ、ルリビタキなどが近い存在となりました。近いといっても山まではいずれも距離にして片道100Km以上はありますから、出会いが希少な部類には変わりありませんが、印象的にはずいぶん身近な鳥になったという感じです。

 コマドリのいななき(?)動画を置いておきます。最初は八ヶ岳の記録でiPhoneの絵。続いてD500の絵。いずれも積雪の中で安定した撮影ができず、揺れた絵になっています。お許しを。
 場面変わって道端の絵は三宅島のタネコマドリの記録。最後にタネコマドリが去ったあとにタイトルのバックで一鳴きするのは、福山市ふれ愛ランドでの音声記録です。タネコマドリは亜種ですが、さえずりだけ聞くとあまり違いは感じられませんでした。一方、同じ個体のさえずりでも、先に紹介したように、「いななき具合」は毎回違った声色です。是非そのあたりをお楽しみください。
 もう一つ、前半のコマドリのさえずりの合間に聞こえるのはメボソムシクイの声、後半の合間に聞こえるのはイイジマムシクイの声です。こちらも似て非なる鳥なので聞き比べてみてください。(イイジマムシクイの方が暑苦しい感じ?)左「コマドリの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


八ヶ岳のコマドリ その1,、2

 動画と同じ、八ヶ岳で撮った絵です。標高21,00mの高山にある鬱蒼とした森の中、コケが絡まる倒木を横目に小道を歩いていると、まるで「もののけ姫」の世界に入ったかのような錯覚におちいるような場所でした。精霊がいると言われたら本当に信じて探してしまいそうなくらい神秘的で、日常ではなかなか経験できないパワースポットみたいな場所と言えば雰囲気が伝わりますでしょうか。そんなコケの上でさえずるコマドリの絵を撮ることが理想だったのですが、世の中そうは上手くいかないものです。私の前に現れたコマくんは常に杭の上で歌っていました。。。初めての出会いですから贅沢を言ったらきりがありません。また次回の楽しみとしましょう。絵は横の姿と正面の姿2枚を置かせてもらいます。正面のオレンジ色の胸の下に黒い仕切りが入っているのは♂くんの特徴だそうです

 左「八ヶ岳のコマドリ1、2」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


三宅島のタネコマドリ

 2021年の5月、ついに鳥見の者にとって憧れの離島、三宅島に行くことができました。私にとっては佐渡島に次ぐ離島体験です。
 三宅島は横浜の我が家から直線距離で170km程度の距離となります。これは家からだと長野の松本市や静岡の掛川市あたりに行くような距離です。しかし、陸続きなのと海を隔てた島となれば、見られる鳥の様相がまるっきり違いました。見る鳥の半分以上がいつもよく見る風な鳥なのに、よーく観察してみればあら不思議!実は似て非なる鳥ばかりです。メジロもヤマガラもムシクイもいつも見る種とはどこかが違っています。違うのはくちばしの形だったり、さえずる声色だったり、姿の色目だったりと色々です。着いてすぐに「離島って不思議な場所だな」と実感しました。
 中でも一番驚かされたのがこの(タネ)コマドリ。本州のコマドリは1,500m以上の亜高山の苔生すような、湿気て涼し気な場所にいかないと見られません。しかし、三宅島では蒸し暑くて鬱蒼と茂った平地の森の木の枝や周囲の砂利道にさえいるのです!鳴き声や姿本土のものとそっくりなんだけど、そこら中から鳴きまくりで希少感もゼロ。びっくりするくらいの落差です。唯一違うのはオレンジ色がやや地味目に見えるのと、オスの胸にある黒色の境界ラインがないことくらいでしたが、そんな些細なことはどうでもいいくらい、とにかく生息環境の違いにびっくり。海を隔てれば、亜種とはいえこんなに違うものだと、本当に驚かされた一日でした。

 左「三宅島のタネコマドリ」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。



観察データ

場所と回数:広島県1、長野県1、山梨県3、神奈川県1、東京都1、都合7。広島県と神奈川県はさえずりの録音のみ。腰を据えて姿を観察するためには1,500mを越える亜高山に登るのが良いと思います。記録には残せませんでしたが、例えば長野の上高地の遊歩道でも目視しているので、高くて沢が近くある場所に行けば出会いの可能性はぐっと増えると思います。東京都の1カウントは三宅島のものです。

観察月と回数:
1月0
2月0
3月0
4月5 〇〇〇〇〇
5月2 〇〇
6月0
7月0
8月0
9月0
10月0
11月0
12月0
都合7回
夏鳥です。低山で声のみを録音しているのは4月の16~21日の間です。亜高山での写真の記録は4月の18日からです。亜高山で観察するなら、よく鳴いて見つけやすいGWからのひと月くらいがベストでしょうか。三宅島で観察するならこちらも5月~6月くらいがよいと思います。三宅島の初夏は本州では見られない小鳥がたくさんのベストシーズンですし、帰りの航路で見られる夏の海鳥も楽しめます。



 (Top画像 コマドリ 2019/05/06 D500 500mm/F4.0 山梨県甲州市にて撮影)


初出:2018/04/24
改定:2021/05/02 動画とトップ絵の差し替え、観察データの追加
改定2:2021/06/27 動画差し替え、亜種タネコマドリの静止画追加、観察データの更新
改訂3:2021/08/04 ヒタキ科へのリンクを追加。観察データの追加